【CES 2018】

アプリが動くスマートグラス、視覚障害者向け読み上げカメラ~実用的になってきたウェアラブルデバイス

 CESにおいてウェアラブルデバイスは一時ほど数は減ったものの、実用的なデバイスに絞られてきた印象だ。ここではCESで見かけたウェアラブルデバイスをレポートする。なお、スマートウォッチヒアラブルデバイスについては別記事でレポートしている。

Androidアプリも動くスマートグラス「Blade」

Blade。見た目はサングラスだが、このフレーム部にスマート機能も内蔵している

 Vuzixは同社の最新のヘッドマウントデバイス「Blade」を展示していた。同社はヘッドマウントデバイスの最大手で、毎年のようにCESのInnovation Awardを受賞しているが、今年もやはり受賞している。Bladeは昨年、モックアップで展示されていたが、今年は実機展示で、多数の来場者がデモ体験に詰めかけていた。

 Bladeはサングラス型のデバイスで、透過型のディスプレイとAndroidベースのスマートデバイスを搭載している。右側面フレーム部にマルチタッチ対応のタッチセンサーがあり、そこで各種操作ができる。Google Playストアのアプリがそのまま動くわけではないが、apkファイル(Androidアプリのパッケージ)を転送すればアプリを動かすことができるという。

肉眼ではもう少しはっきり見える印象。見ての通り明るく鮮明
左がカメラ、右がディスプレイ。右外側のタッチパネルで操作する

 実機を体験した感触としては、最大手だけにディスプレイの見え方もデバイスの安定性も高く、本体も軽くて装着しやすいと感じた。スピーカーは搭載していないので、音を聞くためにはUSBオーディオかBluetoothヘッドセットを使うとのことだ。

 現時点ではコンシューマー向けデバイスとしての販売ではなく、開発者向けの販売となっている。日本でも開発者登録の予約受け付けを開始していて、3月頃のSDKと量産前試作品、その後の量産品のセットで約20万円となっている。

メガネ型ディスプレイ「picoLinker」

picoLinker

 日本企業のウエストユニティスは、ヘッドマウントデバイスを展示。同社はAndroidベースのスマートデバイス機能もある「InfoLinker」をすでに販売中だが、ディスプレイ機能のみの小型・低コスト版の「picoLinker」を今夏、発売する予定とのことだ。InfoLinkerは産業用途向けだが、picoLinkerは個人用途にも向いている。価格は5〜6万円程度となる見込み。

導電繊維でスイングを解析するウェアラブル

 導電性繊維を使った、文字通り衣類に組み込むウェアラブルソリューション「e-Skin」を展開するXenomaは、ゴルフ向けのスポーツブランド「HUGO BOSS(ヒューゴ・ボス)」と提携し、ゴルフに特化した製品を発表している。

HUGO BOSSとのコラボ製品
銀色の部分が導電性繊維

 「e-Skin」は衣類に導電性繊維を仕込む、各種センサーをつないだり、繊維部分の伸びを検出することで、体の動きを測定するというもの。ゴルフ向けの製品は長袖Tシャツ形状になっていて、体の伸び検出は重視せず、体幹・肩・肘・手首などの部分についている加速度センサーにより「体のひねり」を測定する。これによりゴルフスイングの動きの正しさを評価し、パフォーマンスアップにつなげるというものだ。解析してユーザーに提示するようなクラウドとスマホアプリも、XenomaとHUGO BOSSが共同で開発する。

 製品の登場時期は2019年前半で価格は未定。普通の衣類よりは当然高価になるが、ゴルフ愛好家はそれなりにゴルフにお金をかけてくれそうなので、こうした製品も展開しやすそうである。

もともとのe-Skinはもっと導電性繊維が多く、より細かく体の動きを測定できる
手首や上腕などに加速度センサーモジュールが入っている

視覚障害者向けの読み上げカメラ「Orcam MyEye 2.0」

 OrCam Technologiesは視覚障害者向けウェアラブルの新モデル「Orcam MyEye 2.0」を展示している。

Orcam MyEye 2.0
こちらは従来モデル

 こちらは画像認識した物体や人物、文字を読み上げるというウェアラブルカメラで、視覚障害者向けの製品となっている。特殊な製品でもあることから、価格は4500ドルとやや高価なものとなっている。

 従来モデルはメガネに装着するカメラ部と各種処理をするプロセッサー部が分離していたが、新製品ではカメラ部分だけですべての処理ができるようになっている。画像認識から音声発話まではすべてローカル処理で行われ、インターネットやスマートフォンと接続している必要もない。ただしWi-Fi自体は搭載していて、ソフトウェアアップデートに使うという。

こんな感じで呼び指しするとその部分の文字を読み上げたりする

 本体は非常にコンパクトで、どこにそこまでの処理ができるのか信じがたい技術でもあるが、視覚障害者にとっては生活を変えうるレベルの価値のある製品であることは間違いない。

 すでに欧州などで販売中だが、今年中に日本でも発売する予定だという。日本語の認識はかなり難しいとのことだが、開発進捗としては80%程度と、かなり進んでいるようだ。早いければ4月頃に販売開始となるとのことだ。

光るシューズのORPHEはトラッキング強化の新モデル

 日本のスタートアップ企業のNo New Falkは、靴型ウェアラブルデバイスOrpheシリーズの新製品の「ORPHE TRACK」を展示している。ほかの日本のスタートアップ企業がパビリオン形式で集まって展示しているのに対し、こちらは単独のブースだ。もはやスタートアップは卒業したといえそうである。

ORPHE TRACK
前モデル「ORPHE」

 前モデルの「ORPHE」は靴にセンサーを内蔵し、足の動きに合わせてLEDを光らせるといった機能がメインだったが、今回の「ORPHE TRACK」はLEDを光らせることを二の次とし、足の動きを正確にトラッキングすることを目的としている。

センサーモジュールの「ORPHE CORE」

 スポーツなどでも使いやすいように、モジュール部「ORPHE CORE」と靴は分離できるようにして、靴がすり減ったらORPHE COREだけを新しい靴に移し替えたり、自分の足や用途にあった靴に交換できるようにしている。

 No New FalkではORPHE TRACKをプラットフォームとして位置づけていて、他社の靴と組み合わせたり、トラッキングログをスポーツやリハビリなど、さまざまな用途で使うといったことを想定している。価格未定だが、だいたい靴とORPHE COREとのセットで1万円台を検討しているとのこと。