レビュー

ソニー「LinkBuds」クイックレビュー――穴が空いたフルワイヤレスイヤホン

 ソニーは16日フルワイヤレスイヤホン「LinkBuds」(WF-L900)を発表した。2月25日発売で、価格は2万3000円前後。

 今回は、「LinkBuds」のクイックレビューをお届けする。筆者が抱いた「外とつながる」感覚を少しでも感じてもらえればと思う。

特徴的なフォルム、ドーナツ部分から音が出る

指1本に載せられるほどのサイズ感

 何も知らないユーザーが手に取ったとき、ドーナツの形状ではない部分を耳に当ててしまうユーザーがいるかもしれないが、実はドーナツ状の部分が実際に音を出す部分となっている。

 ドーナツ状の部分には、12mmのリング型ドライバーユニットが備えられている。イヤホンのドライバーユニットといえば、スピーカーのそれと同様に、円形で振動板が全面にあるものを思い浮かべるが、今回のドライバーユニットは中央が空いている特殊な構造をとっている。

 実際のドライバーユニットを見てみると、ドーナツ型の振動板が備わっていることがわかる。担当者によると、中にはこちらもドーナツ型のマグネットやコイルなどが配置されており、通常のスピーカーユニットをそのままドーナツ型に構成した印象を受けた。もっとも、振動板の素材などは改良されており、低音域の音が失われないよう工夫されているという。

ドライバーユニット

独特の装着方法、着けているのを忘れる感覚

実際に装着した様子

 ドーナツ型のイヤホンゆえに、装着方法もこれまでのイヤホンと異なっている。

 たとえば、カナル型イヤホンだと耳の穴に密着させるように「耳の中に収める」かたちで装着するが、今回の「LinkBuds」では、「耳の外にひっかける」ような開放型に近い装着方法となる。

 ただし、開放型にはない「フィッティングサポーター」が用意されており、耳の大きさに応じて最適なサポーターを使用することで、開放型にはないフィット感を体験できる。

 筆者は耳垢がウェットなため、どうしても開放型だとずれ落ちてしまう(カナル型だと別の問題が生じるが……)が、このフィッティングサポーターを使うことで、ずれ落ちることはなさそうに感じた。

 ただ、装着方法が特殊なのは変わりなく、誤った装着方法だったりサポーターの大きさが合わなかったりすると、ポロンと外れてしまうことも多いだろう。初めての間は落としてもすぐに発見できるよう、自宅内などで試してみることをおすすめしたい。

人の話し声がクリアに聞こえる

 「LinkBuds」最大の特徴である形状を採用することで、音楽を再生しているのに外の音がクリアに聞こえる体験ができる。

 骨伝導イヤホンでは音質がどうしても犠牲になってしまったり、外音を拾うイヤホンでは相手の声をなかなか拾えなかったり、拾わなくてもいい環境音を大きく拾ってしまったりするケースがあり、筆者も結局イヤホンを外して会話することが多かった。

 今回の「LinkBuds」では、外の音をダイレクトに聞くことができるため、イヤホンをつけたままでも相手の声がクリアに聞ける。それだけでなく、音楽を聴きながら相手と会話することもできる。

 気になる音質は、高音域の音が若干抜けている印象を受けたが、低音域などはしっかりと鳴っていた。ジャズだとアコースティックギター独特の余韻が弱く感じ取れた一方で、低音域はしっかりと抑えられており、開放型のイヤホンでは体験できないリスニング体験ができた。

 実際に「LinkBuds」を付けて音楽を聴きながらソニーの担当者から説明を受けたが、あたかも室内にあるスピーカーから音楽が流れ、そのBGMが聞こえている中で、話をしているような聴取体験ができた。

 また、これは筆者特有の事情かもしれないが、耳が外とつながっていることで、耳穴が蒸れにくいことは大きなメリットに挙げられる。前述のように筆者の耳垢がウェットなため、耳穴に違和感が生じることがある。集中力を持続させるため、イヤホンをして仕事をすることがあるが、長時間装着しっぱなしだと耳の中がかゆくなってしまうこともある。

 「LinkBuds」では、蒸れにくく、話しかけられてもそのまま会話できるため、仕事中でもストレスを感じることなく集中できる環境ができるだろう。

便利な「ワイドエリアタップ」機能

 そのほか、便利な操作方法として「ワイドエリアタップ」機能がある。

 「ワイドエリアタップ」機能は、イヤホン本体だけではなく、その周囲の振動を検知してプレイヤーの操作などができる機能。

 「LinkBuds」はソニーのフルワイヤレスイヤホン史上最小最軽量をうたうほどコンパクトとなっており、その分、本体に触れて操作することが、やや難しい。この欠点を解消するため、本体の周りをタップすることでその振動をイヤホンが検知し、アクションを起こすしくみを採用している。

 たとえば、カナル型のフルワイヤレスイヤホンだと、本体をタップすると耳の中に振動が伝わってしまい不快な思いをすることがあった。「LinkBuds」では、耳の近くのほっぺやこめかみのした部分を軽くタップすることでコントロールできるので、この不快感を減らすことができる。

 特徴的な形状の「LinkBuds」。外界と「つながる」新たな音楽体験を感じられ、これまでメインだった「外出時」から「家でも使える」フルワイヤレスイヤホンを感じることができた。

ホワイト
ブラック

主なスペック

重さ
約4.1g(片耳)
形式
開放、ダイナミック型
ドライバーユニット
12mm
マグネット
高磁力ネオジウムマグネット
連続音声再生時間
最大5.5時間
連続再生時間(ケース併用)
最大17.5時間
連続通話時間
最大2.5時間
Bluetooth
Bluetooth 5.2
対応コーデック
SBC、AAC
対応コンテンツ保護
SCMS-T