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ドコモ吉澤社長が語った5Gへの取り組み――11月5日のドコモ発表会まとめ

CMキャラクターの佐藤健と吉澤社長

 NTTドコモは5日、2020年冬~2021年春に発売する新機種と新たなサービスを発表した。

 今月いっぱいで退任する吉澤和弘代表取締役社長は、新製品・新サービスに加え、2023年度までに1兆円の投資を予告するなど、5Gへ注力することをあらためて紹介した。

2022年度末までに5G専用帯域で人口カバー率70%

「5Gは全ての基盤となる」「新たな価値の創出や社会課題の解決のためには5Gネットワークの質が何よりも大切」――そんな言葉で、5Gの重要性を語り始めた吉澤氏は、特に高速大容量を実現することがもっとも重要と指摘する。

 その会員数は、50万人に達した。

 同社では、4Gネットワークに加えて、5G専用に割り当てられた周波数帯にこだわってエリアの構築を進めていることに触れ、「瞬速5G」と銘打ち、 2023年3月末までに3万2000局、人口カバー率としては70%まで広げる予定 であることを明らかにする。

 2022年3月には東京23区、名古屋市や大阪市近郊などで5Gエリアが広がり、その後、全国47都道府県にも広がる。

エリアマップに5G、マクロセル活用で

 同社Webサイトにあるエリアマップは、4日には5Gの状況も更新。これまではごく限られたエリアだけスポット的にカバーするスモールセル基地局だったが、今夏から、より高出力で広いエリアをカバーするマクロセル基地局の設置がスタート。

 マクロセル基地局の運用が開始されれば、面的なエリアカバーがこれまでより格段に進む予定であることが示されている。

ミリ波とキャリアアグリゲーション

 ミリ波については、11月4日から夏モデルのarrows 5Gがソフトウェア更新で対応。12月末には全都道府県で展開される予定となっている。

 また12月から、5Gでのキャリアアグリゲーション(CA)が開始される。これは複数の周波数(電波)を束ねて使うことで、より高速な通信を実現するもの。

 3.7GHz帯と4.5GHz帯を組み合わせるとのことで、下り最大4.2Gbpsを実現する。標準仕様準拠とのことで、ネットワーク側の設備は、複数の企業の装置、つまりマルチベンダーで運用することもできるという。

3年で1兆円

 吉澤社長は「2023年度までに1兆円を投資しその後も継続的に投資をすることで早期に5次エリアの充実を図っていく」と説明。

 競合他社では今後10年で、KDDIが2兆円、ソフトバンクが2.2兆円の投資を明らかにしているが、3年で1兆円という規模は他社よりも多額な投資となり、5Gの設備投資で他社に差をつける方針が明らかにされた。

 具体的な展開例として、スマートスタジアム化に向けJリーグとプロ野球のスタジアムが5Gエリアになる。

 競合他社では、auやソフトバンクが、4G用周波数を5Gに使う、つまり転用する方針を示している。転用することで、より広いエリアを5G化できる一方、使える周波数幅が5G専用のものほど広くないことから、通信速度の向上は限られる。

 ドコモは、2021年の後半から4G周波数の転用を進める方針。今回の発表会でも、吉澤氏は、5G専用周波数対応の基地局の設置を積極的に展開し、「 本来の5Gのポテンシャルを発揮できる環境を整えることにこだわる 」と明言し、同社の姿勢をあらためて示す。

 こうした5Gを活用する具体例として、山口県立美術館での遠隔授業、高知県でのスマートグラスによるARを使った農業の栽培指導などを挙げた吉澤氏は「ドコモは今後も課題やニーズを解決するためのソリューションと5Gエリアをセットで提供することに注力する」と宣言する。

新宿で小田急とともにXRの取り組み

 ドコモでは、新宿を舞台に、小田急電鉄と協力して「XRシティ-SHINJUKU-」を11月18日から展開する。

 ビックカメラやファミリーマート、ローソン、マクドナルドなどdポイントやd払い加盟店などのパートナーとともに、XR(AR、VRなどの技術)を用いたコンテンツを揃える。

ドコモの吉澤氏(左)と小田急の星野氏(右)

 スマートフォンをかざすことで街中で楽しめるARコンテンツ、ファッションショーなどが用意されるとのことで、「その場に行かないと体験できない感動をお届けする」(吉澤氏)ほか、AR活用のクーポン券の提供といった仕掛けで、実店舗への送客も予定されている。

 小田急電鉄取締役社長の星野晃司氏は、新宿西口での大規模再開発を予定する一方、新型コロナウイルス感染症を契機に進むデジタル化とニューノーマル社会を踏まえると、リアルを舞台とする事業を展開する小田急にとって「デジタルとリアルの融合、またはリアルならではの魅力をさらに高めることが重要な課題」と説明する。

