法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「MIVE ケースマ」、ケータイの使いやすさを受け継いだスマートフォン
2026年3月31日 00:00
韓国の新興メーカー「ALT」から国内市場向けにケータイのようなスマートフォン「MIVE ケースマ」が発売された。かつてのケータイを彷彿させる折りたたみデザインながら、Androidスマートフォンとして利用できるユニークな端末だ。筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。
失われつつあるケータイの系譜
本誌でも以前から報じられているように、今年3月31日にNTTドコモの「FOMA」と「iモード」が終了する。もう少し正確に表現すれば、3G対応通信サービスとしての「FOMA」、コンテンツサービス「iモード」が終了することになる。
それぞれ2000年前後から日本の携帯電話業界の飛躍的な発展を支えてきたサービスだが、通信技術とコンテンツサービスの世代交代によって、通信サービスは4G LTEや5G、コンテンツサービスはスマートフォン向けのプラットフォームを中心としたものに置き換わっていく。
こうした世代交代の流れの影響を受け、もうひとつ失われつつあるのが「ケータイ」の系譜だ。
何をもってして「ケータイ」とするのかは、世代や理解によって違うが、ある人は俗に『ガラケー』と呼ばれた「フィーチャーフォン」を指すかもしれないし、別の人は折りたたみデザインなどを中心とした「従来型携帯電話」を思い浮かべるかもしれない。
今回のNTTドコモの3Gサービス終了ではFOMAで利用していた端末の多くが従来型携帯電話だったこともあり、「ケータイが使えなくなるの?」といった誤解も耳にする。
しかし、アプリの追加などに対応しない「フィーチャーフォン」的な意味合いでも、折りたたみデザインなどの従来型携帯電話端末という意味でも、NTTドコモとソフトバンクは後継となる4G LTE対応の折りたたみデザインの端末を販売している。
そのため、FOMAから契約を切り替え、機種変更をすれば、これまでとほぼ同じように利用できる。
ただ、端末メーカーが撤退したり、新機種を開発していないため、徐々に選択肢も少なくなっているのも事実だ。
こうした市場背景もあって、今回取り上げる韓国のALTが日本市場向けに発売する「MIVE ケースマ」(AT-M140J)は、今年2月の発表と発売以来、注目を集めている。
3万4800円というリーズナブルなメーカー希望小売価格も相まって、一部の販路ではすでに在庫切れになるほど、好調な売れ行きを記録している。
ALTのWebページでは「ガラケーみたい、だけどちゃんとスマホ」というキャッチコピーが謳われており、ケータイのような折りたたみデザインながら、スマートフォンとして利用できることがアピールされている。
ただ、「MIVE ケースマ」がプラットフォームを含め、どういう位置付けの製品なのかがいまひとつ理解されていない面もあり、市場では「ケータイなの? スマホなの?」といった戸惑いの声も散見される。
「ケースマ」をレビューする前に、ケータイの系譜を少し整理してみよう。
ケータイ時代のプラットフォームからAndroidベースへ
現在のスマートフォンはプラットフォームとして、AndroidとiOSが採用されているが、かつてのケータイもさまざまな機能が追加されたことで、プラットフォーム化が進められた。
よく知られているのは、第二世代のPDC方式やFOMA時代の初期に多くの端末に採用された国産のリアルタイムOS「μTRON」(マイクロトロン)だが、FOMAでは端末やサービスの高度化に伴い、英SymbianやLinuxをベースにしたプラットフォームが採用されるように。
国内では、NTTドコモで「Mobile Oriented Applications Platform」を略した「MOAP(S)」や「MOAP(L)」が搭載された端末がリリースされた。
ちなみに、ケータイ時代の端末のプラットフォーム化はNTTドコモだけでなく、KDDIも米Qualcommと共同で「KCP(KDDI Common Platform)」を開発し、ソフトバンクもエリクソンと開発した「ERICSSON Mobile Platform」を採用していた。
