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ソニーがワイヤレスイヤホン「LinkBuds」で目指す“新体験の創造”とは

 ソニーは16日、ワイヤレスイヤホンの新製品「LinkBuds(リンクバッズ)」を発表した。同日には発表会もオンライン開催され、同製品の説明に加え、トークセッションや質疑応答などが実施された。

“イヤホンの再定義”

 発表会冒頭の製品説明では、ソニー モバイルプロダクト事業部 事業部長 中村裕氏が登壇した。

中村氏

 “イヤホンを再定義する”というフレーズとともに披露された「LinkBuds」は、穴が空いた形状が特徴的な一台。人とコンテンツ、オンラインとオフラインをつなぐことを主な提供価値とする。

 開発の背景には、特にZ世代において“ながら聴き”のスタイルが広がっていることなどがあるという。

 「新たな顧客価値の創造は、ハードウェアだけでは実現できない。各分野の企業やサービスと連携し、豊かな体験を共創していきたい」と中村氏は語った。

 続いてモバイルプロダクト事業部 商品企画部 統括部長の伊藤博史氏が登壇し、「LinkBuds」のスペックを紹介した。

伊藤氏

 同製品の最大の特徴は、常時装着ができ、常にオンラインとリアルの両方につながれること。「LinkBuds」のために特別開発された、リング型のドライバーユニットが搭載されている。

 また、「LinkBuds」はソニーのワイヤレスイヤホン史上最も小さく、最も軽い。

 加えて、同社のワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」でも採用された統合プロセッサー「V1」の搭載などにより、開放型のイヤホンでは実現が難しかった高音質を実現している。

 そのほか、耳周辺をタップすることで音楽の操作を行える「ワイドエリアタップ」や、音楽ストリーミングサービス「Spotify(スポティファイ)」と連携した「Quick Access(クイックアクセス)」機能なども搭載した。

 カラーリングはホワイトとグレーの2色展開で、2月25日に発売される。

 発表会のなかでは、お笑いコンビ「ラランド」のサーヤが出演するプロモーション動画も投影された。

トークセッション

 製品紹介のあと、トークセッションが開催された。

 トークセッションには、ソニーの中村氏と伊藤氏に加え、ナイアンティック 代表取締役社長 村井説人氏、スポティファイジャパン 代表取締役 トニー・エリソン氏、日本マイクロソフト 執行役員常務 渡辺宣彦氏が登壇した。

 「LinkBuds」の使用感について、ナイアンティックの村井氏は、「3つすごいなと思ったことがあって、ひとつは音がとてもクリアなこと。もうひとつは、今の生活環境では電話で(イヤホンを)使うこともあるのですが、そのときの通話品質がとても良かった。また、外の音もしっかり入ってくるため、安全に使える点にも驚いた」とコメント。

村井氏

 スポティファイジャパンのトニー氏は、「(LinkBudsが)家族で奪い合いになった。新鮮なコンセプトで非常に盛り上がったので、今年のプレゼントはこれで決まり」と笑顔を見せた。

 また、日本マイクロソフトの渡辺氏は、「音楽を聴いてみたところ、意外と没入感があった。音の深さも体感でき、非常にいい体験になった」と語った。

トニー氏
渡辺氏

 パートナーとの協業による新たな体験の創出について、ソニーの中村氏は「LinkBudsの構想が出たのは数年前の話だが、そのときすでに『ハードウェアのスペック勝負の製品ではなくて、ユーザー体験や新しいサービスをつくっていくことが必要』と感じていた。そこからパートナーの方といろいろな話をしてきて、(3社に)今日来ていただいたという状況で、感無量だ」とコメント。

 位置情報ゲーム「Ingress」などを手がけるナイアンティックは、ソニーとの協業により、さらに新しいAR(拡張現実)体験を目指す。

 「Ingress」について“地球を舞台にして、世界中でやり取りする陣取りゲーム”と表現した村井氏は、「(Ingress内で)今までは映像で表現していた場所に関して、そこに近づくと音が聞こえてきたり、どの陣営のものなのかを音で表現したりできるようにしたいと考えている」と語った。

