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KDDI第3四半期決算、燃料高騰で減益もDX/金融事業の好調をアピール

KDDI代表取締役社長の髙橋 誠氏

 KDDIは、2023年度3月期第3四半期決算を発表した。第1~3期の連結決算は、売上高が前年同期比+4.2%の4兆1829億円となったものの、営業利益は同-3.6%の8434億円となった。燃料費の高騰や通信障害により-238億円影響が出たとしている。

 一方、注目領域として、DX関連の売上高は同+17.4%の2830億円、金融事業の売上高は+30.6%の1627億円、営業利益は+220.8%の309億円と好調さをアピールした。

携帯事業では、通信障害と燃料費高騰が大きく影響

 KDDI代表取締役社長の髙橋 誠氏は、「燃料高騰などの影響を除き概ね想定内に推移」とコメント。減益要因として大きいのは通信料金の値下げによる影響(-710億円)、次いで燃料高騰/通信障害による影響(-238億円)となった。また、楽天モバイルからのローミング収入による影響(-200億円)については「想定よりも減収幅が少なかった」(髙橋氏)としており、想定からはプラス要因として分析している。

 一方で、3G停波やコスト効率化により+613億円、DXや金融事業で+297億円のプラス影響が発生している。特に、金融事業については期初予想の+180億円を上回る+213億円の営業利益を第3四半期で達成している。

 なお、同じ注力領域として挙げられているDX事業については、第3四半期で+84億円となっており、期初予想の+180億円の達成を目指していく。一方、エネルギー事業については、期初予想で増益を目指していたところが第3四半期時点で-74億円となっていることから、まずは業績安定化を目指す方針が示されている。

マルチブランドで顧客単価を向上へ

 髙橋氏は、データ通信量について「5Gの普及に伴いデータ利用増が本格化している」とし、auでは「使い放題プランの上昇」が見られており、UQ mobileにおいても新規契約が増加しているとアピール。

 たとえば、auでは5G端末を購入する6割超のユーザーが使い放題プランを契約しているほか、UQ mobileでも22年12月全体の月間データ利用量は、前年同月比で+10.9%となるなど、データ利用が成長傾向になっていることを示した。

 また、auからUQ mobileへの移行率についても縮小傾向にあることや、付加価値サービスのユーザー単価(ARPU)が増加しており、全体の単価上昇に貢献しているという。

 auでは引き続き使い放題プランや、コンテンツ付きプランによる5Gサービスの利用を推進していき、UQ mobileについては中~大容量プランをさらに魅力的なものにすることで、データ通信利用の促進を図るとしている。

サステナブル経営と注力領域

 サステナビリティ経営について髙橋氏は「繋ぐ力を進化させえ、社会に新たな価値を提供してまいります」とし、デジタルツインやスターリンク事業やカーボンニュートラルへの取り組みを説明。その中で、2日14時ごろに発表した「ソフトバンクとのデュアルSIMサービス」を3月下旬頃に開始することにも触れた。

 また、ビジネスセグメントとしては、DXなど“NEXTコア事業”が全体の売上高に占める割合が3割を超えたとし、増益をけん引しているとしている。IoT回線の累計回線数は、グループ会社の「ソラコム」とあわせて3500万回線を超えているといい、5GとAIを組み合わせたデータ収集や分析など、デジタルツインを含めて新たな価値を創出し、よりよいものに変革しアフターコロナの世界に貢献していくとした。

 法人事業については、衛星通信の「Starlink」を一般ユーザー以外にも法人自治体向けに提供するなど法人の事業基盤サービスを手がける。

 成長事業として挙げた金融事業については、「auじぶん銀行」について、預金口座数が22年12月に500万口座を突破したことや、住宅ローン融資累計実行額がインターネット専業銀行最速で2.5兆円を突破するなど、好調をアピール。

 エネルギー事業については、再生可能エネルギー発電の事業化と、基地局やデータセンターへ再生可能エネルギーを自家供給するなど、資源保護への取り組みなども進めていく。

主な質疑

髙橋社長

 ここからは、決算発表会での主な質疑をご紹介する。

ソフトバンクとのデュアルSIMオプションについて

――ソフトバンクとのデュアルSIMオプションについて、その意義や料金水準などサービスイメージはどのようなものか?