こうしたケータイ時代のプラットフォームは、スマートフォンが登場しはじめた2010年前後から徐々に終了していく。
端末の主流がスマートフォンに置き換わったことが衰退の理由と捉えられそうだが、実はプラットフォームのソフトウェア開発やサポートが終了したり、チップセットを開発するメーカーの撤退や統廃合なども背景にある。
どちらかと言えば、ケータイのプラットフォームを続けたくても続けられなくなった面が強い。
ケータイ時代のプラットフォームの開発終了などで、存続が危ぶまれたケータイだったが、その後継として登場したのが「AOSP(Android Open Source Project)」をプラットフォームにした『Androidベースのケータイ』だ。
AOSPはその名前からもわかるように、Androidベースのオープンソースのプラットフォームだが、現在、私たちが利用しているAndroidスマートフォンと違い、Googleのアプリなどが利用できる「GMS(Google Mobile Services)」が組み込まれておらず、言わば、『素のAndroid』のような構成となっている。
同様のAOSPを採用した製品としては、Amazonの「Fireタブレット」などが知られている。
AOSPを採用したケータイ(以下、AOSP採用ケータイ)は「Androidケータイ」や「Androidフィーチャーフォン」とは呼ばれず、当初は「Androidベースのフィーチャーフォン」、最近では「Linuxベースのプラットフォームを採用した~」などと表現される。
これは「Android」という名称を冠するには、「Android」の商標を持つGoogleが定めた「互換性定義ドキュメント(CDD)」や「互換性テスト(CTS)」をクリアする必要があるためで、AOSP採用端末はこれらの仕様や条件を満たしておらず、「Androidベースの~」といった表現は使われなくなっている。
AOSP採用ケータイは、国内ではシャープや京セラ、FCNTなどが開発し、NTTドコモやau、ソフトバンクなどで販売されたが、徐々に選択肢が少なくなり、現在はNTTドコモの「DIGNOケータイ KY-42C」や「らくらくホン F-41F」、auの「かんたんケータイ ライト KYF43」、ソフトバンクの「AQUOSケータイ4」や「DIGNOケータイ4」、「かんたん携帯11」などが購入できるのみだ。
auはケータイ時代の人気シリーズを復活させた「G'zOne TYPE-XX」を2021年12月に発売したが、すでに販売を終了しており、au OnlineShopの一覧からも消えている。
AOSP採用ケータイが減少してきたのは、スマートフォンの普及がさらに進み、需要が減ってきたためだが、ユーザーのニーズが高かった機能が利用できなくなったことも少なからず関係している。たとえば、「LINE」もそのひとつだ。
実は、多くのAOSP採用ケータイは組み込みアプリとして、出荷時に「LINE」がインストールされていた。
現役世代の多くはすでにスマートフォンを使い、普段のコミュニケーションにLINEを利用するユーザーが多いため、自身の両親や祖父母といったシニア/シルバー世代にも「LINE」を使って欲しいというニーズがあった。
これに応える意味もあって、AOSP採用ケータイには「LINE」が搭載されたが、LINE(現在のLINEヤフー)は2018年3月にフォーチャーフォン版LINEのサービス終了をアナウンスしたため、AOSP採用ケータイなどでもLINEが利用できなくなってしまった。
一部の自治体などでは行政サービスの告知にも採用されていたため、一方的なサービス終了に不満を持つ関係者も少なからず居た。
こうした状況に対し、2018年5月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが提供を開始した「+メッセージ」は、フィーチャーフォンでのLINEの代役的な存在として期待され、その後のAOSP採用端末に相次いで採用された。
現在販売されている「DIGNOケータイ KY-42C」などのAOSP採用ケータイにも、継続して搭載されている。
