法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「AQUOS sense9」、愛嬌のあるデザインに一新した『必要十分』を満たす定番モデル

 シャープのミッドレンジモデルに位置付けられる定番モデル「AQUOS sense」シリーズの最新モデル「AQUOS sense9」が発売された。国内の各携帯電話会社をはじめ、オープン市場向けのSIMフリーモデルとしても販売される。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

シャープ「AQUOS sense9」、149mm(高さ)×73mm(幅)×8.9mm(厚さ)、166g(重さ)、Blue(写真)、Greige、Coral、Green、White、Blackをラインアップ

定番モデルの難しさ

 スマートフォンや携帯電話に限った話ではないが、商品を企画開発する側の視点から見ると、『定番』と呼ばれる商品の扱いは非常に難しいとされる。売れているからこそ、「変えない」ことが良しとされる一方、同じ商品のままでは飽きられてしまったり、消費者に買い換えてもらう動機を生み出せないというリスクも抱える。クルマでも家電製品など、一般消費者に身近なジャンルの商品では、同じようなことが何度も語られ、なかには「変える」ことに失敗し、人気が衰えた商品もいくつか見かけてきた。

 もちろん、スマートフォンや携帯電話などにも同じことが言え、特にスマートフォンの場合、ほとんどのモデルがスレート状(板状)のボディを採用する現状では、実質的にデザインなどで個性を主張できるのは、ほぼ背面とカラーバリエーションに限られている。その背面もカメラとバッテリーなどの主要パーツの効率的なレイアウトを考えると、どうしてもデザイン的な制約が生まれてきてしまう。

 今回発売されたシャープの「AQUOS sense9」は、「必要十分」というキーワードを掲げ、2017年に初代モデルが投入され、進化を続けながら、まさに『定番』と言える存在に成長した「AQUOS sense」シリーズの最新モデルだ。もちろん、プラットフォームをまたぎ、市場全体で見れば、国内ではアップルのiPhoneが半数近いシェアを持つが、シャープがここ数年、Androidスマートフォンでトップシェアを維持し続けている原動力のひとつは、この「AQUOS sense」シリーズにあると言っても過言ではない。

 初代モデルが登場した当初こそ、「必要十分」というコンセプトが「廉価モデル」という誤った受け取られ方をしたが、それぞれの発売年に求められる「必要十分」なスペックを吟味しつつ、防水防塵や耐衝撃性能などの耐環境性能を充実させ、セキュリティパッチの配布やOSアップデートの実施など、長く使うためのサポート体制を充実させることで、幅広いユーザーに支持され、「AQUOS sense」シリーズとしての安定した人気と信頼を勝ち取ってきた。

 ただ、前述のように、スマートフォンのデザインが画一化され、「AQUOS sense」シリーズも新モデルを発表しながら、従来モデルとのデザイン面での差別化が難しくなる傾向もあった。特に、2022年発売の「AQUOS sense7」と2023年発売の「AQUOS sense8」は、外観がほぼ同じデザインで、側面の指紋センサーの位置が違う程度だった。これに加え、ここ数モデルは耐環境性能などを重視した影響もあり、ボディデザインに今ひとつ個性がなく、購入するユーザーとしても新鮮さが感じられなくなってきた印象もあった。

 こうした過去モデルの反省を踏まえ、今回の「AQUOS sense9」では、背面のデザインを一新し、他製品と明確に区別ができる個性的なデザインを採用してきた。

 シャープにとって、「AQUOS sense」シリーズは同社のスマートフォンでもっとも大事なプロダクトのひとつであり、国内市場で『定番』と言える存在でありながら、新しいモデルでも購入するときのワクワクする印象を演出すべく、ある意味、大胆にデザインを変更してきた英断には驚かされた。

 今回の「AQUOS sense9」は、オープン市場向けのSIMフリー版に加え、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル、UQモバイル、J:COMでも販売されるほか、IIJmioやmineoといった主要MVNO各社でも取り扱われる。『定番』に位置付けられるモデルということもあり、ほぼどこでも買える状況となっている。価格はRAM/ROMの違いで2つのSKU(Stock Keeping Unit)が販売されるが、RAM 8GB/ROM 256GBのモデルが6万8000円前後、RAM 6GB/ROM 128GBのモデルが6万円前後で販売される。各携帯電話会社では端末購入サポートプログラムも用意されるため、2年後などの返却を前提に、割安に購入することもできる。