 続いて日本マイクロソフトの渡辺氏は、3Dオーディオマップアプリ「Soundscape」について言及。同アプリは、地図データを3D音声で伝える機能などを搭載しており、「LinkBuds」の発表にあわせて日本語版がリリースされた。

 コンパス・ジャイロセンサーによって頭の向きを認識する「LinkBuds」との連携により、ユーザーはスマートフォンを持たずに目的地からの音声を聴けるようになる。

 渡辺氏は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するマイクロソフトの姿勢を引き合いに出し、「たとえば視覚に障害のある方でも、安全に街歩きを楽しんでいただける」と語った。

 また、新型コロナウイルスの影響でコラボレーションツール「Microsoft Teams」の利用が増えていることを踏まえ、「Teamsにおける(ソニーとの)協業も模索していきたい」とした。

 スポティファイジャパンのトニー氏は、「『世界中の人々にいつでもどこでも音楽などを届ける』という我々のミッションと、“生活密着型のリスニング環境”を届けるLinkBudsのビジョンが、不思議と合致している印象を受けた」とコメント。

 「LinkBuds」は「Spotify Tap」機能と連携しており、手軽に音楽のコントロールなどを行える。トニー氏は、「先週からLinkBudsを使っていて、『これだけシームレスにSpotifyを使えるなんて』と会社のメンバーや家族に自慢していた」というエピソードを披露し、「世界中のSpotifyユーザーに体験してほしい」と語った。

質疑応答

――「LinkBuds」のデザインに関して、「Xperia Ear Duo」のものが反映されているのか。

伊藤氏
 「LinkBuds」は、基本的に「Xperia Ear Duo」とは別のものになる。ユーザーニーズ、特に若い世代の“音への多様性”というニーズに応えるために、コンセプトを作った。

 ただ、我々が持つオーディオの歴史のなかで、過去のモデルからもいろいろな知見を吸い上げているところはある。特に、外の音がしっかり入ってくるところやずっと身につけられるところなど、「LinkBuds」でこだわった部分に関しては、過去の知見が活用されている。

――「LinkBuds」のバッテリー持ちや充電時間などについて教えてほしい。

伊藤氏
 本体で5.5時間、それからケースと併用すると17.5時間使える仕様になっている。それから今回は急速充電にも対応していて、10分充電すると90分再生できる。

――「クイックアクセス機能」ではSpotifyと連携しているが、ほかのサービスとの連携は視野に入れているのか。

伊藤氏
 まずはSpotifyとの連携からスタートしたが、今後もいろいろなパートナーとの連携を考えている。ぜひ楽しみにしていただきたい。

――紛失が心配なユーザーもいると思うが、そのあたりのケアなどは。

伊藤氏
 今回はグーグルと協業しており、ユーザーがデバイスを紛失した場合、スマートフォンのほうから探せる機能に対応している。

 また、小型軽量でずっと身につけていただくというコンセプトなので、落ちにくさなどについては十分配慮した商品になっている。

――「LinkBuds」にはモーションセンサーなどが搭載されている。これをさまざまなアプリケーションメーカーが使えるようにするために、SDKの一般公開などは検討しているのか。

伊藤氏
 SDKというかソフトウェアに関しては、今開発をしている。まずはパートナー(企業)に使っていただき、新しい音の体験を一緒につくりあげていく。

 したがって、現時点ではSDKの一般公開は考えていない。今後はさまざまなパートナーとの連携が広がるなかで、そういったことも議論していければと思っている。

――「LinkBuds」のセールスポイントのひとつに「低遅延」があるが、具体的にはどのレベルの性能なのか教えてほしい。

伊藤氏
 「LinkBuds」では、「WF-1000XM4」と同じ統合プロセッサーが採用された。このプロセッサーには、低遅延と高い接続性を実現する機能が入っており、「WF-1000XM4」と同等レベルの接続性を実現している。

――「LinkBuds」は「Google アシスタント」に対応しているとあるが、どの程度の対応状況なのか知りたい。メールなどの確認(読み上げ)は可能なのか。

伊藤氏
 「WF-1000XM4」でも「Google アシスタント」と連携しており、基本的には「LinkBuds」も同等と考えていただければと思う。メールの読み上げなどにも対応している。