ひとまず、スマートフォンとAOSP採用端末の間のテキストコミュニケーションの環境は保たれた形だが、主要3社は今後、「+メッセージ」からGoogleメッセージ(RCS)へ移行していくことをアナウンスしているため、AOSP採用ケータイのメッセージングサービスがどのようになっていくのかについても注目される。
「ケースマ」がAndroidスマートフォンである意味
こうしたケータイの系譜を踏まえたうえで、今回、韓ALTが国内向けに販売した「MIVE ケースマ」の位置付けを考えてみよう。
「MIVE ケースマ」は前述のように、「ガラケーみたい、だけどちゃんとスマホ」というキャッチコピーが謳われており、Androidプラットフォームを採用したスマートフォンとして開発されている。
AOSP採用ケータイと違い、GMSが組み込まれ、Googleの各サービスが利用でき、Google Playからアプリをインストールすることもできる。後述するバージョンの違いがあるものの、基本的には現在、国内で販売されている一般的なAndroidスマートフォンと基本的に同じものと考えて、差し支えない。
裏を返せば、らくらくホンなどのAOSP採用端末と違い、アプリの追加などを含めたセキュリティ面には、一定の配慮や知識が必要になる。
すでにAndroidスマートフォンなどを利用しているユーザであれば、これまでと同じような注意で構わないが、AOSP採用端末や従来の携帯電話を利用してきたユーザーは、Androidスマートフォンなどに慣れたリテラシーのあるユーザーに頼ることが必要になるかもしれない。
とは言うものの、国内のモバイル業界の現状を鑑みると、モバイル関係に限らず、多くのサービスでスマートフォンの利用が前提となっており、AOSP採用端末に比べれば、多様なサービスが利用できるメリットは大きい。
前述のメッセージングサービスについてもLINEが利用できるうえ、筆者が試した限り、+メッセージも問題なく利用できた。
楽天モバイルの「Rakuten Link」は残念ながら、Androidのバージョンの制限なのか利用できないが、そもそもの話として、ALTはモバイル通信の回線として「楽天モバイルは動作保証対象外です。一部機能を利用できない場合がございます」と謳っているため、現時点では何ともしようがないのが実状だ。
音声通話を重視したいというのであれば、各携帯電話会社はかけ放題オプションを2000円以下、5分以下の通話定額を1000円以下で提供しているうえ、MVNO各社も同様の音声通話のかけ放題オプションを提供しているので、そちらを利用すればいいだろう。
やや幅広な持ちやすいボディ
続いて、ボディから順にチェックしてみよう。まず、折りたたみデザインのボディは幅が65.3mmと少しワイドな形状。
現在のDIGNOケータイなどのAOSP端末は、かつてのケータイで主流だった幅51mmというサイズを継承しているため、それに比べると、手にしたときの印象はやや大きく感じられるが、これは後述するディスプレイが一定サイズ以上であることが条件となっていることと少なからず関係している。
端末を折りたたんだときの厚さ16.2mm、端末を開いた状態では上筐体(ディスプレイ側)が約6.7mm(実測値)、下筐体(ボタン部側)が約9.5mm(実測値)に仕上げられている。
筐体の左右側面はわずかにラウンドしており、端末を折りたたんだ状態から開きやすくしている。
折りたたみデザインの端末の要となるヒンジ部分は、動きもスムーズで、開閉もしやすい。
ただ、端末の持ち方によっては端末のヒンジ付近の合わせ部分で、上筐体と下筐体の間に指の付け根などを挟んでしまうこともあった。慣れの問題だが、使いはじめは少し注意した方がいいだろう。
耐環境性能はIPX4生活防水、IP5X防塵に対応する。IPX4は水の飛沫に対する保護なので、雨の中での使用程度であれば問題ないが、水没などは考慮されていないので、その点は注意が必要だ。
耐衝撃性能についてはサポートされていないため、落下などの衝撃にも気をつけながら使いたいところだ。ちなみに、ALTでは破損や盗難に対応する補償サービスを提供していないので、万が一のときの修理費などを抑えたいのであれば、一般のスマートフォン向け保険などを利用することを検討したい。
