【CES 2018】
新発想のデバイスが続々登場! 日本発のスタートアップをまとめてチェック
2018年1月15日 21:32
コンシューマー家電の展示会であるCESには、大手家電メーカーが巨大なブースで最新製品をアピールしている一方で、スタートアップや中小企業も無数に出展していて、そちらも来場者の注目を集めている。
今年のCESにおいてスタートアップ企業は、創業年数などによって出展制限のある「Eureka Park」というフロアに集中している。ユニークなアイディアの製品を探す人にとって、このEureka Parkは宝の山でありCES最大の見所だ。ユニークな製品が無数にあり、出展者だけでなく来場者も熱意と勢いがあるため、CESの中でも大手メーカーブースが並ぶホールにも負けない賑わいを見せていた。
Eureka Parkはエリア別にジャンル分けもされているが、国などの単位のパビリオンも形成されている。とくにスタートアップ支援が盛んなフランスは、フロアの5分の1くらいフランスなのでは、というくらい多い。ほかには台湾やドイツ、オランダ、イギリス、シンガポール、イスラエルなどのパビリオンがある。
日本のスタートアップはというと、Eureka ParkではJETRO(日本貿易振興機構)がパビリオンを作っているほか、日本のスタートアップ大手のCerevo(もはやスタートアップではないが)のブース内や別の場所にあるJapan Techパビリオンの3カ所に主に展示が集まっている。この記事では日本のスタートアップなどの展示をモバイルに無関係なもの含めてピックアップして紹介する。
新製品の片手剣展示で「ANIME」成分が増したCerevoブース
Cerevo(セレボ)ブースでは、Cerevo自身の製品も展示されているが、Cerevoと関係の深い、秋葉原のスタートアップ支援施設「DMM.make AKIBA」出身の企業などに軒先を貸している。
ちなみに今年もCerevoはCESにおいて中小のIoT機器などが多数出展されているSands Expoの出入り口付近という、きわめて良好な立地にブースを構えている。違う出入り口を使う来場者も多いのだが、こちらの出入り口がほぼ中央にあるので、主役感の高い位置だ。
今回のCESにあわせて発表された製品としては、「1/1エリュシデータ」と「Qvie」が展示されている。
「1/1エリュシデータ」はアニメ化もされたライトノベル「ソードアート・オンライン」(SAO)の主人公キリトが使う剣を再現したスマートトイだ。センサーを内蔵し、振る動作などに合わせて音と光が出るようになっている。6〜9万円という価格帯での価格での商品化を予定している。
「Qvie」はAirbnbなどの民泊施設への設置を想定した小型の自動販売機。4G/3Gネットワークに対応していて、QRコード読み取りなどで決済ができる。こちらは3〜4万円程度の価格での商品化を予定している。
昨年のCESで発表となった、VR向けの触感再現シューズ「Taclim」は、デザインや機能が変更されて再登場。新たにHTC ViveのViveトラッカーを装着できるようになった。こちらはまだ開発中で、10〜15万円での発売を予定している。
このほかにも同社ブースにはCerevoの発表・発売済み製品が多数展示されている。前述の新製品1/1エリュシデータだけでなく、アニメ版「攻殻機動隊」に登場する多足戦車「タチコマ」とアニメ「サイコパス」に登場するハンドガン型武器「ドミネーター」もブースの前面で展示されていて、日本のアニメ感が増し、キャッチーなブースになっている印象だ。
LTE内蔵のスマートロック「TiNK」
「TiNK」は玄関ドアなどの鍵をスマート化する、いわゆるスマートロック製品だ。LTE通信機能を内蔵していて、ネットワークのない環境でも利用できる。
スマートフォンやネットワーク経由での解錠・施錠ができるほか、解錠・施錠を通知したりもできる。また、外側に設置するタッチパネルディスプレイでPINコードを入力したり、NFCで解錠することもできる。一般家庭の玄関ドアへの設置だけでなく、民泊やオフィスなどでの利用も想定している。
生体データのプラットフォーム化を目指す「Arblet」
Arbletが開発している「Arblet Wear」は、脈波や心電など高度な生体データを測定できるウェアラブルデバイスだ。健康管理のためのコンシューマー向けデバイスというよりは、まずは研究目的で展開する予定。ArbletではこのArblet Wearで測定したデータをサーバー上で管理し、匿名化してデータ解析をしたい研究者向けに生体データを公開する。データサイエンティストのためのプラットフォーム作りを目指しているという。
