法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Galaxy S24 FE」、フラッグシップに迫る性能を手軽に楽しめる一台
2025年3月11日 00:00
人気の「Galaxy」シリーズでは、最新のフラッグシップ「Galaxy S25」シリーズが2月14日から販売が開始されたが、昨年末の押し迫ったタイミングで、フラッグシップに迫る性能を持つ「Galaxy S24 FE」が発売されている。春商戦へ向けて、手軽にフラッグシップに迫る性能を楽しめる一台として、注目される。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。
買える価格、買えない価格
ここ数年、国内の携帯電話出荷台数は漸減を続けていたが、2月6日にMM総研から発表された「2024年(1~12月)の国内携帯電話端末出荷台数の調査結果」によれば、3年ぶりに増加に転じたという。総出荷台数が増えた要因として、各携帯電話会社の端末購入サポートプログラムなどの販売施策、AI機能搭載の新規端末の好調な売れ行きを挙げている。
ただ、台数こそ増えたものの、明らかに売れ筋は変化しており、ミッドレンジやミッドハイと呼ばれるクラスのモデルが好調な売れ行きを示す一方、フラグシップやハイエンドモデルの売れ行きが明らかに鈍っている。
国内市場で半数近いシェアを確保しているとされるアップルのiPhoneも各携帯電話会社がメインブランドと別ブランド(サブブランド)において、旧モデルを値引いて販売したことがシェアを支えていると言われている。
急速にシェアを伸ばしているGoogleの「Pixel」シリーズも普及価格帯の「Pixel 8a」は好調な売れ行きだったのに対し、昨年夏以降に順次、発売された「Pixel 9」シリーズは、為替レートの関係もあって、高価格な印象が強く残り、販売店の関係者によれば、以前ほどの勢いはないという。
これらのことから推測されるのは、端末市場そのものは徐々に盛り返しつつあるものの、かつてのように、フラッグシップモデルやハイエンドモデルを選ぶのではなく、ある程度、自らの予算で「買える価格」のモデルを堅実に選ぶユーザーが増えている印象だ。
もちろん、各社の端末購入サポートプログラムによって、利用できる期間が限られながらも実質負担額を抑えるという選択肢も一定の支持があるが、1年後や2年後に端末を返却し、改めて端末を買い直さなければならないしくみが本当にお得なのかどうかは判断が分かれるところだろう。
今回、取り上げるサムスンの「Galaxy S24 FE」は、こうした市場の流れに応えられるモデルだ。端末としてのネーミングは昨年のフラッグシップモデル「Galaxy S24」の名を冠しながら、「FE(Fan Edition)」というペットネームを加えたモデルで、Galaxyシリーズを愛用するユーザーが最新のGalaxy AIなどを楽しむための一台という位置付けになる。
同様のモデルは、昨年、「Galaxy S23 FE」として、auで取り扱われ、今年はau向けに加え、Samsung.comオンラインショップでオープン市場版が販売される。
ちなみに、「FE」というペットネームは昨年の「Galaxy S23 FE」のレビュー記事でも説明したように、2016年にバッテリー不具合で「Galaxy Note 7」が発売中止に追い込まれ、その後、問題を解決した製品を待ち望んでいたユーザー(Fan=ファン、愛好者)に向けて、「Galaxy Note FE」として発売したことがはじまりとされる。
サムスンはその後もGalaxyのユーザー体験を楽しみたいファンのために、何度となく、「FE」の名を冠したモデルを投入している。特に、今回の「Galaxy S24 FE」や昨年の「Galaxy S23 FE」は、前述のように、フラッグシップモデルの価格が上昇している中、「Galaxy AI」をはじめ、最新のGalaxyで楽しめるユーザー体験を手頃な価格でできる点が大きなメリットと言える。
価格はSamsung.comオンラインショップが7万9800円。auオンラインショップでは一括購入価格が8万3600円で、スマホトクするプログラム適用時は月額1626円の24回払いで(初回のみ1628円)、2年後に端末を返却すれば、最終回(24回目)の4万6200円の支払いが免除されるため、実質負担額は3万7400円で済む。
スペックに違いがあるため、単純に比較できないが、同じサムスンで言えば、「Galaxy S24」や最新の「Galaxy S25」の半額近い価格で購入できる計算だ。同じ価格帯のライバル機種としては「Xiaomi 14T Pro」「AQUOS sense9」などが挙げられる。
「Galaxy S24」よりもひと回り大きなボディ
