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次世代ネット「IOWN」向け半導体「光チップ」など、国立法人NEDOの開発事業に採択

 NTT(持株)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の実施企業に採択された。半導体の開発を進める内容という。

 IOWN関連では、これまでに情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G研究開発促進事業」「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」でも参画済み。NICTでの取り組みはネットワーク技術の開発推進で、今回のNEDOでの採択により、ネットワークに加えて、先端半導体でも国が開発を支援する格好となり、次世代ネットワーク構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network、アイオン)」の実用化に向けた動きがさらに加速されることになる。

IOWN構想と、NEDO採択の経緯

 NTTでは、光を中心とした革新的技術によって高速・大容量通信などを実現するIOWN構想を打ち出し、オール光ネットワークや光電融合デバイスに関する研究開発に取り組んでいる。

 政府においても、半導体・デジタル産業戦略として「光電融合等ゲームチェンジとなる将来技術」を開発する方針があり、これに基づいてNEDOが「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に関する研究開発を公募していた。NTTがキオクシアなどとともに応募した結果、代表提案者または共同提案者として採択された。

研究開発テーマについて

 今後NTTが参画するNEDO公募の研究開発テーマは、「光チップレット実装技術(委託)」「光電融合インターフェイスメモリモジュール技術(委託)」「確定遅延コンピューティング基盤技術(助成)」。たとえば確定遅延コンピューティング基盤技術(助成)では、代表提案者がNTT、共同提案者がNECと富士通となっている。

「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(公表日:1月30日)
研究開発テーマ代表提案者共同提案者
光チップレット実装技術(委託)NTTNTTイノベーティブデバイス、古河電気工業、NTTデバイスクロステクノロジ、新光電気工業
光電融合インターフェイスメモリモジュール技術(委託)キオクシアNTT
確定遅延コンピューティング基盤技術(助成)NTTNEC、富士通

 NTTのIOWN推進室長を務める荒金陽助氏は、「おおよそ4百数十億円の支援を、コンピューティングの部分でいただいている」と語った。

荒金氏

IOWNの鍵は「光と電気の変換効率」

 低消費電力や大容量・高品質、低遅延を実現するIOWNについて、荒金氏は「光と電気の変換効率を上げることがポイントになる」とコメント。現時点ではデータセンター間の接続に使われているような光電融合デバイスを進化させ、チップ間接続やチップ内光化などを図る。

 コンピュータ分野では、CPUが中心となる「CPUセントリック」のアーキテクチャからデータ中心のアーキテクチャへの移行を目指す。加えて、GPUなどを光で相互接続し、ハイパフォーマンスかつ高い電力効率のアーキテクチャインフラを作っていく。

 ネットワーク分野では、オール光ネットワークのサービスが2023年3月にスタートした。直通の光通信で拠点間を接続することで、パケットのスイッチングなどで生じる遅延や電力消費を抑えるものとなっている。

 荒金氏は、「さまざまなパートナーと一緒に、IOWNの研究開発を推進していく」とコメントした。