ケータイ用語の基礎知識
第973回:スタックテストとは
2021年1月26日 06:00
スタックテストとは、国内の通信関係においては、接続料の水準が不当でなく公正妥当か検証する検討のことをいいます。接続料と利用者料金の関係の検証ともいいます。
一般的に、健全な競争状態にある市場では、利用者料金はコストに適正利潤を乗せて設定されていると考えられます。固定通信事業者業界では、スタックテストを行うことによって、そこから、ドミナント(支配的地位にいる)事業者に対して、他業者への接続料の水準が不当であるかないかを確認するため、接続料の認可時等に利用者料金との関係についての検証を行っているのです。
ただし、あくまでも他の事業者への接続料金が妥当であることを検証することが目的で、利用者料金の妥当性を検証することを目的とするものではないことに注意してください。
固定電話・有線インターネットなどでは1999年より開始され、2007年に省令化・ガイドラインが作成されました。
もしかしたら今後、携帯電話においてもMNO各社の「廉価プラン」などによる利用者料金の値下げを受けて、MVNOなどの他業者への接続料の正当性の検証のために同様の取り組みが行われるかもしれません。
固定電話・インターネットでは「利用者料金と接続料差が20%」未満で「合理的な説明」が必要に
以下は、これまでの有線電話・インターネットの場合のスタックテストの内容です。
もし、移動体通信(携帯電話)でも採用になれば、似たような内容になる可能性があります。
大手事業者からの他事業者への接続料は、能率的な経営の下における適正な原価に照らし公正妥当なものであることが求められます。具体的には以下の要件が求められます
2. 接続料の水準が、当該接続料を設定する事業者と接続事業者との間に不当な競争を引き起こさないものであること
固定電話・インターネットでは、スタックテストは2ステップに分かれており、まず検証される側であるNTT東日本・西日本による大括りの検証があります。これは、接続料の水準が反競争的でないことを検証することで、毎年度の認可申請時・接続会計公表時といったタイミングで行われます。
検証方法は、フレッツ光ネクスト、フレッツ光ライト、Bフレッツ、加入電話ISDN通話料といった区分ごとに、利用者料金収入と接続料収入の差分が営業費の基準値(20%)を下回らないものであるかを検証していきます。利用者料金と接続料の差が20%を切ってしまう場合は、当該要件を満たさないことへの反競争的ではない等の合理的な説明をNTT東日本・西日本から総務省に行う必要があります。
また、2ステップ目は総務省による詳細検証です。こちらは、時期的には、接続料やサービスの認可時となります。
検証方法ですが、営業費相当分と営業費の基準値との関係の検証は、申請のあったサービスメニュー(接続料設定事業者により同種のサービスとして位置づけられているサービスメニューの集合)単位で行います。
たとえば、「フレッツ光ネクスト」であれば、「 ファミリー」「ファミリー・ハイスピードタイプ」、「マンション・ハイスピードタイプ」「マンションタイプ」、「ファミリー・ギガラインタイプ」「マンション・ギガラインタイプミニ」「マンション・ギガラインタイププラン1」「マンション・ギガラインタイププラン2」というようにです。
ただし、接続料は基本的にサービスメニューごとに異なることから、併せて、利用者料金が接続料を上回っているか否かについて、「フレッツ光ネクスト」なら「フレッツ光ネクスト」と、サービスメニュー単位で行います。
これで、検証区分ごとに、利用者料金収入と接続料収入との差分(営業費相当分)が基準値、やはり「利用者料金収入の20%」を下回らないものであるか否かを検証していきます。
この場合も、利用者料金と接続料の差が20%を切ってしまう場合は、当該要件を満たさないことへの反競争的ではない等の合理的な説明を支配的事業者であるNTT東日本・西日本は、総務省に行う必要があります。
もし、携帯電話においても同様にスタックテストを実施することになった場合、「ahamo」「SoftBank on LINE」「povo」といったメニュー単位で、他社への接続料がどのように判断されるか、ということになるのかもしれません。
なお、「接続料と利用者料金の関係の検証(スタックテスト)の運用に関するガイドライン」においては「接続料と利用者料金との関係が必ずしも固定的なものではないため、スタックテスト上の基準が満たされない場合、直ちに接続料が不当であると判断することは適当ではなく、当該接続料を設定した事業者に対し、当該接続料が妥当であるにもかかわらずスタックテスト上の基準が満たされなかったことについて説明を求め、当該事業者から合理的な論拠が提示された場合には、当該接続料を妥当と判断するとされているところである」ともしています。
この辺りは、機械的ではなく総務省の判断によっては、基準に満たなくても通ることがあるということに、ガイドライン上は、なっています。