 そこで期待されるものが、現実と仮想空間を融合するXR技術であり、5Gとの組み合わせで、新たな価値を新宿に提供できるとした。

eスポーツでも積極的な取り組み

 5Gに関連するドコモの新たな取り組みのひとつが「eスポーツ」だ。さらなる成長が見込まれる分野で、なおかつ、モバイルでの利用も多い。

 今後、5Gが広がれば、より手軽にスマホなどのデバイスを使って対戦や観戦を楽しめるようになる、という見立てのもと、ドコモではeスポーツリーグを立ち上げると吉澤氏。

 扱われるタイトルはPUBGモバイル。そしてもうひとつがLeague of Legend Wild Riftだ。

 吉澤氏は「ライアットゲームと一緒に多くの方に参加いただける日本での大会を検討している。今後は5Gを活用し、離れた場所にいるファン同士をつなぐ大会、プレーヤーと視聴者のオンラインコミュニティの開催など新しい体験を創造する」と意気込みを見せた。

卓球Tリーグと5G

 eスポーツだけではなく、現実のスポーツとのタッグとして、卓球のTリーグで5Gを活用する観戦サービスを提供する。試合の様子を、全て5Gだけで構成されたネットワークで中継する。これは11月17日の開幕戦で提供される。

音楽ライブ

 10月末にスタートした、人気アーティスト「B'z」の5週連続無観客ライブは、ドコモの「新体感ライブCONNECT」で配信される。

 吉澤氏は「ライブイベントなどが思うように実施できない中でも、さまざまなアングルから、高精細かつ臨場感のあるライブ映像を配信できる。ファン同士でコミュニケーションができる機能なども提供している。ご覧いただくとdポイントが最大で8倍還元される」と述べ、今後も多くのアーティストのライブ配信に取り組むとした。

デバイスレンタル「kikito」

 スマートフォンの紹介に続いて披露されたのが、デバイスレンタルサービスの「kikito」。2021年3月より提供される。

 より気軽にさまざまなデバイスを使えるように提供されるというもので、5G時代をより楽しむ周辺デバイスが用意される。

 たとえばVRヘッドマウントディスプレイは、5Gの映像体験を拡張するデバイスと位置づけられる。

 アウトドアを楽しむ際にも、アクションカメラやモバイルプロジェクターをレンタルすることで、さまざまな場面を記録し、夜のテント内でも楽しめる。スマートフォンひとつだけではなく、周辺機器を販売ではなくレンタルという形で、敷居を下げて、先端的な体験を広めようという狙いだ。

端末ラインアップについて

 スマートフォンのラインアップは、5Gではハイエンド2機種、スタンダードモデル4機種という構成。かつてと比べれば、ハイエンド機種が激減した格好だ。

 これにNTTドコモプロダクト部長の安部成司氏は、「ハイエンドは、厳選して提供することが重要。(5G専用周波数の)Sub6、国内最速の4.2Gbpsを楽しめる機種をラインアップした。一方で、より手に取りやすくなるようミッドレンジ側を手厚くした」と解説する。

他社の20GBプラン「4Gだけか5G含むか」

 10月下旬、KDDIとソフトバンクがそれぞれのサブブランドで20GBの料金プランを発表した。

 対応を問われた吉澤社長は「4Gだけで考えるのか、5Gを含めるのか、検討の余地はある。今からの検討になる」とコメント。

5G料金に

 また現在はキャンペーンで使い放題としている5Gの料金プランについては、「5Gでは、無制限が一番、お客様にとって良いものだと理解している」としつつ、今回、5G対応のスタンダードモデルを提供することもあり、ユーザーの利用動向をもう少し時間をかけて見極める意向が示された。

 ただこれまでのところ、設備面での問題は起きていないという。

退任予定の吉澤氏「発表会、今後も」

今月いっぱいで社長を退任する吉澤和弘氏が登場する発表会は、今回が最後になると見られる。

 吉澤氏は質疑応答で最後の会見になることを踏まえた質問を投げかけられると「残念だったのはリモートになったこと。今後もリモートが続くなら、5Gを使い、さらに臨場感のある発表会にしていきたい」とコメント。

 さらに過去4年半の任期の中で、発表会では、スマートフォンを商品と見ていたものの、それだけではなく、関連するサービスやソリューションを多くの人に理解してもらい、体験してもらうことが重要と考えるようになったとも説明。「今後も、ドコモとして、節目節目で発表会を開催することが、メディアを通じ、ユーザーに理解してもらうためには絶対に必要」と発表会の意義をあらためて説明した。