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「KDDI SUMMIT 2023」基調講演で髙橋社長「通信を主軸に『成長の循環』をつくる」

 KDDIは、技術や経営などへの取り組みを紹介するイベント「KDDI SUMMIT 2023」をオンライン上で開始した。2月22日まで無料で参加できる(事前登録制)

 21日10時からの基調講演では、同社の髙橋 誠代表取締役社長が「つなぐ力を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」をテーマにKDDIが今後提供する価値やその取り組みなどについて説明した。

KDDI 代表取締役社長の髙橋 誠氏

5G通信が経営の中心

 “つなぐ力を進化させる”について髙橋氏は「命、そして暮らしをつなぐ、こころをつなぐ、この3つのつなぐを進化させていきたい」とコメント。通信の強靱化やデジタル社会の発展には、つなぐ力の強化、つまり通信の強化が大事になってくるという。

 その中で、5Gエリアの拡大に関して、KDDIでは「生活動線への拡大にこだわっている」とし、今後スタンドアローン(SA)やネットワークスライシング、MEC(Multi-access Edge Computing)の技術が進化していくと髙橋氏は説明する。

 これらの5G SAを使ったビジネス共創として、ソニーとの技術検証を実施しており、ソニーのサーバーからユーザーのXperiaを専用のネットワークスライスを使ってつなぐことで、大容量のデータ通信や低遅延の通信を検証している。

 5Gの技術高度化を今後も進めていくことで、超低遅延、超多数同時接続、超高速・大容量を実現することに加え、「持続可能な価値創造」として、安全性や拡張性、自律性、低消費電力などの機能付加についても投資を行っていくと髙橋氏は説明する。

 Beyond 5Gを「デバイス」「ネットワーク」「仮想サービス」と3つのレイヤーに分けると、すべて光伝送だけで反応できるネットワークを構築することで、超高速化と低コスト、低消費電力を実現し、仮想化したプラットフォームで膨大なデータ処理を行い、データ活用した新たなサービスを提供できるとしている。

Starlinkで“圏外”を無くす

 一方、基地局ではカバーできていない場所を通信エリアにするべく、衛星通信の「Starlink」ネットワークを利用してエリア拡大、通信の快適化を図る計画を進めている。

 髙橋氏は、「具体的には、宇宙に3000個以上の衛星があります。この衛星を介して、通信をしていこうということで、今までなかなか通信ができなかった山小屋や、あるいは離島や、海の上ですね。こういうところでも快適に通信ができるようにして行きたいというふうに思ってますし、観光地など、今までほとんど対応ができていなかったところも、この衛星技術を使うことによってエリア化されていくことは、非常に素晴らしいと思います」とコメントし、今後のStarlinkによるエリア化に注目しているとした。

 また、災害時にも活用されていると髙橋氏は秩父市のユースケースを取り上げた。

 1本しかない生活道路のトンネルで土砂崩れが起こってしまった際、トンネルの向こう側の住民に物資を届けられなくなってしまった。また、住民も少なく通信エリアになっていなかったという。

 そこで、KDDIのStarlinkを使った基地局を開設し、通信エリアとすることでドローンによる物資の運搬が可能になった。髙橋氏は「災害時の利用も期待されている」とし、地球上のすべてを通信エリア化、将来的には月とも交信ができ、月の上での移動手段にKDDIによる通信が利用できる世の中を想像しつつ進化させていきたいと、今後の意気込みを語った。

サテライトグロース戦略

 続いて、髙橋氏はKDDIの事業方向性について説明。「サテライトグロース戦略」では、惑星に見立てた各事業の中心となる太陽の「5G通信」を据え置いたビジュアルが示され、ここでも「通信事業」を引き続き主軸に置く方針があらためて示された。

 通信により暮らしを快適にする取り組み「デジタルツイン」について髙橋氏は「サイバー空間にデータを持ち上げ、人流データを分析してシミュレーションすることで、どのように人が動けば行き来がしやすくなるかという結果を得ることが出来、それをフィードバックすることで街がより快適になっていく」と説明。髙橋氏は、実際に渋滞対策や老朽化インフラへ活用されていることや、ロボットやモビリティへの取り組み事例を紹介した。

 今年で3年目になるという「バーチャル渋谷」の取り組みについても「都市連動型メタバースが一番良い例」とし、リアルとメタバースの世界で住むという多様性を秘めたプロジェクトとした。また、「非常に大きな仕掛けを今考えている」とし「近々、皆さんに詳しくお伝えする機会があるんじゃないか」と近日中の発表を示唆した。

 金融事業について髙橋氏は「今までと違ってモバイルを中心とした金融ビジネスを、一つ一つ作り上げてきた」とし、銀行や保険、決済がスマートフォンで完結すると説明し、これらもやはり「通信を中心としてどんどん拡大していこうと思っている」とし、“通信が太陽である”ことをアピールした。

再生可能エネルギー事業に参入

 エネルギー事業については、新たに太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの開発を推進することを明らかにし、一般家庭の余剰電力や遊休地を活用した大型蓄電池による蓄電池事業や、エネルギープラットフォーム事業により、日本のカーボンニュートラルに貢献できるという。

 また、ここでも「5Gによるリアルタイム制御・供給」と5G通信が関わっていることが強調されている。

「成長」の循環をつくるサステナビリティ経営

 KDDIでは、このほか地域創生やスタートアップ企業を支援する取り組みを進めている。

 地域創生については「地域のパートナーと共に、2022年~24年度で累計1500万人のデジタルでバイト解消」(髙橋氏)を目標に取り組みを進めている。

 スタートアップ支援について、国全体の取り組みと一体になって進めているとし、大きく3つのファンドを通じ、有望なスタートアップへの投資、需要競争の促進を図っている。また、スタートアップ企業と大企業のマッチングイベントを年間200件以上実施している。

 KDDI社内では、副業でスタートアップに参加することができるようにしているほか、起業家育成事業にも取り組んでいくという。

 最後に髙橋氏は「パートナーと一緒に企業価値を高めていきたい。我々も頑張って企業価値を高めていきますが、パートナーの企業価値も上げていきたいと思っている」とし、この活動で世の中の社会が持続的に成長することにつながっていく、そしてこの循環をしていきたいと説明。

 サステナビリティ経営の基本となる循環を作っていくことを、「そんなに簡単なことではない」としながらも、「皆さんと共に、素晴らしい世界を作っていくことを目指して、引き続き頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします」と締めくくった。