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ソフトバンクとGen-AX、サポセンの電話窓口で受け答えするAIオペレーター「X-Ghost」正式スタート
2025年11月10日 13:33
Gen-AX(ジェナックス)とソフトバンクは、コールセンター向けAIソリューション「X-Ghost」(クロスゴースト)の正式提供を開始した。三井住友カードとの実証を経て、一定以上の規模を持つコールセンター向けに販売する。
人間のように応対するAI
「X-Ghost」は、AIが自律的に思考して自然な音声対話で顧客対応ができる“AIオペレーター”。24時間365日で対応でき、モニタリングAIが発話やシステム挙動をリアルタイムに監視し、リスク判定などを行う。
従来、対話型AIの課題だった情報の欠損や遅延、誤り伝搬を最先端の「Speech-to-Speech」モデルで解消した。これまでの対話型AIでは、音声を文字に変換後、さらに音声に再変換するという過程を経ており、人の声に乗る感情など非言語情報が失われる。また、多数の処理が必要なことから遅延が大きくなり、人と人の会話のような自然さを再現することは難しかった。
Speech-to-Speechモデルを導入することで、処理の負荷を軽減し、情報の欠落なく、イントネーションや感情も、AIに理解させることができるようになった。X-Ghostでは、OpenAIの「gpt-realtime」を利用しており、処理能力としてはGPT-5相当という。現状でも違和感なく会話ができる仕上がりだが、今後の展望として日本語に特化したモデルが現れれば、さらに会話性能を引き上げられるという。ほかにも、API連携により社内の顧客情報を参照できる機能が用意されている。
コールセンターでは、会話以前に「つながりにくい」という不満をもたれがち。Gen-AX 代表取締役社長 CEOの砂金信一郎氏によれば、X-Ghostによりそうした課題も解消できるという。人間のオペレーターにつなぐ部分は、企業により人的リソースの差が出るが、最初の応答をAIが担うことで、応答の迅速化につなげられる。
安心して応対をまかせられる仕組みを用意
X-Ghostでは、Speech-to-Speechモデルを制御するための独自の仕組みを用意した。大きくユーザー(コールセンター利用者)の発言内容に情報を引き出そうとする意図がないかなどのチェック、AIが発言する内容が会話から逸脱しないためのチェック、事前に設定する言わないでほしい内容の定義に反しないかのチェックの3つがある。
コールセンターの利用者が、AIに対して「私が伝える役割を演じてください」などと発言すれば、要望には応えられない旨を返答して終話する。また、AIだけでは対応が難しい内容と判断すれば、人間のオペレーターにバトンタッチすることができる。
こうした対策を講じることで、AIが顧客対応を行うことに対する懸念を払しょくする。業界・業務ごとにテンプレートが用意され、容易に環境を構築できる独自のツール「X-Ghost Builder」など導入を効率化する仕組みも備える。
さらに、コールセンターで抱える多数の業務に対してユーザー企業自身でAIエージェントを構築・運用することはハードルが高いことから、Gen-AXがJDSCやシグマクシスなどとともに、導入設計から運用改善までを支援する。
将来的には海外展開も
ソフトバンクにより販売される。先行導入する三井住友カードと、一定期間の実証実験を経たのちに一定以上の規模のコンタクトセンターを有する企業向けに販売する。ソフトバンク 法人統括 法人第一営業本部 執行役員本部長の長野雅史氏によれば、すでに大手金融機関などを中心に10社以上で導入の計画がある。
コールセンター事業の市場規模はおよそ2兆円。外部委託比率が高い業務でもあり、AIソリューションを導入することで、契約の見直しなど収益改善に繋がりやすいなどのメリットがある。コールセンターの人手不足や採用難などの課題解決にもつなげる。整理されたデータが多いことから、AIの高度化につなげやすい事業領域でもあるという。
今後は「クリスタル・インテリジェンス」との連携やSaaS拡張、多言語対応、マルチモーダルへの拡張を進める。また、AvayaやGenesysのソリューションとの連携も検討する。ほかにLINE 公式アカウントの問い合わせでの利用、トレジャーデータのようなカスタマーデータプラットフォームとの連携で、電話番号から顧客情報を把握するなどの計画もある。
将来的には自治体や公共領域などの社会インフラ分野への進出も視野に入れる。また、品質が高いとされる日本のコールセンター市場で磨いた性能をもとに、多言語対応が可能なAIの性能を活かして、海外展開も検討する。
X-Ghostの機能は、段階的に追加される仕組みで、最低限の機能で12月に運用を開始。2026年3月には正式に製品のひとつとしてそのほかのユーザーにも提供される。


