外観からチェックしてみよう。「Galaxy S24 FE」は昨年4月発売の「Galaxy S24」シリーズの名が冠されているが、ボディサイズは「Galaxy S24」よりも大きく、「Galaxy S24 Ultra」との中間的なサイズに仕上げられている。
ボディは幅が約77mm、高さが約162mmで、Galaxy S24の幅約70.6mm、高さ147.0mmに比べると、ひと回り大きい。厚さは約8.0mmで、Galaxy S24の7.6mmよりもわずかに厚い程度だ。重量は約213gで、Galaxy S24の約167gに比べると、40g近く増量しているが、ボディサイズがひと回り大きいことを考えると、しかたのないところだろう。背面の仕上げは光沢仕上げなので、指紋や手の跡は残りやすいが、ボディカラーが明るければ、多少は目立たなくなる。
耐環境性能はIPX5/8準拠の防水、IP6X準拠の防塵に対応しており、「Galaxy S24」や最新の「Galaxy S25」などと同等になる。MIL規格などの耐衝撃性能には対応していないが、サムスン純正のもの含め、カバーや保護フィルムが数多く販売されており、これらを利用すれば、安心して利用できるはずだ。ちなみに、パッケージにはケースなどが同梱されていない。
バッテリーは4700mAh大容量バッテリーを内蔵する。従来の「Galaxy S23 FE」に比べ、200mAh分が増量され、今年の「Galaxy S25」と比較しても700mAh分も容量が大きい。実際の利用時間も音楽再生で81時間、動画視聴で28時間と、十分な時間を確保している。
充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子を利用した最大25Wの急速充電に対応するほか、Qi規格準拠の最大15Wワイヤレス充電も利用できる。「Galaxy Buds」シリーズをはじめ、ワイヤレス充電に対応したウェアラブルデバイスや他のスマートフォンに給電できる「ワイヤレスバッテリー共有」にも対応する。パッケージには電源アダプターが同梱されていないため、別途、市販品などを購入する必要がある。
迫力ある映像を楽しめる約6.7インチDynamic AMOLEDディスプレイを搭載
ディスプレイはフルHD+(2340×1080ドット表示)対応の約6.7インチDynamic AMOLED(有機EL)を搭載する。ディスプレイの仕様としてはリフレッシュレートが最大120Hz、ピーク輝度が1900nitsと明るい。ディスプレイと背面のガラスはCornig Gorilla Glass Victus+が採用される。
リフレッシュレートは出荷時に設定されている「最適化」を選んでおけば、再生する内容に合わせて、最大120Hzでスクロールやアニメーションを滑らかに表示でき、省電力性能を重視したいときは、[標準]を選び、リフレッシュレートを60Hzに固定することも可能だ。
ブルーライトをカットする「目の保護モード」も用意され、標準で「最適化」の設定が選べるほか、ユーザーの好みに合わせて、色温度を選べる「カスタム」を設定したり、時間帯に合わせて、自動的にON/OFFする機能も備える。
今回の「Galaxy S24 FE」に搭載されたディスプレイの約6.7インチというサイズは、昨年の「Galaxy S23 FE」の約6.4インチよりもひと回り大きい。標準サイズモデルの「Galaxy S24」と「Galaxy S25」はいずれも約6.2インチで、大画面モデルの「Galaxy S25 Ultra」は約6.9インチとなっており、大画面モデルに迫るサイズのディスプレイを搭載していることになる。
ディスプレイサイズが大きくなれば、視認性に優れることになるが、その半面、ボディサイズも大きくなるため、持ちやすさを重視し、大画面モデルを敬遠する声も少なくない。
ただ、スマートフォンでの動画視聴やSNSの閲覧、ゲームなどが一段と増える傾向であることを鑑みると、約6インチ程度のディスプレイを搭載した「Galaxy S25」などの標準サイズのモデルよりもひと回り大きなディスプレイを搭載したモデルの方がより活用しやすいという考え方もできる。
他メーカーでも同じシリーズながら、新モデルでひと回り大きなディスプレイを搭載し、大きく販売数を伸ばした事例もあり、今後、「標準サイズ」のトレンドが少し変わってくるのかもしれない。
生体認証はディスプレイ内の光学式指紋センサーによる指紋認証、インカメラによる顔認証に対応する。「Galaxy S25」や「Galaxy S24」などは読み取りが高速な超音波式指紋センサーを採用しているが、実用上の差はそれほど大きくない。顔認証はマスク着用時のロック解除に対応していないが、メガネなどはロック解除ができることを確認できた。
生体認証と連動する形で、サムスン独自のパスワードマネージャー「Samsung Pass」が利用できる。Webサイトへのログインをはじめ、アプリ起動時などに求められるユーザー名とパスワードをSamsungアカウントに紐づけておくと、指紋認証のみで安全かつ簡単にログインできるもので、「Samsung Pass」に登録した情報は「Galaxy Tab」など、同じSamsungアカウントを設定した他のデバイスでも利用できる。