クリエーター向けマルチコントローラー「O2」
Brain Magicは同社が手がけるパソコン向けコントローラーデバイス「O2(Orbital 2)」を展示していた。O2は、ビデオの編集や写真のレタッチ、イラスト描きといった作業において、右手にマウスやスタイラスを持ちつつ、左手で使えるデバイスだ。
前後左右の2軸アナログスティックに回転が加わった3軸の入力を持ち、さらにベース部分に8つのボタンも備えている。それぞれの入力に自由に機能を割り当てることができる。すでにMakuakeにおいてクラウドファンディングを実施。資金調達に成功している。
シンプルなパートナーロボ「PLEN Cube」
PLEN Robotics の「PLEN Cube」はシンプルな形状のパートナーロボットだ。2017年にKickstarterでのクラウドファンディングを成功させている。手のひらサイズの箱形状をしていて、自走機能はないが、カメラを搭載する上半分だけがアクチュエーターで上下左右に旋回する。
上半分が「顔」のようなイメージで、愛嬌のある動きをするが、これの動きによってカメラを好きな方向に向けられるので、監視モニターや自動撮影など、さまざまな用途が想定されている。どのような用途にも馴染むよう、キャラクター性を薄め、汎用性のあるデザインにしているという。
盛り上がるEureka Parkの端に位置するJETROパビリオン
Eureka ParkではJETRO(日本貿易振興機構)が6つのスタートアップ企業からなるパビリオンを形成していた。ただ、こちらは他国のパビリオンに比べると、独自ブースデザインでもなく、企業数も少ないため、せっかくパビリオンを形成しているのに、まとまりでアピールできていないのはやや残念だった。しかしフロアの奥の方にありながらも、人の動線的には悪くない位置にあり、多くの来場者を集めていて、出展者としてもよい感触を得ていたようだ。
ちなみに、昨年までJETROはEureka Parkの上のフロアに日本企業パビリオンを作っていた。そちらはIoT製品大手メーカーが多数出展していて、前述のCerevoもいるなど見所の多いフロアだ。しかし今年のCESから国別パビリオンの形成が不可能になってしまったらしく、JETROパビリオンはEureka Parkに引っ越しとなっていた。ブースのまとまりや広さはかなり縮小されてしまったが、反面、盛り上がっているEureka Parkに移動したことで、熱意ある来場者は増えている印象も受けた。
スポーツ向けのヘッドセット「BONX」
「BONX Grip」はスポーツシーンを想定したヘッドセット。普通のBluetoothヘッドセットとしても使えるが、専用アプリでトランシーバーのようにも使える。専用アプリのトランシーバー機能は無音時に通信しないなど、消費電力と通信量を減らすようになっている。すでに日本では発売されている。スポーツショップなどでも販売されているが、業務用途で使われることもあるという。
次世代プロトタイプもチラ見せした「MaBeee」
スマート機能を持った単3電池「MaBeee」も出品されていた。これは単3電池型のデバイスで、Bluetoothを搭載し、スマートフォンからオンオフをコントロールできるというもの。電源として単4電池を入れて使用する。日本とアメリカではすでに発売済みの製品だ。日本では玩具向けのイメージが強い製品だが、海外では簡単なプログラミングに使える知育玩具的な側面を加えて売り出している。
現行のMaBeeeはBluetooth搭載だが、会場ではWi-Fiに対応した次世代製品も参考展示されていた。次世代製品では直接インターネットにつながるので、Amazon Alexaなどの音声アシスタントとの連動も想定しているという。また、MaBeee側からのインタラクション、たとえばテレビのリモコンに入れておいて、リモコンが押されたかどうかを通知する、といった用途にも使えるようになるという。具体的な製品化時期は決まっていないプロトタイプだが、会場では実働モデルでデモが行われていた。
排泄タイミングをあらかじめ予知「DFree」
「DFree」は腰にセンサーをつけることで、着用者の排泄を予知するというデバイスだ。主に医療や介護向けの製品で、日本ではすでに医療施設や介護施設に販売されている。今年以降に個人にも販売される予定。海外では介護施設だけでなく、高齢者の自立生活支援という観点でも注目されているという。