愛嬌のある背面デザインに一新

 まず、ボディから見てみよう。今回の「AQUOS sense9」がもっとも特徴的なのは、やはり、自由曲線で描かれたカメラ部とボディカラーによる背面デザインだろう。本体のデザインはシャープ社内ではなく、外部デザイナーとして、「miyake design」の三宅一成氏が起用されている。四角でも丸でもない自由曲線によって描かれたカメラ部が背面左上にレイアウトされ、斜めに並んだ2つのカメラ(レンズ)がまるで目のように見え、まるで顔のような愛嬌のある背面に仕上げられている。デザインの基本部分は2024年夏に発表された「AQUOS R9」や「AQUOS wish4」と共通だが、もしかすると、先に3機種の統一したデザインコンセプトがあり、もっとも個性を打ち出したかった「AQUOS sense9」が最後に発表されたという流れなのかもしれない。いずれにせよ、他製品にはない新しい『顔』になるデザインと言えそうだ。

自由曲線で描かれたカメラ部で、ガラッと印象が変わった背面デザイン

 デザインは一新されたものの、ボディの構造は基本的に従来から変更されておらず、アルミ製のバスタブ構造を採用し、前面からディスプレイでフタをする構成となっている。ボディカラーは全6色のバリエーションが用意され、いずれもアルマイト染色によって色づけされているため、長期間利用しても本体色が剥がれるようなことはない。カラーバリーションは取り扱う携帯電話会社や販路によって違い、NTTドコモが5色(内2色はオンラインショップのみ)、auが5色、ソフトバンクが3色、楽天モバイルが3色となっている。ボディカラーはカメラ部とボディのカラーの違いにより、3つのカラーコンセプトに基づいており、カメラ部とボディのカラーが違うBlueとGreigeは「Bicolor(バイカラー)」、同系色ながらトーン(色調)が異なるCoralとGreenが「Tone on Tone」、統一されたカラーで仕上げたWhiteとBlackが「Neutral」と、それぞれ名付けられている。

左側面は上部側(写真右側)にSIMカードスロットを備える。カメラ部の突起は実測で約1.5mm
右側面は上部側(写真左側)にシーソー式音量キー、中央に指紋センサーを内蔵した電源ボタンを備える
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える

 これに加え、シャープ純正のシリコンケースも6色構成で販売されており、ボディカラーと合わせて、36通りのバリエーションから選ぶことができる。シャープの「AQUOS sense9」のWebページでは、それぞれのボディカラーとケースによる組み合わせを確認できるコンテンツが用意されているので、購入前に一度、見ておくことをおすすめしたい。

 ボディのサイズは幅73mmで、手にしたときのサイズ感としては、「iPhone 16」や「iPhone 15」などに近い。耐環境性能はIPX6/IPX8の防水、IP6Xの防塵のほかに、MIL-STD-810G準拠の耐衝撃(落下)性能、MIL-STD-810H準拠の15項目を加えた全16項目の試験をクリアしている。落下による耐衝撃性能は普段の利用において安心感が高いが、MIL-STD-810Hに含まれるテストには、耐振動や防湿、高低温動作、低圧動作、氷結などが含まれており、寒暖差の激しい環境で利用するユーザーなどのニーズにも応えられる仕様となっている。ちなみに、アルコール除菌シートやハンドソープでのクリーニングにも対応しており、幅広い環境での利用に対応する。

「AQUOS sense9」(左)と「AQUOS sense8」(右)の前面。本体の高さ(長さ)が約4mm程度、小さくなっている
「AQUOS sense9」(左)と「AQUOS sense8」(右)の背面。従来のセンターカメラデザインから、自由曲線で描かれたカメラ部にデザインが変更された
「AQUOS sense9」(上)と「AQUOS sense8」(下)のディスプレイの下側部分。ディスプレイのサイズは同じだが、「AQUOS sense9」の方が狭額縁に仕上げられている

 バッテリーは5000mAhを搭載し、充電は本体下部のUSB Type-C 外部接続端子を利用し、USB PD3.0による急速充電に対応。残量がない状態から約100分でフル充電が可能となっている。シャープ独自の充電制御機能「インテリジェントチャージ」では、最大充電量を90%に抑えることで、3年後でもバッテリーの容量が90%以上を確保できる。充電器を接続した状態でも画面消灯時のみ、充電し、画面点灯時は直接、端末にダイレクト給電する「画面消灯中のみ充電」も利用できる。