ちなみに、2月25日から「Samsung Wallet」のサービスが開始されたことで、「Samsung Pass」は「Samsung Wallet」に格納される形で扱われる。
サムスン製Exynos 2400eを搭載
「Galaxy S24 FE」のチップセットには、サムスン製Exynos 2400eが採用されている。昨年の「Galaxy S23 FE」は2022年のフラッグシップモデル「Galaxy S22」と同じ米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen1が採用されていたが、今回は自社製のチップセットに変更された。
Exynos 2400eのパフォーマンスについては、ネット上に公開されているベンチマークテストの比較などを見ると、2023年のフラッグシップモデル「Galaxy S23」搭載のSnapdragon 8 Gen2と同程度とされており、実利用においても遜色のないパフォーマンスが得られている。
メモリーとストレージは8GB RAMと128GB ROMを搭載し、外部メモリーカードには対応しない。Galaxy AIの活用を考えると、8GB RAMはミニマムという印象だが、「リアルタイム通訳」「チャットアシスト」「文字起こしアシスト」など、ひと通りの機能はサポートされている。
ただ、Galaxy AIの翻訳機能では利用する言語ごとに「言語パック」をインストールする必要があり、日本語と英語以外の言語パックはいずれも一言語あたり約500MBのストレージを消費する。
通常の利用であれば、それほど困ることはなさそうだが、訪日外国人対応などで、何十もの言語パックをインストールするときは、少しストレージが心許なく感じられるかもしれない。昨年の「Galaxy S23 FE」が256GB ROMだったことを考えると、少し気になる点だ。
ネットワークは5G NR/4G LTE/3G W-CDMA/2G GSMに対応し、5Gについては国内各社のSub6バンドに対応し、ミリ波には対応しない。海外メーカー製端末でサポートされないことが多いNTTドコモに割り当てられた5Gの「n79」にも対応しており、NTTドコモ網を利用したMVNO各社のサービスも安心して利用できる。SIMカードはnanoSIM/eSIMのデュアルSIMに対応し、eSIMについてもデュアルeSIM対応となっている。
Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz/6GHz)に対応し、Bluetooth 5.3に対応する。衛星を利用した位置情報の測位機能は、米GPS、欧州Galileo、露GLONASS、中国BeiDouに対応するほか、日本のQZSS(みちびき)にも対応する。他の国内向けGalaxyシリーズ同様、FeliCaも搭載しており、おサイフケータイの各サービスが利用できる。モバイルSuicaの対応機種一覧にもすでに「Galaxy S24 FE」が掲載されている。
プラットフォームはAndroid 14ベースのOne UI 6がインストールされた状態で出荷されている。最新の「Galaxy S25」シリーズではOne UI 7がインストールされ、ユーザーインターフェイスが一新されているが、「Galaxy S24 FE」にも最新バージョンが提供されることを期待したい。
日本語入力はWnnベースの「Samsungキーボード」が搭載される。今や独自の日本語入力ソフトウェアを搭載するメーカーは限られているが、Android標準のGboardに比べ、カスタマイズや学習に優れている。他メーカーでは日本語入力ソフトウェアを「Gboard」に切り替える中、ユーザーの利便性を考慮し、開発が継続されている点は高く評価したい。
暗所撮影にも強いトリプルカメラを搭載
カメラは背面にトリプルカメラ、ディスプレイ上部のパンチホール内にインカメラを搭載する。デザインは「Galaxy S24」などと同様で、円形のカメラリングが縦方向に3つ並ぶ。「Galaxy S25」ではリング部分が太くデザインされたが、本製品は「Galaxy S24」と同じ細めのメタルリングが採用されている。
カメラの仕様としては、背面が最上段から1200万画素イメージセンサー/F2.2の超広角カメラ(13mm相当)、5000万画素イメージセンサー/F1.8広角カメラ(24mm相当)、800万画素イメージセンサー/F2.4望遠カメラ(75mm相当/光学3倍相当)で構成され、前面は1000万画素イメージセンサー/F2.6のインカメラ(26mm相当)を搭載する。基本的な仕様は「Galaxy S23 FE」のカメラ部を継承しているが、画像処理エンジンが「Galaxy S24」などと同じ「ProVisual engine」が搭載され、暗所での撮影が強化されている。