バッテリー容量は2100mAh。従来型の携帯電話と違い、バッテリーの着脱には対応していない。容量はあまり大きくないが、折りたたみデザインの端末は端末を閉じた状態ではディスプレイが点灯しないため、ある程度、消費電力を抑えることができる。
具体的な連続使用時間などは明示されていないものの、長時間の連続的な使用を繰り返さないライトな使い方であれば、十分、実用になるレベルという印象だ。
充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子を利用するが、別売で専用卓上ホルダ(3780円)が販売されており、卓上ホルダに載せての充電もできる。
卓上ホルダと端末の接続部分はUSB Type-Cではなく、端末の外部接続端子の左右に備えられた接点を使うため、端末の外装やUSB Type-C外部接続端子を傷つける心配はなさそうだ。
テンキーとタッチ操作を併用
折りたたみデザインの本体には、下筐体の前面にテンキー、左側面に音量ボタン、右側面にSOSボタン、3.5mmオーディオ端子(イヤホンマイク端子)を備える。
テンキーは中央に4方向操作の方向キーと中央に[選択]ボタン(決定ボタン)、最上段にAndroidプラットフォーム必須の3ボタンを割り当てた[タスク管理]ボタン([履歴]ボタン)、[ホーム]ボタン、[戻る]ボタンを備える。
方向キーの周囲には[電話帳]ボタン、[メッセージ]ボタン、[カメラ]ボタンを備え、右下にはよく使うアプリを登録できる[お気に入り]ボタンを備える。
方向キーの下段は左側に[電話開始]ボタン(発話キー)、右側に[電源/終了]ボタン(終話キー)を備え、その間に[クリア]ボタンを備える。
テンキーのレイアウトも標準的で、左下の[*]キーの長押しでマナーモードに切り替えたり、右下の[#]キーの長押しで画面タッチロックのON/OFFを切り替えることができる。
全体的に一般的なケータイとほぼ同じレイアウトなので、移行するユーザーも慣れやすそうな印象だ。
右側面に備えられた[SOS]ボタンは、短押しで指定したアプリを起動したり、長押しであらかじめ登録した相手(保護者)に位置情報とSMSを送信できる。
「MIVE ケースマ」はかつてのケータイと同じようにテンキーを備えており、ディスプレイに表示されたアイコンやメニューを方向キーや選択ボタンで選んで操作することができる。
ただし、すべてのメニューが方向キーと選択ボタンで操作できるわけではなく、一部はディスプレイにタッチして操作することがある。
この点について、一部では「物理キーだけで操作できないのはよろしくない」といった指摘があるが、「MIVE ケースマ」は前述の通りAndroidスマートフォンであり、プラットフォームとしては基本的にタッチ操作を前提に構成されている。
もし、すべてのメニューを物理キーだけで操作できるようにするには、方向キーを360度方向に動かせるポインティングデバイスのように設計したり、表示されるメニューなどもそれに合わせてカスタマイズする必要があり、コストやプラットフォームのサポートを鑑みると、あまり現実的な選択とは言えない。
ちなみに、AOSP採用端末の京セラ製「G'zOne TYPE-XX」には、ポインター操作に切り替える機能が用意されているが、ブラウザーなどを起動する度に操作モードを切り替えるなど、操作がやや煩雑な印象だった。
「MIVE ケースマ」の場合、タッチ操作に対応したディスプレイが搭載されているのだから、必要に応じて、画面をタッチする方が使いやすいはずだ。
右手で端末を持ち、親指で物理キーを操作しながら、必要なときだけ左手の親指などでタッチすれば、ストレスなく操作できるだろう。
考えてみれば、タッチパネル対応のWindows 11搭載ノートPCやMagic Keyboardを組み合わせたiPadなども物理キー操作とタッチ操作を併用しているわけで、より現実的な使い方と言えないだろうか。
もし、ディスプレイのタッチパネルの誤操作などを気にするのであれば、右下の[#]キーを長押しすることで、画面タッチをロックすることもできる。
日本語入力については、オムロンの「iWnn」が搭載される。iWnnはオムロンが30年以上に渡って開発してきた日本語入力システムで、国内外のメーカーの300機種以上の携帯電話やタブレット、ゲーム機、テレビ、カーナビなど採用された実績をもつ。
