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AIが「第四次産業革命」のカギ、ソフトバンク宮川社長が「SoftBank World」で語る

 AIエージェントにより「第四次産業革命が動き出した――そう語るのは、ソフトバンク社長の宮川潤一氏。16日に開催された、ソフトバンクグループのイベント「SoftBank World 2025」での一幕だ。

ソフトバンク 宮川潤一社長(写真提供:ソフトバンク)

AIで第四次産業革命

 宮川氏が示すのは、雷のような光が周囲に放たれる、いわゆるテスラコイルの写真。1880年代、電気は住宅の電灯程度でしか利用されていなかった。しかしニコラ・テスラの発明した交流モーターは、機械を動かす原動力となり、第二次産業革命をけん引した。

 この"電流戦争”のエピソードから、宮川氏は現代のAIを巡る競争に話を続ける。

宮川氏
「知能の原動力としてAIエージェントが登場した。自ら考え、行動するAIにより今までの産業革命とは比較にならない大きな変革がもたらされる。第四次産業革命が本格的に動き出した」

 交流モーターが電気の新たな産業の創出につながったように、ICチップ(半導体)の高度化が社会の情報化をもたらし、さらにAIによる新たな時代が訪れようとしている。

 AIの成長速度は、さらに増している。宮川氏によれば、7月にXが発表した「Grok 4」の学習に要した計算量を示す「FLOPs」は推定で640ヨタFLOPs。対して、人間の脳は10ヨタFLOPs程度とされており、すでに人間を超えていることになる。ソフトバンクで開発している「Sarashina」も、人間を超える性能を持ちつつあるという。

 一方で学習量が増えただけではなく「推論」の機能により、いわば”考える力”を備えたAIは「自律モデル」に進化したと宮川氏は指摘する。同氏はOpenAIの自然言語でプログラミングができる「Codex」が、プログラミングスキルで人間を上回りつつある現状を紹介し「AGIの入口かもしれない」と話した。実際に自身がCodexで作ったオセロゲームを例に、「エンジニアのみの世界だったものが、今年を起点にしてガラッと変わる」と展望を示した。

見づらい資料もAIにおまかせ

 「AIエージェントは『デジタル労働力』として社会実装が始まる」という宮川氏。自身でも通勤中に「NotebookLM」で講演などをポッドキャストのようにして聴くなどして活用しているという。

 ほかにも同社のSarashinaに備わる「ディープリサーチ」で、あるテーマに基づいたレポートを作成する様子を紹介。自律的に情報を深掘りして詳細な情報を知ることができる。また、ソフトバンク子会社のGen-AXが開発する、AIオペレーターが利用者からの問い合わせに対応するデモンストレーションも行われた。

政府の資料もAIエージェントで見やすくわかりやすく

 ほかに、資料作成に割く時間を軽減するAIエージェント「satto workspace」(サット ワークスペース)で、内閣府の資料を指定したフォーマットに変換。「どこに重要なことが書いてあるかひと目でわからない」(宮川氏)資料が、よりシンプルなかたちに要約されたものが披露された。

このほかにも、自動車に搭載されるEDR(Event Data Recorder)から事故状況を再現して調査するAIが紹介された。これらはソフトバンク社内の生成AIコンテストから生まれたという。

 スマートフォンやアプリにもAIエージェントが搭載されている昨今、将来的には「AI同士がやりとりする『AtoA』の時代がやってくる」と宮川氏は予見する。そんな時代が到来しつつあるなかで、AIを導入する企業としない企業には格差が生じるとも話す。「AIが社会の原動力になる」「次の世代の強い日本を作っていきたい」と決意を示した。

写真提供:ソフトバンク