髙橋社長

 去年の夏の障害で一番感じたことは、「障害を起こしてはいけない」というのは当然として、昔と違って「代替手段がなくなっているんだな」というのを改めて感じました。

 昔であれば、公衆電話がたくさんあったり、固定電話が家族に1台、単身世帯であっても固定電話をお持ちになったりということがありました。

 あの時(22年7月の障害時)には、スマートフォンだけで生活されてる方が非常に多いということを改めて感じて、その代替をやはり作らなきゃいけないんだっていうことを感じました。実は担当ベースで色々他社さんにお声がけしましたが、トップレベルでお願いしたところ、特に最初の段階でソフトバンクの宮川社長が、それ(デュアルSIMサービス)を「じゃあ是非ともやりましょう」と言っていただきましたので、検討が早く進みました。そして、年内に始められることで合意になりましたので、今回発表させていただきました。

 料金のイメージにつきましては、個人向けのある意味“保険サービス”のような形にしたいと思いまして、できるだけたくさんの方にお使いいただきたいなと思い、ほんと数百円程度の月額料金で実現したいと思います。

 ただ、基本料金は数百円ですが、(障害時以外では)まず使われない回線ですので、非常時に使われる時には従量課金で少し高く設定すると思います。

 できるだけ多くの人に気軽に使ってもらいたいという風に思っておりますので、裾野を広げて皆さんにご紹介していきたいと思います。

――ソフトバンク以外のMNO各社やMVNO各社との取り組みはあるか? サービスインの時期はいつか?

髙橋社長
 最初にお声がけしたのがドコモとソフトバンクで、そのなかでいち早く声を頂いたのがソフトバンクで、ドコモとはまだ協議中です。ただ、まだ明確になっていない部分があり、今いつ実装できるという答えは今持っていません。協議が進めば、特に止める理由はないので実現していきたいと思います。

 楽天にはまだお声がけしておりません。我々ローミングを提供しているので、我々のネットワークがおかしくなってしまったときに、楽天のエリアもダメになってしまうので、エリアの関係から難しいなと思っております。楽天も自社エリアが広がってきて同じようなことも実現できると思いますので、状況見ながら対応して行ければと思っております。

 MVNO各社とは、そういう話は全然していなので、お話があれば御相談したいと思いますが、現時点でそういう話はしておりません。

――デュアルSIMの提供形態は? 以前ソフトバンクの宮川社長が相互でMVNOになるという形態を提案していたが。

髙橋社長
 実は回線卸になっています。回線をソフトバンクから卸していただいて、我々がユーザーにワンストップでサービスを提供する形になっています。

――端末の売上が下がったり、ユーザー単価が上がるといった影響は考えているのか?

髙橋社長
 2台持ちの人が1台で済むということが想定されるかもしれませんが、端末影響っていうのはまず来ないんじゃないかなという風に思います。

 実は私のスマートフォンには今SIMが2枚入っておりまして、KDDIの役員全員がデュアルSIM構成でネットワークに万が一のことがあっても対応できるようにしていますが、これが皆さんに広まれば良いなという風に本気思っておりまして、端末に対する大きな影響はあまりないと思います。

 一方、ARPU(ユーザー単価)ですが、これも数百円のオプションですので、我々としては大きく期待しているわけではなく、基本的にはお客様に代替手段を提供することを優先に起案が得ております。ARPUを上げようかということは考えているわけではないので、それほど大きな影響はないと思っております。

――eSIMや物理SIMどちらも対応するのか?