これまで国内で販売されてきた多くのAndroidスマートフォンにも搭載され、実際に利用してきたユーザーも少なくないだろう。
今回、「MIVE ケースマ」に搭載されたiWnnも基本的にはこれまでのAndroidスマートフォンに採用されてきたものと同じ「iWnn」だが、「MIVE ケースマ」は物理キーとソフトウェアキーボードを併用している。
そのため、日本語入力時は物理キーで読みを入力した後、変換候補を方向キーと選択ボタンで選んだり、ディスプレイ上の候補をタップしても入力できるハイブリッドな環境に再設計されている。
たとえば、物理キーを繰り返し押して、読みなどを入力しているときは、画面の最下段2行分のエリアに予測変換が表示されるが、アプリの入力エリアをタップすると、一般的なスマートフォンのソフトウェアキーボードに表示が切り替わり、フリック入力も利用できる。
ソフトウェアキーボードはテンキーボード表示やQWERTYキーボード表示、50音キーボードなど、ユーザーが自由に変更可能だ。
筆者が見つけられていないだけかもしれないが、物理キーで入力中の英数カナ変換ができない点が気になった。英数カナ変換はソフトウェアキーボードでの入力時にはサポートされている機能なので、物理キーでも同じように変換できてほしいところだ。
タッチ操作もしやすい4.3インチディスプレイ
ディスプレイは、端末を開いたときのメインディスプレイは800×480ドットの4.3インチFWVGA対応IPS TFTカラー液晶、端末を閉じたときの外側のサブディスプレイは240×284ドットの1.83インチWVGA対応 IPS TFTカラー液晶を搭載する。
4.3インチというメインディスプレイは、AOSP採用端末などに比べて対角サイズが大きいが、これは前述のAndroid互換性定義ドキュメント(CDD)において、Androidハンドヘルドデバイスは「物理的な対角画面サイズが 4~8 インチの範囲内」が望ましいとされていることとも関係している。
対角サイズが絶対条件として定められているわけではないが、アプリの互換性などを考慮すると、最低でも4インチ以上を推奨するという意味で、現在調達できるディスプレイデバイスの種類などから、4.3インチという対角サイズの液晶パネルが選ばれたということだろう。
ケータイとしては大画面で、そのぶんボディサイズも大きくなるが、Androidスマートフォンのディスプレイとしてはそれほど大きくなく、持ちやすさとタッチ操作のしやすさをバランスさせた選択と言えそうだ。
タッチ操作ができるメインディスプレイに対し、サブディスプレイは表示のみで、タッチ操作には対応していない。
表示内容も非常にシンプルで、日時やバッテリー残量、電波状態、表示切り替えで歩数などが表示され、着信時は連絡先の登録名、不在着信アイコンなども表示される。
サブディスプレイは外装ボディの内側に搭載されているため、ディスプレイそのものが傷つくことはなさそうだが、折りたたんだ状態ではカギなど他の持ち物との干渉で細かいキズが付いてしまうかもしれないので、使いはじめる段階で、市販の保護フィルムなどを貼った方が安心かもしれない。
悩みどころは画面ロック
繰り返しになるが、「MIVE ケースマ」はAndroidスマートフォンとして開発されており、一般的なスレート形のスマートフォンなどと同じように、端末に保存された情報を保護するために画面ロックを設定できる。具体的にはパターンやPIN、パスワードを設定できる。
現在はほとんどの機種で、指紋センサーやインカメラによる顔認証など、生体認証を設定できる。ところが、「MIVE ケースマ」は生体認証に対応していないため、端末内情報を保護するにはパターン、PIN、パスワードのいずれかを設定するしかない。
かつてのケータイがそうであったように、使い勝手を考えれば、端末を開いてすぐに操作をはじめたいところだが、画面ロックを設定すると、端末を開くたびにロック解除の操作を求められる。
使い勝手を取るか、セキュリティを優先するのかが非常に悩ましいところだが、外出時に持ち歩くような使い方であれば、画面ロックを設定する方がベターだ。