最大充電量を90%に抑え、バッテリーをいたわるインテリジェントチャージ対応。「画面消灯中のみ充電」をオンにすれば、画面表示中はダイレクト給電に切り替わる

 「AQUOS sense」シリーズは元々、バッテリー駆動時間の長さがひとつのセールスポイントとしてきたが、今回の「AQUOS sense9」は連続通話時間が約2700分、連続待受時間が約820時間(RAM 6GB/ROM 128GBモデル)とされており、かなりのロングライフを実現している。今回の試用中も長時間持ち歩いてもバッテリー残量の減りは少なく、長時間の音楽や動画再生でもバッテリー消費はかなり緩やかだった。

 生体認証は本体右側面の電源ボタンに内蔵された指紋センサーによる指紋認証、インカメラによる顔認証に対応する。指紋認証については従来モデル同様で、後述する「Payトリガー」などの機能も利用できる。顔認証もマスクを装着しての利用に対応しているため、両方の生体認証を設定しておけば、PINやパスワードなどを入力しなくても快適に利用できる。ちなみに、従来モデルからの変更点としては、画面ロック解除時のPIN入力時にアニメーションを無効にすることで、プライバシーを強化する機能が追加されている。生体認証があれば、PINを入力することは少ないかもしれないが、細かい部分でもセキュリティに配慮されているのは心強い。

本体右側面の電源ボタンには指紋センサーが内蔵される。少し凹んだ位置に備えられているため、誤操作をすることはあまりない
顔認証はマスク装着での解除にも対応
[画面ロック]の設定には新たに[PINのプライバシーを強化する]が追加された

「AQUOS sense」シリーズ初のPro IGZO OLED搭載

 ディスプレイはフルHD+(1080×2340ドット表示)対応の約6.1インチPro IGZO OLEDを搭載する。従来の「AQUOS sense8」まではIGZO OLEDが採用され、Pro IGZO OLEDは「AQUOS R」などのフラッグシップモデルに搭載されてきたが、今回は「AQUOS sense」シリーズとして、はじめてPro IGZO OLEDが搭載されたことになる。IGZO OLEDはリフレッシュレートが1~120Hzに対応するアイドリングストップにより、なめらかな表示と高い省電力性能を実現しているが、Pro IGZO OLEDでは120Hz表示時に黒画面を挿入することで、網膜残像を軽減し、さらになめらかな表示を実現する。ブルーライトを抑制し、目の負担を軽減する「リラックスビュー」も搭載される。同様のブルーライトカット機能は他製品でも搭載されているが、その多くは画面が黄みがかってしまうのに対し、「AQUOS sense9」の「リラックスビュー」は自然な色合いの表示を保ちつつ、ブルーライトを抑制している。色味が気になるときは、「リラックスビュー」の設定画面内で「黄味の強さ」を調整することができる。

目の疲れを軽減する「リラックスビュー」を有効にしたとき、黄味の強さを設定できるため、自然な色合いで表示できる

 ディスプレイのスペックとしてはピーク輝度2000nit、全白輝度1500nitを実現するほか、発光輝度効率も従来モデルに比べ、40%向上しており、さらに高い省電力性能を実現している。実機で試用した範囲では、画面スクロールやゲームプレイ時のなめらかさが際立っており、タッチ操作のレスポンスとも相まって、フラッグシップモデルと比べても遜色のない快適な利用環境を実現している。

 ゲームや動画再生は基本的にワイヤレスイヤホンなどを利用することが多いが、本体の上下に内蔵されたステレオスピーカーで再生でき、送話口側のスピーカーがBOX構造に変更されたことで、従来モデルに比べ、音圧がグッと増し、全体的にバランス良く、迫力のあるサウンドを楽しめるようになっている。ちなみに、USB Type-C外部接続端子にUSB接続のイヤホンマイクやオーディオ変換アダプタを接続するときは、DAC内蔵型のものが必要になる。