撮影モードは「ポートレート」「写真」「動画」が標準で、「その他」を選ぶと、「プロ」「ナイト」「食事」「スローモーション」「ハイパーラプス」などのモードを選ぶこともできる。「写真」では「フィルター」で色調などを変えられるほか、「フェイス」で顔のパーツごとに補正することもできる。
撮影した写真や動画は、サムスン独自の[ギャラリー]アプリで閲覧することができ、マイクロソフトのクラウドストレージ「OneDrive」と接続して同期できるほか、Googleの[フォト]アプリでバックアップすることも可能だ。[ギャラリー]アプリでは[編集]メニューで[切り抜き]や[フィルター]、「露出」、「コントラスト」などで調整ができるほか、[AI消しゴム]や[フェイスエフェクト]などの機能も利用できる。
また、[ギャラリー]のプレビュー画面下の[AI]ボタン(☆ボタン)をタップすれば、Galaxy AIを利用して、写真内にスケッチでオブジェクトを生成することもできる。最新の「Galaxy S25」シリーズに比べると、[生成AI編集]が利用できないなど、多少の機能的な差異があるが、AIを活かした多彩な編集機能を楽しむことができる。
8万円前後でフラッグシップに次ぐ機能や楽しさを体験できる一台
国内のスマートフォン市場では、フラッグシップやハイエンドモデルを中心に、高価格化が進んでいる。その影響で、ここ数年はミッドレンジのモデルが販売を伸ばしているとされるが、もう少し高性能なスマートフォンを求める声も多い。
こうした声に応えるべく、昨年や一昨年あたりから徐々に増えてきているのがフラッグシップに次ぐ機能を搭載した「準フラッグシップ」に位置付けられるモデルだ。国内での販売価格で言えば、十数万円以上で販売されるフラッグシップに対し、10万円前後や10万円を切る価格を設定しながら、各メーカーの最新の機能を体験することができる。
今回取り上げた「Galaxy S24 FE」もそのひとつで、昨年のフラッグシップモデルである「Galaxy S24」シリーズに搭載されている「Galaxy AI」をサポートしながら、7万9800円(Samson.comオンラインショップ価格)という8万円を切る価格を実現している。
カメラやチップセット、メモリー&ストレージなど、ハードウェア仕様の一部は、フラッグシップよりも抑えられているが、「Galaxy AI」によって実現される「リアルタイム通訳」「チャットアシスト」「文字起こしアシスト」などはサポートされており、上位モデルと比べても遜色のないユーザー体験ができる。
上位モデルとの価格差は昨年の「Galaxy S24」に比べて約4万5000円安、今年の「Galaxy S25」に比べて約6万5000円安となっており、はじめてのユーザーにもかなり買いやすい。auでの購入では端末購入サポートプログラムの「スマホトクするプログラム」が利用でき、2年間利用したときの実質負担額を3万7400円に抑えることも可能だ。
ひとつ残念な点を挙げるとするなら、発売時期が挙げられる。「Galaxy S24 FE」は昨年12月26日にau向けとオープン市場向け(SIMフリー版)の販売が開始されたが、年末年始ということもあり、今ひとつ反響は薄かったように見える。
それに加え、約2週間後にはサムスンの発表イベント「Galaxy Unpacked」が開催され、「Galaxy S25」シリーズがグローバル向けに発表された。同じタイミングで国内向けも発表され、NTTドコモ、au、ソフトバンク、Samsung.comオンラインストアで、「Galaxy S25」「Galaxy S25 Ultra」の予約が開始された。
つまり、「Galaxy S24 FE」は発売から数週間後に上位機種の最新版が登場したことになり、市場での注目度も下がってしまい、商機を逸してしまった感がある。
昨年末の場合、電気通信事業法のガイドライン改正が12月26日に施行されたため、それに合わせる形で発売日が決められたのかもしれないが、グローバル向けの「Galaxy S24 FE」は2024年9月に発売されており、おサイフケータイなどの仕様が異なるとは言え、国内向け「Galaxy S24 FE」が3カ月遅れで発売されたことは、ややもったいなかった印象が残った。
これがサムスンによる判断なのか、auによる判断なのかは今ひとつわからないが、もう少し発売のタイミングを検討すべきだったのかもしれない。
とは言うものの、「Galaxy S24 FE」は端末としての完成度は非常に高く、パフォーマンスも上位モデルに迫るレベルにあり、「Galaxy AI」を体験できる環境も整っており、8万円前後という価格も含め、非常にお買い得感の高いモデルであることは間違いない。春商戦は新入学や新社会人をはじめ、新しいスマートフォンを求めるユーザーが増える時期にあるが、実機を手に取り、フラッグシップモデルに次ぐ機能を体験して欲しい。