PINであれば、端末を開いて、すぐにテンキーで数字を入力し、選択ボタンを押せば画面ロックを解除できるので、比較的スムーズに操作できるだろう。次期モデルでは指紋認証や顔認証などの生体認証のサポートをぜひ検討してほしいところだ。
Android 14 Go Editionを搭載
Androidスマートフォンとして開発された「MIVE ケースマ」だが、現在の国内市場で販売されているAndroidスマートフォンと少し違うのは、プラットフォームとして、Android 14 Go Editionを採用している点だ。
「Android Go」は元々、新興国などで販売されるローエンドスマートフォン向けに2017年に提供が開始されたもので、2GB以上という少ないメモリー(RAM)でも快適に動作する。
現在はAndroidの各バージョンの「Go Edition」という形でリリースされており、「MIVE ケースマ」に搭載されている「Android 14 Go Edition」は2023年にリリースされたものになる。
Android Go Editionは基本的に通常のAndroidと同じプラットフォームだが、少ないメモリーでも動作するよう、軽量化のためにマルチウィンドウや視覚効果に対応しておらず、バックグラウンドでのアプリ動作も厳しく制御される。
Googleが提供するアプリもAndroid Go Edition向けにサイズを抑えたものが提供され、データ通信も節約するように構成されている。
Google Playからアプリのインストールもできるが、アプリによっては動作が遅くなるケースもあるという。
今回試用した限りでは、[Chrome]でのWebページ閲覧をはじめ、[Gmail]の送受信やメール作成、[YouTube]での動画再生、[YouTube Music]での音楽再生なども問題なく利用できた。
オーディオ関連で言えば、[FMラジオ]機能も搭載されており、3.5mmイヤホンマイク端子に有線イヤホンを接続すれば、FMラジオを聴くこともできる。
既存のミッドレンジクラスのスマートフォンに比べれば、パフォーマンスは物足りなさを感じることもあるが、プラットフォームとして軽量化されている効果もあって、それほど大きなストレスを感じることなく使用できた。
プラットフォームとしてはローエンド向けながら、便利機能も搭載されている。
たとえば、端末の開閉や物理キーの入力が一定時間されなかったり、バッテリー切れによる電源オフなど、一定の条件を合致したときにあらかじめ登録した相手(保護者)に位置情報をSMSで送信する「安心メッセージ」をはじめ、毎時正時に音声で時刻を知らせたり、着信時に発信元を読み上げる「通知の読み上げ」などを利用できる。
4G LTEネットワークに対応
チップセットはMediaTek製Helio G36を採用し、3GB RAMと32GB ROMを搭載する。最大1TBのmicroSDメモリーカードを装着できるので、写真などは外部メモリーに保存する方がベターだろう。
モバイルネットワークは4G LTE/3G W-CDMAに対応しており、NTTドコモ(NTTドコモ、ahamo)、KDDI(au、UQモバイル、povo)、ソフトバンク(ソフトバンク、Y!mobile)で利用できる。
楽天モバイルについては動作保証外となっているが、SIMカードを装着したところ、APNが自動的に設定され、4G LTEでのデータ通信は可能だった。
ただし、楽天モバイルの[Rakuten Link]アプリはセットアップができるものの、発信も着信も正しく動作しなかった。
SIMカードはnanoSIMカードを1枚のみ装着可能で、eSIMには対応していない。
モバイルネットワークで少し気になったのは、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社や、MVNO各社のSIMカードを挿したとき、表示されるプリセットのAPNが非常に少ないことだ。
もちろん、ユーザーが自ら追加すればいいのだが、もう少しプリセットのAPNを増やしておいてほしいところだ。
Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz)に対応し、テザリングもできる。
Bluetooth 5.4に対応し、ワイヤレスヘッドセットやワイヤレスイヤホンなども問題なく利用できた。