髙橋社長
 詳細は追って発表しますが、povoと同様の流れで。eSIMならそのまま設定、物理SIMなら別途SIMカードを郵送するという形を想定しています。

――いままでなぜこのようなサービスがなかったか、考えはあるか?

髙橋社長
 日本の通信会社が「すべて自社だけでなんとか完結させる」というのが常識だったような気がします。基地局を建てるにしても、障害時の対応にしても、すべてauだったらauで、ドコモだったらドコモで対応するというのが当たり前だったと思いますが、これからはやはりお互いに協力できるところは協力できるようにしていくのは、これから大事になると思っています。

 競争と協調という2つの言葉がありますが、基地局の整備などでは協調してコストをシェービングする、競争領域ではよりよいサービスを提供していくということをやるべきだと。

 今回のデュアルSIMサービスは、協調領域だと定義してソフトバンクさんと合意に至ったので早く提供できることになったと思います。

――デュアルSIM対応機に買い換えないと行けないと思うが、普及を促進する用意はあるか? ローミングなども検討されているが。

髙橋社長
 障害発生後の協議会において、障害時の対応についていろいろな方法をとるべきだという議論があります。

 今はローミングを中心に議論されていますが、デュアルSIMも含めていろいろな方法でリカバーしていこうという風な議論がされています。デュアルSIMについても、前向きに捉えていただいておりますので、これを進めていきます。デュアルSIM対応機種についても、新しい端末は対応しておりますし徐々に広がっていきます。ある程度普及帯の端末にも入れていこうという議論もしっかりとしていこうと思っております。

 一方、ローミングについては運用面やコアネットワークに関する課題を解決するのに、一定期間やっぱりかかってしまうので、前向きに進めてはいきますが、さまざまな方法を複合的に対応していくことが大事かなと思います。

料金プランについて

――ピタットプランがなくなりスマホミニプランという形になりましたが、導入したねらいは?

髙橋社長
 ピタットプランを提供している中で、大体4GB程度以下の利用がすごく多かったんですね。そこで、そちらを中心としたプランにする一方で、7GBを超えるユーザーには、使い放題プランに移行していただく方がプラスになるので、特徴を確認して今回のミニプランを提供したということです。

 また、スマホミニプランの魅力が少し落ちたように見えると困るので、データ容量超過後の最大速度を128kbpsから300kbpsまで拡大する予定です。

 で、我々はauとUQ、povoの3つのブランドを持っていますが、勢いがあるのは明らかにUQです。世の中のユーザは昔と違って二極化している漢字がすごくあります。auをお使いになられている方は、NetflixやAmazonプライム、AmebaTVといったIP系の映像サービスを按針して使いたいという方々で、UQユーザーのようにコストを抑えたい方々と分かれてきているので、その両面をメリハリ出しながらサービス提供していくのが、これからの状況だと思っています。

 auの方は、色々なサービスとバンドルしたMAXプランが非常に好評を頂いていますし、解約率も数%と低くなっていますので、満足いただいている証拠だと思っています。今は6割のユーザー(が契約)ですけれども、少し上の数字も狙ってユーザーに楽しんでいただきたいと思います。

 povoの方は、完全にZ世代の若者向けなので、どちらかというとコストではなくサービスを組み合わせた次世代を感じさせるようなものに狙っていきながら、このような棲み分けで頑張っていきたいと思います。

賃上げについて

――世間的に賃上げを求める声が広がっている中で、KDDIはどのような設計で望まれているのか。

髙橋社長
 当社では、ジョブ型の人事制度を導入しておりまして、基本的にはジョブ型なのでスペシャリティをしっかりと形成をして、そこに応えるような賃金をお支払いするというベースです。今回の制度導入によって、大体4%程度22年に賃金アップを実現しております。ですので、政府の意向も我々としてもしっかり受け取って新制度における昇給分と合わせて5%の賃金改定を検討していこうと思っております。