バイク用のスマートヘルメット「CrossHelmet」
「CrossHelmet」はディスプレイやカメラを搭載し、ナビゲーションや後方視界を表示できるバイク用のヘルメット。
Bluetoothでスマートフォンと接続するが、これ自体がクアッドコアのプロセッサやGPSを搭載したスマートデバイスともなっている。Kickstarterでクラウドファンディングのプロジェクトを成功させていて、今年10月より出資者向け出荷の開始される。スマートデバイスとディスプレイを含んだヘルメットだけに、価格は1799ドル〜とやや高価。
コミュニケーションロボット「Tapia」
MJIの「Tapia(タピア)」は、コミュニケーションに特化したロボットだ。移動能力などはなく、台座の上で上下左右に頭を振るだけの構造になっている。バッテリーを内蔵し、持ち出すこともできが、本体はそこそこ大きい。
個人ユースでは、離れて暮らす親とのコミュニケーション仲介などの用途になるが、ビジネス用途では、受付業務などでの利用が想定されている。たとえば同様に卓上でコミュニケーションを仲介するソニーの「Xperia Hello!」に比べると、二回り以上大きいので、受付業務に向いている印象だ。ちなみにSIMカードスロットがあり、モバイルネットワーク経由で通信もできる。
Japan Tech Project
日本のスタートアップ企業は、「Japan Tech」というパビリオンにも出展している。こちらは日本の展示会出展会社や広告代理店などが中心になって作っているパビリオンで、こちらにもDMM.make AKIBAのスタートアップ企業が多数参加していたりする。
こちらのパビリオン、統一デザインで見栄えがよいのだが、場所が今年からできたとてつもなく細長い新会場の一番奥という、かなりへんぴな位置にある。また、新会場自体の知名度も低いため、Eureka ParkやCerevoのいるフロアに比べると人が少なめだ。Japan Techパビリオンはユニークな展示が多いだけに、この場所取りには少々残念な印象を受けてしまう。
THETAのプラットフォーム化を進めるリコー
リコーはスタートアップ企業というわけではないが、スタートアップ企業向けのソリューションとして、同社の最新の全球撮影カメラ「RICOH THETA V」を展示している。
「RICOH THETA V」は画面こそないものの、中身はAndroidベースで開発されていて、内部的にはアプリを追加できる仕組みになっている。リコーでは今春、THETA V向けアプリの開発を行うためのSDKとアプリ配信ストアを公開する予定だ。展示のデモでは撮影した全球写真に対し、内部で人間の顔を認識して5人までモザイクを自動処理するというサンプルアプリが紹介されていた。
このほかにもブースでは、THETAのモジュール部分の展示も行われている。こちらも開発者向けに販売される予定があるとのことで、たとえばステージ映像などの全球動画を配信する事業者が、自分たちの用途に応じたハードウェアをTHETAベースで開発することができるようになるという。
モフモフするためのモフモフロボット「Qoobo」
ユカイ工学は昨年Kickstarterでプロジェクトを成功させたロボット「Qoobo」を展示している。このロボット、別にAlexaに対応しているわけでもネットにつながるわけでもなく、なでたり抱きかかえたりといったことに対してセンサーが反応して尻尾を振る、というだけのものだ。何かの実用性があるのではなく、見た目や感触を楽しむことに特化したペットロボットである。
Qooboは柔らかい毛並みに包まれたクッションのような質感で、動物が嫌いとかでなければ、「なでる」「抱きかかえる」「枕にして顔を埋める」などで気持ちよい感触が得られる。動作は尻尾を振るだけだが、なでたときに尻尾がパタンパタンと振れるのを見るだけでも癒やされるし、抱っこしたときに尻尾がパタンパタンと振れると、その反作用がまた独特な癒やしの感触を与えてくれる。
Qooboは今秋出荷予定で、価格は1万円となっている。毛皮はグレーとブラウンの2色がラインナップされている。QooboはJETROブースにも出張していたが(ユカイ工学は昨年までJETROブースに出展している)、モフモフで特徴な見た目から触ったり写真を撮ったりする来場者は多かった。モフモフの魅力は世界共通なようだ。
