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KDDI株主総会、「StarlinkでKDDIの仕事が無くならないか?」株主からの質問に回答

 KDDIは6月20日、都内会場で第39期定時株主総会を開催した。総会には、代表取締役社長の髙橋 誠氏のほか、KDDI役員が出席し、株主に向けて業績内容や質疑などを経た上で、3つの議案について決議が行われ、すべて賛成多数となった。

髙橋社長から事業報告と40期に向けての取り組み

代表取締役社長の髙橋 誠氏

 髙橋社長からは、総会の前半で39期の事業報告と40期に向けての課題と取り組みが発表された。通信だけでなく、金融や法人領域でも事業基盤を拡大し、好調に推移しているとした一方で、2022年7月に発生した大規模通信障害も取り上げ、通信基盤の強靱化についても課題として説明された。

 40期に向けては、通信のユーザー単価(ARPU)の向上や産業とインフラのDX化、海外事業、金融事業、Web3への取り組みを加速させるほか、デジタルツインによる分散型スマートシティの推進も行い、現在再開発中の高輪地区への本社移転についても言及した。

 また、経営基盤の強化については、カーボンニュートラルの実現や、人材ファースト企業への取り組み、ガバナンス強化、生成型AIの活用などを挙げた。

 株主還元については、22期連続増配となる1株あたり140円(39期は135円)の配当金を目指すとしている。

株主からの主な質問

 株主からの主な質問を取り上げる。

 まずは、事前質問を執行役員常務 CFOの最勝寺 奈苗氏が説明した。

執行役員常務 CFOの最勝寺 奈苗氏

 通信障害に関しては、より具体的な原因と対策を説明し、コア設備の仮想化基盤早期移行やDXの活用による通信基盤強化を図るとした。

 ミャンマー事業については、情勢が不安定な中でもミャンマー国内での4G LTEサービスの展開や学習機会提供の取り組みなど引き続き従業員の安全に配慮しながら事業を展開していくと説明。

 女性活躍推進の取り組みについては、取締役や経営基幹職ともに女性比率を向上させていくとし、今後キャリア育成やライフイベント支援や広報活動など取り組みを進めていく。

 会場からの質問には、髙橋社長およびソリューション事業本部長 兼 グループ戦略本部長の桑原 康明氏、パーソナル事業本部 副事業本部長兼事業創造本部長の松田 浩路氏、パーソナル事業本部長兼グローバルコンシューマ事業本部担当の雨宮 俊武副社長が回答した。

髙橋社長

が回答した。

――ソラコムが上場を申請し、その後撤回したが、理由に挙げていた「市場情勢の変化」について具体的な内容を。ソラコムの発展性、成長性にプラスマイナスの要件や技術的なものは関係しているのか。

桑原氏
 2017年のグループ入り時点では数万回線程度だったが、昨年度末には500万回線にまで拡大しており、事業は順調に拡大している。事業の発展性や成長性は問題なく、昨年度はグロース市場の環境が非常に悪かったのでギリギリまで見て“次の上場の時期へ”と見送らせて頂いた。

 技術についても、卓越した技術を持っていると思っている。

ソリューション事業本部長 兼 グループ戦略本部長の桑原 康明氏

髙橋氏

 私自身も非常に思い入れが強い会社。素晴らしい技術をもっている会社だと思う。引き続き応援すると共に、上場も折を見て対応していきたい。

――Starlinkとの取り組みについて、今後Starlinkなどの衛星事業が発展していくと、KDDIの海底ケーブルなどが利用されなくなってしまうのではないか?

松田氏

 スペースX社との契約では、まず1つめはau基地局のバックホールとして使うと言うことで、なかなか光ケーブルが引けないようなエリアでauの電波を発射するということ。

 また、Starlink Businessといいまして、通信を携帯電話だけでなくWi-Fiで通信できるようにすることで、最近では山小屋や非常に多くのお客様がいらっしゃる音楽フェスなどで活用させて頂いている。

 携帯電話では、我々のコアネットワークが必要になるほか、山口に衛星通信の基地局を持っているので、(Starlinkと)一体となって協力し合うことでサービスを提供する関係を築いている。

パーソナル事業本部 副事業本部長兼事業創造本部長の松田 浩路氏

髙橋氏
 今はバックホールとして(Starlink)を使っているが、将来スマートフォンと直接つながる時代が来る。しかし、これにはまだ数年かかるということや、5Gネットワークについても、日本の国土の92%以上で整備しているということや、建物の中など衛星では届かない場所もあるので、あくまでも(Starlinkが)補完的な立場になると想定している。

――NTTグループにはNTTデータという大きなソフトウェアハウスがあるが、KDDIグループも大きなソフトハウスを持った方がいいのではないか。

桑原氏
 昨年度、「KDDI Digital Divergence Holdings」という企業グループを立ち上げ、開発を担当するKDDIアジャイル開発センターというものを保有している。早くスピーディーに状況に合わせて開発を行っていくという開発手法で行っており、今後も拡大していきたいとしている。

――NHKの受信料について、KDDIのスマートフォンやモバイルルーターなどでNHKの契約の必要性を説明する「NHK対策サイト」のようなものを立ち上げることはできないのか? NHKの契約をしたくない場合に、機能を制限できるようなサービスをやってもらえないか。

雨宮氏
 NHKとお客様の契約関係ということで、KDDIからはコメントしづらいのが実情。

――メタバースへの取り組み、今後の市場規模など拡大傾向にあるのかいまいちわからない。

松田氏
 インターネット上の空間が、2次元から3次元化されると仮想空間という風に呼ばれ、技術の進化が著しい領域。

 KDDIでは、この分野のフロントランナーを走っていると自負しており、まずは自分たちで作り、領域自体を全体的に盛り上げていくためにも、それぞれの仮想空間をオープンメタバースという考え方に基づいてつなぐということも目指している。

 規模感に関しては、KDDIでは楽しめるコンテンツを重視しており、市場の予測では数百億~1000億円規模になるとされており、KDDIでもいち早くそれくらいの事業にしていきたいと思っている。

 KDDIの強みは、これまでの通信事業で培ったセキュリティ技術やインフラ基盤だとしており、メタバース事業を今後も推進していく。