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ドコモが農業・漁業向けに新IoTソリューション、AIで栽培ノウハウのデータベース化も対応

 NTTドコモは、農業や漁業などの1次産業を対象とした新たなIoTソリューションの提供を9月中旬に開始する。実証実験として、水耕栽培とマグロ養殖の現場への導入を開始した。

 NTTグループのAI技術「corevo」や日本IBMの「IoT分析プラットフォーム」を活用し、これまでの1次産業向けソリューションでは扱っていないカメラ画像や音声などのデータも分析可能としている。

 たとえば、農業分野でこれまで活用されてきたサービスは、作物の状態や成長を予測するためのデータとして、水温、気温、水位といったセンサーから取得できるデータを用いるものが多かった。ここにカメラから得た画像データを加えて分析することで、病気の兆候を把握して予防したり、生育状況から最適な収穫タイミングを導き出したりといった活用が可能になる。

 また、熟練の農業従事者の高度な栽培ノウハウをデータベース化し、若手の作業者に提供する仕組みも備える。作業中に熟練の作業者が話したアドバイスの内容を録音すると、テキスト化、自然言語処理を経てデータベースとして保存される。若手の作業者が1人で作業する時に、分からないことをチャット形式で問いかければ、データベースから回答を得られる。

 単純にアドバイスの内容を録音するだけに留まらず、季節他の情報と組み合わせて最適な回答が可能としている。たとえば、「水やりは夏は7時が適していて、冬は9時が適している」というアドバイスを録音していたとすると、若手の作業者がデータベースに「水やりは何時がベスト?」と問いかければ、質問内容と8月という時期を踏まえて、「7時」と返答する。

水耕栽培とマグロ養殖で実証実験

 新IoTソリューションの提供開始に向け、NTTドコモは水耕栽培とマグロ養殖にて同ソリューションを活用した実証実験を8日に開始した。

 水耕栽培では、アプレが北海道七飯町で運営する水耕栽培施設で実証実験を行う。同施設では多品目の野菜を同じ養液で栽培する高度な手法を用いているが、ノウハウの継承に課題を抱えている。

 検証する内容は2点で、1つはセンサーから取得したデータと画像データを活用した栽培環境の最適化。最終的にハウス内の温度・湿度を常時モニタリングし、窓の開閉や空調の設定を自動制御して、最適な栽培環境に調整するシステムを目標としている。

 もう1つは、アプレが持つ高度な栽培ノウハウの横展開のためにIoTソリューションを活用できるかを検証する。最適な栽培環境を維持するシステムと、栽培ノウハウのデータベース化により、高度な栽培技術を若手に継承できるような仕組み作りを目指す。

 一方、マグロ養殖では双日ツナファームのクロマグロ養殖場にて、実証実験を行う。実証実験では、水温や水中の酸素量といった内部データを取得し、気象情報などを組み合わせて分析し、最適な給餌タイミングや給餌量を提案するシステムを構築する。

 これまでもドコモは水産事業者向けにセンサーを活用した分析システムを提供してきたが、センサーで取得したデータを実際の養殖事業で活用するためには、養殖のノウハウを持つ熟練者による分析が必要だった。今回の実証実験では、AIによる分析を追加することで、未経験者でも指示通りに作業すればをマグロが養殖できるようなシステムを目指す。