ニュース
NTT com「ドコモビジネス」のドローンデモを公開、3Dモデリングや自動農薬散布など商用レベルのサービスを展開
2022年12月12日 00:00
NTTコミュニケーションズ(NTT com)は、商業ドローンに関するデモンストレーションをメディア向けに披露した。自動操縦で農薬を適切な部分へ散布するソリューションや、建物内で正確に自動巡回できるもの、物体を3Dモデリングして点検調査を行うものなどが披露された。
ドコモビジネスにおけるドローン事業
NTT comが提供する法人サービス「ドコモビジネス(docomo business)」のドローン事業を、同社では「ドコモスカイ(docomo sky)」というブランドで展開しており、ドローンの機体のほか、通信回線(携帯回線)を上空で提供するサービスや、プラットフォームとなるクラウドサービスなどを提供している。
5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門長の柏 大氏は、12月5日の航空法改正で「目視外の有人地帯飛行」(レベル4)が条件付きで認められるようになったことについて「改正航空法の施行で、いままで以上にドローンが飛行できる距離が広まる」とコメント。
一方、ドローンを安心安全に飛行させるには「技術や運用を積み重ねていかなければならない。さまざまなソリューションで社会実装と効果を見ていく」とし、レベル4相当の飛行の実用化に取り組む姿勢を示した。
ドコモスカイの6つの領域
現在ドコモスカイでは、実際に現場で利用されている3つと、実証実験段階の3つの領域でソリューションを展開している。
インフラの点検
インフラ点検ソリューションは、鉄塔、橋梁点検では、高所で危険なところの点検をドローンで置き換え、AIで異常箇所を見つける。
Skydioのドローンを使い、橋梁の下などGPSの電波が拾いにくくなる環境でも安全かつ正確に飛行できるという。
NTTドコモの基地局などの鉄塔については、2017年からドローンによる点検を開始しているといい、年間1000棟近い数をドローンで点検している。
点検では、点検する物体を3Dモデリングし、実際の画像と組み合わせて確認できるものもある。
建物内の巡回
倉庫の定期巡回や、建設現場の進捗確認などの定期的な巡回を、ドローンが担うソリューションでは、毎回決まった巡回ルートを、指定されたスケジュールで巡回し、自動で分析する。
ドローンは、自動で飛行するが遠隔で操縦することもできる。また、映像はリアルタイムで確認できる。
農業では、農薬散布をオートメーションに
農業の分野では、適切な場所に適切な量の農薬を散布できるソリューションを用意している。
まず、敷地内をドローンでくまなく飛行し、地面の画像を撮影し雑草の量を分析。雑草が多い区域を特定した後、再度農薬を搭載したドローンにより、雑草が多い区域にだけ農薬を散布する。
物流に関するソリューション
物流分野では、小口輸送や医薬品配送などを、素早く非接触で配送できるもの。レベル4解禁に合わせ、携帯回線(LTE)に対応したドローンを使う。
ドコモのLTE回線を上空で利用できるプランと、現在位置を数cm単位で測位できるGNSSを活用することで、より安全に飛行できる。
実証実験では、沖縄本島から離島までの配送をイメージした実験を実施。40km程度を自動で飛行させることに成功した。
立ち入れない災害現場をドローンで
災害時には、小型で取り扱いしやすいドローンを使用し、人が立ち入れない森林部や、被災現場にドローンを飛行させ、遠隔で現場確認ができるソリューションを目指している。
国産ドローンと閉域網でセキュリティを
機密情報を扱う場合など、セキュリティを重視したドローンの飛行では、国産ドローンの使用や、クラウドサービスを活用したセキュリティにより、情報を保護できるものが提供されている。
ドローン本体のSDカードにもロックをかけることや、ドローンとの通信自体を閉域網で接続することで、外からのDoS攻撃やハッキングを物理的に許さないソリューションとなる。
今後の見通し
今後のドローンビジネスの見通しについて柏氏は、商用サービスとして提供しているものは、先行的にすでに使用され始めているが、実証実験フェーズのソリューションは技術的な検証は住んでいるものの、運用上の課題などがあるとコメント。
また、複数のドローンが動くことを想定した航空管制なども必要だと柏氏は指摘する。
ほかの通信事業者でもドローン事業を展開しているが、ドコモスカイならではのメリットとして「ドコモの基地局側にも手を入れて、上空でも利用できるようにしている。これにより、市場の多くのドローンが、(特別な改造なしに)利用できる」とした。
現在、年間で数十の法人や自治体などから引き合いがあるとし、2030年頃に3桁億円規模の事業を目指したいとしている。