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孫正義氏「10億AIエージェント、年内に実現したい」、SoftBank Worldで講演
2025年7月16日 17:49
AIエージェントが自律的に行動する社会が到来すると、ソフトバンクグループ会長の孫正義氏が同社のイベント「SoftBank World 2025」の特別講演で語った。ソフトバンク子会社のGen-AXはコールセンター向けAIを2025年度内にも市場へ投入する。
10億エージェント実現へ
ソフトバンクは、OpenAIとともに企業向けのAI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal Intelligence)」提供提供に向けて事業を進めており、10億のAIエージェントはこのなかで実現する目標のひとつ。最終的には、社員1人につき、1000のエージェントを部下のように業務に活用するという。
孫氏は、戦略立案やプログラミング、交渉などさまざまな業務の効率化につながるとして「従業員を千手観音のように1000本の目と手を持つ『スーパーヒューマン』に進化させられる」と語った。多数のエージェントを連携させるため「エージェントOS」を開発することで、各エージェントが互いに協調させるという構想がある。
1000のAIエージェントは人間が作るのではなく、AIがAIを作り出すことで実現する。ほかに、強化学習の「ゴール」と「報酬」をAI自身が設定するなど、自律的な進化を遂げていく。孫氏は「私自身が特許に出した」とも話した。ソフトバンクグループ全社的にこうした仕組みを備えたAIの活用が広がる見込み。
現状のAIは、人間がキーボードで入力したことに対して反応を返すというスタイルが一般的。孫氏は今後、AIが人間に対して反応するだけではなく、アクションを起こし、交渉や手続きをしてくれるようになると予測を示す。
実現の礎となるのが「Stargate Project」。ソフトバンクとOpenAIは今後、このプロジェクトを通じて、米国内でAIインフラを構築する。AI演算能力は1年半(1サイクル)ほどで1000倍、さらに100万倍、10億倍と劇的に進化を遂げると展望を示す。孫氏は「ムーアの法則」になぞらえて、これを「Stargateの法則」と話した。
「AI受け入れなければ未来を制限」
コスト面でも優位性があると孫氏は話す。講演で示された資料によれば、人間に対してAIの生産性や労働時間は4倍。その半面、コストは年間450円と1/1万6000で、30万倍のコストパフォーマンスを見込めるとした。
子会社のGen-AXでは、コールセンターのオペレーターを置き換えるAI「X-Ghost」(クロスゴースト)を開発。三井住友カードが先行導入を予定しており、2025年度中には正式提供を始める。講演では、AIの発話中に人が遮って次の質問をしても、正確に返答する様子が示された。
「AIの限界が見えてきたという人もいる。本当にそうか? それは『あなたの理解の限界』なのではないかと、言いたい」と“10億倍”の世界を思い描くことの難しさを話し、AIのさらなる発展を示唆した。実際にはありえない回答を作り出す「ハルシネーション」についても「一時的な些細な問題」と孫氏。時間とともにそうした課題は解消するとも話す。
講演には、OpenAI CEOのサム・アルトマン氏もリモートで出演。孫氏と対談。アルトマン氏は医療や安全保障面でもAIが浸透していく可能性を指摘したほか、Stargateで10GW(ギガワット)クラスの性能を目指すことを話した。
孫氏は、AIを受け入れない人や会社は「自ら進化を否定するタイプ」と発言。「進化を自ら否定すれば、自らが限界を作っている」「自ら進化を否定すれば、未来を制限することになる」とも語った。












