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NTT島田社長は、第3四半期の決算会見で何を語った? ドコモのデュアルSIMなど
2023年2月10日 00:00
NTT(持株)は9日、2022年度第3四半期の決算を発表した。同日に開催された決算会見には、同社代表取締役社長 社長執行役員の島田明氏、執行役員 財務部門長の中山和彦氏、執行役員 経営企画部門長の谷山賢氏が登壇した。
連結決算の状況として、営業収益は9兆5726億円(対前年6494億円増)、営業利益は1兆5208億円(対前年188億円減)となった。また、当期利益は1兆325億円(対前年22億円増)を記録した。
島田氏は、決算に影響を与えた要因として「想定を上回る電気料金の高騰」「リモートワーク需要などの一巡」などを挙げた。
続いて、各事業分野での取り組みが紹介された。リージョナルフィッシュと共同で立ち上げたグリーン&フード事業では、二酸化炭素(CO2)の吸収力に優れた藻類や、魚介類の成長速度を向上させる技術により、食料問題や環境問題の解決につなげる。
また、宇宙事業のグローバル展開を加速すべく、スカパーJSATとの合弁会社Space Compassが、米Skyloom Globalと共同事業契約を締結した。今後は、光データリレーサービスの展開を見すえる。
社内での取り組みとして、社員の居住地を自由とする「リモートスタンダード制度」を2022年7月に導入。導入をきっかけとして、単身赴任者の数も減っているという。
質疑応答
デュアルSIMについて
――先日、KDDIとソフトバンクが「デュアルSIM」のバックアップ回線サービスについて発表した。NTTドコモの状況はどうなっているのか。
島田氏
(KDDIやソフトバンクとの)話し合いはしています。ですからそれほど遅れることなく、同じようなタイミングで(サービスについて)話すか展開できると思っています。お互い話をしないというような内容になっているようなので、私はあまりここではコメントいたしかねます。
ただ、昨年のKDDIさんの通信障害に加え、我々のドコモも西日本などで障害を起こしているので、レジリエンスを高めたいという認識はまったく一緒。同じようなサービスを遅れないようにやっていきたいと思っています。
NTTグループとしても、2025年くらいまでにだいたい1600億円、ネットワークの強靭化にコストをかけていこうという計画です。詳細は議論している最中なので、どこかのタイミングでお話をしたいと考えています。
――KDDIとソフトバンクの両社は、MVNOへのデュアルSIMサービスの提供についてはあまり積極的ではない印象を受ける。ドコモには「エコノミーMVNO」があり、過去の社長による発言として「MVNOはドコモにとってお客さん」という話もあった。NTTとして、今回のしくみのなかでMVNOはどういう位置づけになるのか。
島田氏
まだMVNOさんと話をしていないのが事実です。KDDIさん、ソフトバンクさんとは話をしていますが、そこから始めないと。一番大きいボリュームをお持ちの方々とのバックアップのしくみが重要だと思いますので。
まずそこからスタートして、MVNOの方々とコラボしていくというのは、次のフェーズになると思います。まずは3社のなかで整理をして、スペックを合わせることが必要だと認識しています。
――料金はどのくらいの水準を想定しているのか教えてほしい。
島田氏
髙橋さん(編集部注:KDDIの髙橋社長)も宮川さん(編集部注:ソフトバンクの宮川社長)も数百円と言っているから、だいたいそれくらいの水準になるのではと思います。
――時期的には、KDDIやソフトバンクと同じ3月下旬に間に合わせることになるのか。
島田氏
日程については定かではないので、でき次第ということになります。
設備投資などについて
――ドコモの設備投資額の推移について確認したい。前年の数字と比べて少し落ちているが、そのあたりの要因は。
島田氏
コンシューマー向けの通信ビジネスにおける設備投資額は、通信設備投資の効率化によって減少しています。ただ、年度末に向けて一定程度戻ってくる認識です。5Gの投資などでやや遅れている部分もありますが、キャッチアップしていく予定です。
――電気代が高騰しているようだが、どうカバーするのか。
島田氏