村本 伸一副社長
 結論から言うと、今あの労働組合さんと協議をしてるところなので、具体的なことはちょっと申し上げられないです。

 一時金対応も含めて、全体で今政府や連合が示しているような5%以上というところは、検討していきたいということになります。ジョブ型人事では、基本的に社員のグレード、それから現在の賃金の水準、そして評価の3つの組み合わせで、昇給が決まるような形になっております。かなりメリハリがつくような、元々設計にしておりますので、非常に増減が激しいものも含めて「5%以上はしっかり検討していかなきゃいかん」というのが我々の考えです。

楽天の法人プランについて

――先日楽天が法人プラン発表したが、どのように受け止めたか? 法人向けではDXなど通信以外のサービスで勝負していくことになるかと思うが。

髙橋社長
 今回の楽天さんのプランでは、データ音声通信重視のサービスになっているので、若干これだけでは物足りないと感じているところがあります。

 たとえば、ドコモやソフトバンクと提供している「+メッセージ」のようなSNSサービスを運営し、それをうまく組み合わせて法人向けに応えていくのが本来の姿だと思っております。

 ただ、楽天モバイルもこういう法人をターゲットに広げられていくということで、我々としては注視していき、法人向けには(DXなど)そういうところまで配慮しながらユーザーにお届けするのがこれからの姿なのかなと思います。

業績について

――マルチブランドの解約率が上がっているが、この背景や要素をどう分析しているか?

髙橋社長

 実際昨年に比べると上がっていますが、ある程度事業者間での行き来というのがあると思っていますので、我々としては、(解約率を)もう一段階下げたいなと思って工夫していきますが、悪化している数字とは捉えていないので、この水準で続けていけるように引き続き努力していこうと思っています。

――楽天モバイルからのローミング収入の減少が想定より少なかったという話があったが、分析している要因はあるか?

髙橋社長
 ローミングについては、楽天回線エリアが70%を上回ったエリアについて、継続終了の判断をすることになっておりまして、22年4月段階では都道府県単位で終了したエリアは東京のみです。

 期首に「22年3月末に提供終了」を予定していた千葉や神奈川については、10月以降も楽天からの要望でローミング提供を延長しておりますし、ほかの都道府県のエリアでも楽天の要望で継続しているということです。

 楽天にも色々と事情があるという風に思いますし、70%以上のエリアを一斉に切ってしまいますと、かなりエリアが悪くなってしまうのだろうと思いますので、当社の想定よりも遅いスピードでローミング終了となっている状況下と思います。

 今年度から来年度に向けてどうするかということについては、今楽天と協議してますが、少なくとも我々が見通していた「500億円悪くなる」というものよりは少なくなるかなという風になりそうです。

――5Gのエリア展開に関する展望は?

髙橋社長
 5Gエリアについて、エリアカバー率というところをあまり言っていませんでしたが、2月3月のうちには90%を達成していきたいという風に思っています。

 また、今まで既存周波数の転用による5Gエリア展開を進めてきましたが、これを開設計画の関係もありまして、Sub-6によるエリアについても、広げて参りたいと思います。

 商業施設や新幹線などユーザーの生活動線にこだわった打ち方をしておりまして、広く薄く人口カバー率を追っかけるというよりも、ユーザーがどこでお使いになられるかというのを、データ分析して生活動線に展開しています。

 ただ、世界に比べて日本の5G浸透率が遅いので、ここはなんとかしなきゃいけないと思っており、ユーザーの手の届きやすい端末を浸透させるなど促進していくことが大事かなと思っています。当然ルールを守りながら浸透率を上げることを目指していきたいと思います。

 また、法人利用については、IoTで使おうと思ってもチップセット自体が結構高い、これが全世界で4Gレベルまで下がってくると使われると思いますので、それ次第なのかなと思っております。

 携帯電話については、(4Gレベルの価格帯の5Gチップセットが)広まると想像しておりますので、製造価格によって浸透していくのかなと、必ず広がっていくと思います。