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進む「NTT法見直し」の議論、携帯3社がNTT法廃止に反対する理由
2023年10月19日 21:56
KDDIやソフトバンク、楽天モバイルのほか電気通信事業者、地方自治体など180者が自民党内で議論が進むNTT法の見直しについて、より慎重な議論を求める要望書を自民党と総務大臣に提出した。19日午前、3社がこれに関連して記者会見を開いた。
NTT法の見直しは慎重に進めるべき
携帯大手3社などは、時代にあわせたNTT法の見直しには賛成しつつも、他社が持ち得ない設備をNTTのみが保有していることでその公益的な責務のあり方や公正な競争環境の維持、議論期間の短さ、加えて再びNTTグループが一体化する可能性などの懸念を示し、同法の廃止には反対の立場を明らかにした。
自民党内部では、防衛財源の確保を出発点としてNTT法の見直し、同社の完全民営化などが検討されている。同法ではNTT株を政府が一定数保有する義務を定めており売却には法改正が必要になる。
NTT法廃止には反対、時代に沿った見直しを
19日の会見で、KDDIとソフトバンク、楽天モバイルはNTT法の見直しには慎重になるべきと各社の意見を訴えた。
競争事業者が問題視しているのは「NTT法の廃止」。NTTは他社と異なり、全国を網羅するケーブルや多数の局舎、電柱、管路などほかの事業者がこれから多額の資金をかけても整備することが難しいながらも、通信サービスの維持に欠かせない設備を保有する。これらの設備は電電公社時代に当時25兆円もの金額を投じて整備され、NTTが引き継いだ。
こうした設備は、通信事業者が頼らざるを得ない「ボトルネック設備」と称され、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルもこの設備を利用して自社のサービスを実施している。NTT法では他事業者の間で公正な競争環境を確保する目的で、NTTドコモとボトルネック設備を有するNTT東西の合併などが規制されているが、仮にNTT法が廃止され両社が合併した場合、他事業者との間での不均衡が生まれ、ユーザーには料金の高止まりなどのかたちになってあらわれる可能性がある。
携帯3社が会見を開いた同日同時刻には、NTT自身もNTT法に対する同社の姿勢を説明する記者会見を開いており、NTT 島田明社長はその中でドコモとNTT東西を統合する考えはないと発言。しかし、法的な制約がなくなれば制度上は統合も可能になることから警戒が高まっている。
NTTグループはもともと分離分割の方向性がとられていたが、2020年にはドコモがNTTの完全子会社となった。髙橋氏は「法律に書いていないからと審議会もなく(NTTは)ドコモを子会社化した。こういうことをされるのでちゃんと法律に残さないといけない」と主張。ソフトバンク 宮川潤一社長も「ドコモのTOBをしれっとやった」としたうえで、いずれまた同じことが起きる前に声をあげる必要があると危機感を隠さない。
NTT法であまねく義務が設けられている銅線を使うメタル電話と言われる仕組みの電話利用者はおよそ1500万契約。一方でインターネット経由のIP電話はおよそ4500万契約と全国であわせて約6000万契約の電話利用者が存在する。これを踏まえKDDI 髙橋誠社長は固定電話のサービス提供義務は確保されるべきと訴える。NTTでは、整備に充てるための交付金制度やメタルに限らない仕組みの導入が可能であれば、競合他社が踏み込みにくい地域でもサービス提供を行うとも主張している。
一方各社では、研究成果の開示義務や社名変更といった現在の時代に見合わない古い規定については見直しは必要との見解を示す。NTT法では、同社の研究開発の成果は他事業者などに求められた場合は開示する必要があるとされており、NTTではこれが他社との共創などに向けて足かせになるとして、見直しが必要な根拠のひとつとしている。
各社がNTT法見直しの課題を主張
髙橋社長はNTT法の廃止を「国民の利益が損なわれる」として絶対反対の立場を鮮明にする。特にNTTグループ内での企業統合は公正競争確保の重要性を強調。「NTTのグループ再統合や一体化の防止はNTT法に明記されており堅持(すべき)」とする。さらに「公社時代に25兆円(当時)かけてつくった電柱や局舎など特別な資産は外資からしっかりと守る必要がある」と安全保障の面にも言及した。
宮川氏は「NTTは我々と違い特殊法人であることを忘れてはいけない」と主張。電電公社時代からの資産を受け継いだ会社としての責務があるとして、NTT法を廃止するなら、公共資産を国に返上し、国の監督のもと運用する必要性を訴える。ただしそれはハードルが高いとも語り、現実的な結論としてNTT法は維持しつつ、一部を改正するべきとした。「とう道や管路(ボトルネック設備の一種)など、日本は30年以上かけて作った。それをもう1度作れというのは不可能に等しい」としてその運営に規制を設けるのは当然と述べた。
楽天モバイル 共同CEOの鈴木和洋氏はドコモとNTT東西の一体化の危険性を指摘。両者のサービスがセット販売され、最終的に値上げにつながるなどの可能性について言及した。さらに「AT&Tやベライゾンなど通信会社からグーグルやフェイスブック、アマゾンが出てきたわけではない」としてNTT法を改正してもそうした企業に対抗することにはつながらない旨を主張した。NTTでは、2020年のドコモ完全子会社化の際にGAFAへの対抗を目指すと主張していた。