電気代を負担しているのは、東西(編集部注:NTT東日本、NTT西日本)とドコモです。いわゆる交換設備が多いので、負担額が大きいのは東西になっています。
今までやってきたDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に取り組むことで、コスト削減に努めています。人件費は落とせないので、基本的には経費を落とすという考えです。
我々は設備産業であり、一定の投資は計画的にやらないと、品質低下につながります。たとえばドコモは5G展開の設備投資も必要なので、やはり経費で地道に落としていくかたちです。
ただ、一定期間は従業員の努力で(コスト削減を)継続できるが、ずっと継続するのは難しい部分もあります。グループのなかで知恵をしぼりますが、正直言って結構悩ましいところです。
働き方について
――賃上げについての考え方を知りたい。
島田氏
労働組合と交渉して決めていくことになりますが、私たちはだいたい9年間連続して賃上げをしてきました。10年前からすると、消費者物価は5%くらい上がってきていて、我々はだいたい25%上げてきているので、そういう意味ではデフレ・インフレ関わらず安定して賃上げをやってきたということです。
安定的に従業員の賃金を上げるのは重要だと思っています。もちろん昨今の物価高についても意識をしていますが、基本的な姿勢は安定的に上げていくことです。
――「リモートスタンダード制度」で単身赴任者をどこまで減らしたいか。
島田氏
まず、(単身赴任者が)400人減ったというのをどう評価するかというところですが、昨年の同じ期間は5000人のうち、35人くらいの減少幅でした。「リモートスタンダード制度」を導入したことで、さらなる人数減につながっています。
もちろん希望としては(単身赴任者)を限りなく少なくしたいと思っていますが、支店長など、責任のあるポストについては、一定の単身赴任があるのは仕方ないと思います。人材育成などと組み合わせて、働き方改革は続けていきたいと考えます。
――島田社長自身の出勤率はどうなっているのか。
島田氏
ちょっとそれは内緒(笑)。かなり出勤しちゃっているのは事実です。お客さまのところに訪問する機会も多いので。残念ながら落第点かもしれません。
昨今の情勢について
――日本の景気の先行きについてどうとらえているか。
島田氏
世界的にはロシア・ウクライナ戦争のようなこともあり、エネルギーの問題など、昨年1年間で環境が激しく変化しました。
日本にとって大きいのは、エネルギー価格の上昇です。今期の決算でも40%くらい電力料金が上がっているが、これはエネルギー価格の上昇に伴うもの。コスト削減に努めていきたいですが、こういう状況が継続すると経済には大きな影響を与えることになります。
我々のビジネスに関して言えば、データセンター事業は受注が相変わらず好調です。従来を上回るテンポで設備投資を続けていきます。欧州を中心に経済が腰折れするとどういう影響が出てくるかはわかりませんが、データドリブンな世界に移っていくので、我々への影響は大きくないと考えます。
――来期の事業の見通しを教えてほしい。
島田氏
やはりデータセンターのビジネスが好調で、だいたい昨年の1.5倍の売上になっています。需要が力強く、当初は我々、3000億円程度の投資を計画していました。ただ、これはうれしい悲鳴ですが、受注してしまうものですから、投資額を増やしてお客さま対応をしていく必要がある。年度末に向けて数百億単位で投資するくらいの受注があります。
あとはドコモのモバイルARPUも上がりました。年度末は少し下がるかもしれませんが、(通信料)値下げの影響はおさまっています。大容量を使うお客さまも増えていて、環境は改善されているというところです。
――最近では対話型AIなどの開発が、海外でも活発化している。NTTグループとしてはどう見ていくのか。
島田氏
AIが日常的にいろいろなものに入っていく時代が来ているんだと思います。我々も実は、個々の法人向けのサービスについては、AIを入れたカスタマーセンターなどのシステムがあります。
いろいろな分野でAIが浸透してきているので、急に増えてきたという印象はありません。ただ、個々の企業さんのAIには独自性や強みがありますので、我々もオープンなマインドで、さまざまなAIとコラボレーションの可能性を探っていきたいと考えています。