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「KDDI・ソフトバンクに規制適用を」MVNO委員会が総務省の検証会議で説明、エコノミーMVNOに言及も

 総務省で26日、「電気通信市場検証会議(第26回)」が開催された。テレコムサービス協会のMVNO委員会からは、モバイル市場の現状と公平競争に向けてイコールフッティングのさらなる確保や法整備の必要性を問う意見が示された。本稿では、MVNO委員会の資料に基づいて、その主張を紹介する。

MNOがMVNOを吸収する動き

 以前のモバイル市場では、MNOやそのグループ会社が運営するサブブランドやグループのMVNOが、独立系MVNOと市場で競合している状態だった。

 しかし、至近の市場状況を見ると、MNOが別会社であったサブブランドやグループ内MVNOをMNO本体に吸収する動きを見せるほか、MNO本体がMVNOと競合する廉価プランを投入するようになった。たとえば、ドコモは廉価プラン「ahamo」を投入、KDDIは「UQ mobile」の吸収や新ブランド「povo」の投入、ソフトバンクは「LINEモバイル」の吸収が行われた。

 これらの環境変化や市場競争の高まりを受け、MVNO委員会では「MNOやグループ内MVNOと、独立系MVNOとの同等性(イコールフッティング)の確保は、これまで以上に重要だ」と説明する。

5GやBeyond 5Gの発展のため「同じ条件で設備を利用できる」の確保を

 MVNOは、モバイル市場の競争を活性化させ、ユーザーの選択肢の多様化や利便性の向上に寄与してきたとし、「設備を保有するMNO」と「設備を持たないMVNO」が同じ条件で設備を利用することができるイコールフッティングの確保が市場にとって不可欠だという。

 特に、5Gの設備においてはスタンドアローン方式によるサービス提供(5G SA)により、新たなサービス創造が期待されるが、MNOとMVNOの間で、技術仕様や料金などの提供条件や情報開示に差異がある場合、新たなサービスの創出や公正競争に多大な影響を及ぼす恐れがあると説明。

 このほか、IoT向け卸メニューにおけるボリュームディスカウントやプラットフォームの利用有無などの条件に、MNOグループ内のMVNOがほかよりも優遇されることがあった場合、独立系MVNOは競争力を確保できなくなると懸念を示した上で、5G SAやIoT向け卸メニューの定期的な実態把握を総務省に求めた。

ユーザーとの接点が多いMNOによる囲い込み

 懸念点はほかにも、MNOによる「引き止め行為」や「囲い込み行為」についても言及した。

 キャリアショップやコールセンターなどユーザーとの接点となる施設を多く持つMNOが、サブブランドやグループ内MVNO、廉価プランなどを排他的かつ優先的に取り扱うことや、ガイドラインで禁止されている「引き止め行為」を行うことは、ほかのMVNOとの競争環境に多大な影響を与え得ると説明。

 ガイドラインの見直しや適用状況の確認のほか、MNOのグループ内MVNOにかかるサービスの販売に関しても、総務省で定期的に把握することが必要とした。

エコノミーMVNOにも懸念

 NTTドコモの「エコノミーMVNO」については、店頭でのMVNOサービス契約ができることから、MVNOの販売やサポートの促進につながると一定の評価を示した。

 一方で、エコノミーMVNOが、NTTグループのMVNOとそれ以外との間で「イコールフッティング」が確保されているか、実質的にグループ外のMVNOが参加しにくい仕組みになっていないかなど、継続的に注視することが必要であると言及した。

 懸念点はこのほか、実店舗でインセンティブや紹介方法などでNTTグループのMVNOのみ優先的に販売していないか、ユーザーがNTTグループのMVNOのみ扱っているかのように認識する状況になっていないかといった事項を挙げた。

KDDIやソフトバンクなどにも禁止行為規制を拡大せよ

 今後スタックテストなど適切な措置が講じられることで、MNOとMVNO間の設備利用面、特にサービス原価でのイコールフッティングが担保されることへの期待感が示された。

 一方で、MNOとグループ内MVNOの金銭的補助や情報提供、営業面での優先/排他的販売などの可能性があり、MNOのグループ内MVNOとそれ以外の間のイコールフッティングについては、事業法30条に基づく禁止行為規制の対象ではないMNOに対する懸念は引き続き存在する状況と説明した。

「電気通信事業法」第30条第3項に記された禁止行為
  • 他社設備との接続で知り得た他社の情報を(営業活動など)目的外に使ったり、提供すること。
  • 特定の電気通信事業者を不当に優先的な扱いをして利益を与えたり、逆に不当に不利な扱いをして不利益を与えないこと。
  • 販売代理店やメーカー、コンテンツプロバイダーなどに対して、不当に干渉したり、縛りをかけたりすること。

 特に5G時代を見据えた現在において、MVNOからMNOに「接続に必要な情報」として提示した内容が、MNOの営業戦略に活用されることがあれば多大な影響があるといい、公正競争確保のために「情報の目的外利用の禁止」はこれまで以上に重要になると指摘した。

 これらの内容からMVNO委員会では引き続き、二種指定事業者のなかでもMVNOに対し大きな交渉力を持つ事業者として、現在対象となっているNTTドコモに加え、「KDDI」、「沖縄セルラー」、「ソフトバンク」の3社に対し、禁止行為規制を適用すべきとした。