衛星による位置情報の測位機能は、米GPS、露GLONASS、中国BeiDou、欧州Galileo、日QZSS(みちびき)に対応する。今回は実際に[マップ]アプリを使い、屋外で徒歩ルートを探索し、実際に経路を歩いてみたが、あまり道の広くない住宅街でも大きく位置を外すことなく、トレースすることができた。
カメラは背面に800万画素/F2.0のメインカメラ(26.7mm)、メインディスプレイ右上に500万画素/F2.4フロントカメラ(24mm)をそれぞれ内蔵する。
メインカメラはデジタルズームを含め、最大4倍までズームが可能で、撮影モードは「写真」と「動画」の2種類のみとなっている。
3秒/5秒/10秒のタイマー撮影や撮影時の位置情報保存などの標準的な機能は備えている。ポートレートなどの撮影モードはサポートされていないが、しっかりと被写体に寄って撮影すれば、背景が少しボケた写真を撮ることができる。
「MIVE ケースマ」のカメラで気になるのは、メインカメラとメインディスプレイに向きのズレがあることだ。
かつての折りたたみケータイでもよく指摘されていたことだが、被写体にカメラを構えた向き(角度)と撮影者がディスプレイ(ファインダー)を見る向き(角度)にズレがあるため、やや操作しにくい面がある。
たとえば、ディスプレイに合わせてカメラを構えると、下向きの撮影になってしまい、被写体にカメラを正対させて構えると、ディスプレイは下向きになるため、ファインダーが確認しくくなってしまうわけだ。
カメラモジュールの大きさなどから、下筐体の背面側に内蔵したのだろうが、ユーザーは少し向きを注意しながら使って、慣れていく必要がある。
撮影した写真や動画はAndroid Go Edition向けに提供されるGoogleの[ギャラリー]アプリに保存される。
[ギャラリー]アプリの[設定]から[Googleフォト]を選び、[Googleフォト]アプリをインストールすれば、撮影した写真や動画をバックアップすることもできる。
[ギャラリー]アプリでの写真の編集は、切り抜きや回転、フィルターなどのシンプルな機能が中心。消しゴムマジックや画像生成など、AIを必要とする機能は搭載されていないが、[Googleフォト]アプリで表示すれば、クラウドでの編集機能を使うことができる。
ケータイの良さを継承したスマートフォン
スレート形ボディのスマートフォン全盛となった今、「MIVE ケースマ」の折りたたみデザインは、ある一定以上の世代のユーザーが懐かしさを感じる一方、若い世代には触れたことがない新鮮なデザインという受け取られ方をしているという。
同様の『折りたたむ端末』としては、「Galaxy Z Flip」シリーズや「motorola razr」シリーズなど、フォルダブルスマートフォンが人気だが、フォルダブルスマートフォンがスレート形のスマートフォンを折り曲げる構造であるのに対し、「MIVE ケースマ」は上下別々の筐体で構成し、テンキーや方向キーといった物理キーで操作するところが大きく異なる(タッチ操作も使うが……)。
フリック入力にすっかり慣れてしまった筆者にとっては、物理キーでの操作、特に文字入力がまどろっこしく感じられたが、折りたたんだときのコンパクトな持ちやすさ、開いたときの通話のしやすさなど、ケータイが持っていたシンプルな使いやすさを再認識させられる面もあった。
「ハイスペック」「フラッグシップ」といった強いワードが飛び交う今日のモバイル業界だが、「MIVE ケースマ」はケータイとしてのシンプルな使いやすさを訴求しながら、スマートフォンとしての可能性も組み合わせた端末に仕上げられている。
かつてのケータイユーザーがスマートフォンに移行する端末としてもいい選択肢と言えるだろう。
冒頭で説明したプラットフォームの違いなどで、やや誤解される面があるかもしれないが、AOSP採用端末とは違った形で、かつてのケータイの良さを継承したベーシックなスマートフォンと言えそうだ。
一部で在庫切れを起こすほどの人気ぶりだが、家電量販店などに実機も展示されているようなので、ぜひ一度、手に取って、「MIVE ケースマ」が持つ「ケータイみたいだけど、スマートフォン」の良さをチェックしてみてほしい。





































