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ドコモの優遇は禁止、「公正競争確保の在り方に関する検討会議報告書」が公開

 総務省は、「公正競争確保の在り方に関する検討会議 報告書(案)」に対するパブリックコメントの結果と報告書の正式版を公表した。

 報告書は、NTT(持株)によるNTTドコモの完全子会社化にまつわる諸問題ついて記載。

 NTT(持株)によるNTTドコモ完全子会社化は、ドコモ含めてグループの競争力強化の一環であり、20数年前にドコモが独立した当時とは市場環境は大きく変わっており、競争環境に悪影響を及ぼすことはなく、NTT東西とドコモやNTTコミュニケーションズの関係性もこれまで通りで、新たな規制を設ける必要はないとしたNTT(持株)の主張を掲載している。

 一方で、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルなど競合のキャリアを含めた多数の企業からは、ドコモが不当に優遇に扱われ、強大な市場支配力を有するのではといった懸念が寄せられている。

NTT東西による優遇禁止、透明性低下に懸念も

 報告書は、NTTグループ内でのドコモの優遇を禁止すべきといった旨を主張。NTT東西がネットワークの構築などにおいて、ドコモを優先的に取り扱う可能性があると懸念が示されている。

 電気通信事業法第30条により、ドコモからの接続機能の要望などを優先的に取り扱うことは禁止されているものの、義務コロケーションや電気通信役務の提供に関する契約の締結の取次の業務受託などは、NTT東西の特定関係事業者にドコモは指定されておらず、法的規制がなされていない。

 そのため報告書は、ドコモを新たにNTT東西の特定関係事業者に指定する必要があると述べている。

 また、NTT東西がドコモを優先的に取り扱う懸念については、今後具体的な問題がないかについての検証を強化。何らかの問題があると認められれば、既存ルールなどの見直しについて検討するべきと、NTT(持株)が当初主張していた「新たな規制は必要ない」との主張は退けられたかたちとなった。

 ドコモの上場廃止により、これまでの四半期決算などで公表されていた情報を公開する必要がなくなるため、透明性が低下するのではといった懸念が指摘される。

 これについては、ARPUなどは引き続き公開される必要があるとしており、市場検証会議などで必要な情報のうちドコモの上場廃止で公開されなくなくなる場合、引き続き提供を求めるとしている。

情報流用の懸念

 NTTグループ内の人事交流などで、NTT東西が接続や卸などで得た競合他社の情報がドコモへ提供されるのでは、といった可能性については他社からドコモのNTT東西の特定関係事業者への指定や第三者機関による、NTT東西の設備部門の監査の仕組みが必要といった主張がなされている。

 事業法第30条において、そうした行為は禁止されているものの、構造的に情報が流用されるリスクがあると報告書は述べており、ドコモの特定関係事業者の指定と合わせて、NTT東西とドコモ間の社員の在籍出向については、現状同様に行うべきではないと説明。これまでも、市場検証会議などで出向が行われた実績がないため、新たな禁止の根拠を法律で定める必要性は薄いとした。

 一方で、NTT東西が有する情報の目的外利用については、今後も検証を強化し、問題が認められればそれを踏まえて既存ルールを見直すべきとしている。

競争事業者排除は禁止

 NTTグループ全体の利益最大化を図る結果として、光サービス卸を赤字価格で提供するといった競争事業者排除の懸念が提起されていることについては、今後、具体的な問題がないかの検証を強化。問題が発覚したら既存ルールの見直しについて検討すべきとした。

 また、競争事業者の排除のおそれは、適切な市場を画定した上で継続的な注視が必要とした上で、比較対象として他社からも取引のデータの提供を受け、グループ各社の損益にどのような影響が生じているかなどを比較・検証するといったことが考えられるとしている。

 このほか、NTT(持株)はドコモのシェア低下により、ドコモにのみ課されている禁止行為を見直すべきと主張。MVNO委員会からは、規制対象をKDDIや沖縄セルラー、ソフトバンクにも広げるべきといった声も聞かれる。

 これに対して、報告書は検討会議において、MNOとMVNOのイコールフッティングのためには、MVNO委員会の意見の通り、規制対象業者は拡大すべきでさらにその規制も設備部門と営業部門との隔離などを設けるべきという声があったとしつつ、今後、MNO各社のグループ内事業者への優先的な取扱いの実態や接続に関して知り得た情報の管理などを把握・検証し追加の検討が必要とした。

 さらに、ドコモとNTTコミュニケーションズ間で法人営業が一体化された場合、法人市場においてドコモの市場支配力が影響を及ぼす懸念やNTT東西との共同営業といった懸念が憂慮されている。

 他社からは、法人向けサービスにおけるNTTグループの市場支配力についての検証強化が必要であるとの声が上がっている。

 報告書は、ドコモが法人市場にその影響力を及ぼす可能性については事業法第30条で規制されていることに加えて、NTTコミュニケーションズがNTT東西の特定関係事業者であること、NTT東西とNTTコムには独立した営業部門が存在していることから、NTT東西との共同営業の懸念についても既存ルールで対応できていると明記。

 一方で、市場検証会議などは、法人向けネットワーク市場はその分析対象であるが、そのほかのサービスは対象外であることから、実態把握のための十分な情報が得られていないと指摘。把握できている分野のシェアを見る限りでは、ドコモやNTTコミュニケーションズが圧倒的に高いシェアは有していないという見解を示した。

IOWNへの懸念

 NTT(持株)のIOWN構想では、NTT当時がトランスポート機能を卸提供していくことで、ネットワークサービスは、NTTドコモ/コミュニケーションズを含む各通信事業者がサービス提供者としての役割を担うとしている。

 そうした中、他社からはネットワークのオープン化の流れの中で、競争事業者が収容局単位、県単位などさまざまな階層で当該ネットワークへ接続できることやAPI連携で必要なときに必要な機能を利用できることなどの相互運用性の確保が必要ではないか、といった意見が打ち出された。

 報告書は将来的な課題として、ネットワーク設備と昨日の分離の進展に対応し、機能提供のあり方やネットワーク機能と切り離したネットワーク設備の提供のあり方などについて公正競争確保の観点からあらゆる主体を対象として検討すべきと主張。

 今後、ネットワーク仮想化やソフトウェア化に伴うネットワークの環境変化の対応については、公正競争確保の点のみならず、原稿規律の適用関係や適用体系を整理し、見直すべき点がないか随時確認が必要、また実態が先行して公正競争確保のための制度整備が困難にならないように各課題について検討を行うとともに別途、ネットワークの環境変化に対応するための全体的な整理・検討を行う場が必要ともされた。