「匂い」をVRに追加する「VAQSO VR」
「VAQSO VR」はVRヘッドセットの下部に取り付け、着用者に「匂い」を提供するというデバイスだ。最大5種類の匂いのカートリッジを装着できて、ゲームやVR動画に合わせた匂いをリアルタイムで出力得る。今年中にクラウドファンディングに出品し製品化を進める予定だが、タイミングはまだ決まっていないとのこと。
IoTディフューザー「Scentee Machina」
「Scentee Machina」はスマホ連動するディフューザー(噴霧機)だ。香水は専用の容器で販売されていて、その容器の下にあるところから噴霧する。粒子が細かく、匂いが何かに付着することはないという。連動するスマホアプリでどの香水を使っているかなどがわかるので、利用者の好みを分析したり、消費量を分析したりできる。なくなる前に次の香水が届くサブスクリプションサービスも提供する。
本体は4本の香水をセットできる「クアトロ」(3万円前後)と1本の「ソロ」の(1万円前半)の2醜類がラインナップされ、香水は22種類が開発されている。両機種ともにファンを内蔵するが、クアトロは出力が強く、20畳程度に対応可能で、たとえばオフィスや美容院での利用も想定しているという。近々Kickstarterでクラウドファンディングを開始し、続いてMakuakeでもクラウドファンディングを行う予定だ。
シニア向けのコントローラー「Hale Orb」
「Hale Orb(ハレ・オーブ)」はテレビに接続したAndroidスティックを操作できるコントローラーだ。Indiegogoでクラウドファンディング中で、2月頃に発売される見込み。主に子どもと離れて暮らすシニア世代向けの機器で、子どもや孫の写真をテレビに表示するといったシチュエーションで、まず新着写真があればHale Orbが光って通知し、写真送りなどもHale Orbを回して操作できる。田舎の老夫婦の家庭といったシチュエーションにもなじみやすい木目調のデザインも特徴。
MESHネットワーク対応の「MASU GLASS」
シリコンバレーの企業であるYume Cloudは、「MASU GLASS」を展示している。こちら、酒升のような形状をしたグラスで、下部にLED発光するIoTデバイスが仕込まれている。この酒升で乾杯をすると、LED発光したり、相手のMASU GLASSと色が同期したりするというものだ。
Bluetoothを内蔵していて、スマートフォンなどからコントロールすることもできる。メッシュネットワークも構築でき、1台のスマートフォンで1000台単位のメッシュネットワークを一斉制御することも可能とのことだ。イベントなどで実際に使われているという。
Alexaスキルを紹介する江崎グリコ
江崎グリコはAmazon Alexa向けスキル「教えて!ぐりこっち」を展示している。これは国内で最初に登場したAlexaスキルのひとつで、各種の食べ物の栄養素を調べることができる。ブースでは英語版が展示されていたが、これは参考出展の形で、実際に英語版が提供されるかどうかは未定とのこと。海外で提供するには、その地域の食生活や栄養素の表示方法に合わせる必要があるが、現時点でそこまでのローカライズはできていないという。
1作品1台の電子コミックデバイス、全巻が一冊に
プログレス・テクノロジーズは、漫画「北斗の拳」が全巻収録されている電子書籍デバイス「全巻一冊」を展示していた。こちらのデバイス、別の書籍を追加したりすることはできず、北斗の拳しか読むことができない、非常に「漢らしい」デバイスとなっている。
ディスプレイは電子ペーパーだが、Kindleなどに比べても解像感の高いものを搭載している。電源は単4電池4本を使用。デザイン、というより装丁は完全に中判の「北斗の拳」そのもので、本棚に入れても違和感がないようになっている(というか本棚以外には収納しにくそう)。電子書籍と異なり、友達との貸し借りや一子相伝もしやすくなっているのが特徴だ。
言語は日本語だけでなく英語も収録。英語版は全巻一冊に収録するために、新たに最初から翻訳し直したという。従来の英語版は前半と後半で訳者が違ったりして、途中でキャラが変わるなどの問題があったらしい。ちなみに英語になると当然横書きになるが、左右反転はされない仕様で、サウザーが普通の人になる心配はない。
Kickstarterでクラウドファンディングに成功していて、出資者向けに2月から出荷される。今後は「北斗の拳」以外の作品の全巻一冊化を行っていくという。