夜景にも強いデュアルカメラを搭載

 カメラについては背面の自由曲線で描かれたカメラ部に標準カメラと広角カメラのデュアルカメラ、ディスプレイ上部のパンチホール内にインカメラを内蔵する。背面カメラは1/1.55インチの5030万画素イメージセンサー/F1.9の標準カメラ(23mm相当)、1/2.5インチの5030万画素イメージセンサー/F2.2の広角カメラ(13mm相当)が搭載される。標準カメラは「AQUOS sense8」と同じイメージセンサーを採用するが、広角カメラはイメージセンサーとレンズが刷新されており、ワイドなシーンでもピクセルビニングによって、夜景などを明るく撮影できるようにしている。

背面には標準カメラと広角カメラのデュアルカメラを搭載。左上が広角カメラで、右下が標準カメラ。おサイフケータイのスイートスポットもカメラ部にレイアウトされている
インカメラは「AQUOS sense8」(下)が半円のノッチに収められていたのに対し、「AQUOS sense9」(上)ではパンチホール内に収められた

 撮影モードとしては[ビデオ][写真][ポートレート][ナイト][マニュアル写真]が標準で用意されており、[その他]を選ぶと、[タイムラプス][スロービデオ][vHDRビデオ]も利用できる。画質エンジンは引き続き、シャープ独自の「ProPix」が搭載されており、一度の撮影で複数の画像を合成するとき、最適な枚数に自動調整をするなど、画質のチューニングが測られている。「AQUOS R」シリーズなどでLeicaと協業した影響もあり、全体的に写真のクオリティが向上していると言えそうだ。ちなみに、オープン市場向けのSIMフリー版については、撮影時に周囲への影響を考慮し、シャッター音を消すことができる。

オープン市場向けのSIMフリー版はカメラの設定メニュー内で、シャッター音をオフにすることが可能

 [写真]モードで被写体に近づくと、[マクロ撮影に切替]と表示され、タップすると、約2.5cmでのマクロ撮影ができる。屋外で花などを撮るときは、そのままでも構わないが、室内で細かいものを撮影するときは、端末で影ができてしまうため、マクロ撮影に切り替えた後、[2]をタップして、倍率を切り替えると、よりクローズアップした写真が撮影しやすくなる。

標準カメラで夜景を撮影。建物や道路などもはっきりと撮影できている
広角カメラを使い、標準カメラと同じ場所から撮影。こちらも全体的に明るく撮影できている
直径2cm程度のコインをマクロ撮影。そのまま撮影すると、端末で影ができてしまうため、マクロ撮影に切り替え後、2倍ズームで撮影

 撮影した写真はGoogleフォトと連携する[フォト]アプリで管理する。編集機能については[フォト]アプリ標準のものを利用するが、Googleの「Pixel」シリーズでおなじみの「編集マジック」が[フォト]アプリで利用できるようになったため、背景に写り込んだものを消去したり、スタイルを適用して、印象的な写真に仕上げるといったことも可能だ。

共通仕様で各社のモバイルネットワークに対応

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 7s Gen2を採用する。従来の「AQUOS sense8」に採用されたSnapdragon 6 Gen1に比べ、ワンクラス上のミドルハイ向けのチップセットで、国内ではシャオミがau向けに供給した「Redmi Note 13 Pro 5G」にも採用されている。パフォーマンスは上位モデルに迫る性能を持ち、動画再生やゲームなどもストレスなく利用できる。

 メモリーとストレージはRAM 8GB/ROM 256GBとRAM 6GB/ROM 128GBのモデルが用意され、各携帯電話会社ではRAM 6GB/ROM 128GB、オープン市場向けやMVNO各社向けはRAM 8GB/ROM 256GBとRAM 6GB/ROM 128GBの両方のモデルが選べるところが多い。最近では上位モデルで対応が減ってきた外部メモリーカードにも対応し、最大1TBまでのmicroSDメモリーカードが利用できる。過去機種からデータを引き継いだり、より多くのデータを持ち歩きたいユーザーのニーズに応えられる仕様だ。

SIMカードスロットは爪先などで引っかけて、引き出すタイプを採用。SIMピンなどが不要
SIMカードスロットには表側にnanoSIMカード、裏側にmicroSDメモリーカードを装着できる

 ネットワークは国内の5G/4Gに対応し、海外では5G NR/4G LTE(TDD/FDD)/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。5GはSub6のみの対応で、ミリ波には対応しないが、NTTドコモ向けに割り当てられたバンド「n79」はいずれの販路で販売されるモデルも対応する。シャープは複数の携帯電話会社や販路に供給する端末のバンド対応を共通化させており、MNPで契約する携帯電話会社を変更したり、デュアルSIMで複数のモバイルネットワークを利用する場合でも同じように使うことができる。SIMカードはnanoSIMカードとeSIMが利用できるデュアルSIM対応で、副回線サービスや他社回線を組み合わせての利用もしやすい。

 Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/acに準拠し、2.4GHzと5GHzで利用できる。テザリングも利用できるが、シャープ独自の機能としては特定の場所に移動したり、離れたときに、自動的にテザリングをオン/オフできる「テザリングオート」が利用できる。パソコンやタブレットなどと組み合わせて、テザリングを利用するユーザーにはおすすめの機能だ。Bluetoothは5.1に対応し、Bluetoothコーデックは米QualcommのaptX/aptX HDにも対応する。衛星を利用した位置情報の測位機能は、米GPS、露GLONASS、中国BeiDou、欧州Galileo、日本QZSS(みちびき)に対応するが、「AQUOS R9」などと違い、デュアルバンド対応ではない。FeliCaにも対応しているため、おサイフケータイの各サービスが利用できるが、マイナンバーカードの「スマホ用電子証明書搭載サービス」については、デジタル庁のマイナポータルサイトの対応機種一覧にまだ掲載されていない。従来の「AQUOS sense8」や2024年夏発売の「AQUOS R9」「AQUOS wish4」などは登録されているため、今後、マイナポータルサイトが更新されれば、「AQUOS sense9」も登録されるはずだ。

最大3回のOSバージョンアップと5年間のセキュリティアップデートに対応

 プラットフォームはAndroid 14がプリインストールされており、従来機種や他のシャープ製スマートフォン同様、最大3回のOSバージョンアップと5年間のセキュリティアップデートに対応する。こうした対応はシャープが早くから取り組んできたもので、最近ではGoogleの「Pixel」シリーズをはじめ、さらに長い期間のサポートを謳う製品も出てきたが、内蔵バッテリーの劣化をはじめ、アップデート後も快適な利用を保てるライフサイクルとしては、やはり、3~4年程度が現実的なところではないだろうか。ちなみに、日本語入力システムについては「Gboard」が搭載されており、「AQUOS sense7」まで搭載されていた「S-Shoin」は提供されない。

ホーム画面は最下段に検索ボックス、その上にDockが表示される。左上の日時の表示は「エモパー」が起動する
ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。今回はSIMフリー版にUQモバイルのSIMカードを挿したため、[myUQ]や[au PAY]のアプリが表示されている
ナビゲーションモードは「ジェスチャーナビゲーション」と「3ボタンナビゲーション」から選ぶことができる
ホームアプリを「AQUOSかんたんホーム」に設定すると、アプリや機能がタイル状に表示される。ジュニア向けの「AQUOSジュニアホーム」も用意される
画面を下方向にスワイプすると、クイック設定パネルが表示される。Androidプラットフォーム標準を採用しているため、わかりやすい

 シャープ製スマートフォンに搭載される数多くの便利機能は、[設定]アプリ内の[AQUOSトリック]にまとめられている。前述の「テザリングオート」も便利だが、日常的な利用シーンでは「Payトリガー」を活用したい。「Payトリガー」は画面ロック解除時、指紋センサーに指先を当てたままにしていると、特定のアプリを起動できるという機能で、各社のコード決済アプリなどを登録しておくと便利だ。複数のアプリを「Payトリガーフォルダ」に登録しておけば、コード決済アプリと各サービスの会員アプリを選んで利用するといった使い方もできる。従来は画面ロックを解除していると、「Payトリガー」が起動できなかったが、「AQUOS sense9」では[ホーム画面でいつでもPayトリガー]をオンにしておくと、ホーム画面が表示された状態で指紋センサーをロングタッチすると、指定したアプリを起動できるようになり、使い勝手が向上している。

[設定]アプリで[AQUOSトリック]を選ぶと、シャープ製端末独自の便利機能が一覧表示される
「Payトリガー」は画面ロック解除時に指紋センサーにロングタッチすると、特定のアプリが起動できる。「AQUOS sense9」からはホーム画面でロングタッチしたときもアプリが起動できる機能が追加された
[ロック・ホームフォトシャッフル]ではロック画面を表示するたびに、壁紙をランダムに表示する。プリセットされた壁紙だけでなく、自分で撮影した写真を選ぶことも可能

 「AQUOS sense9」の[AQUOSトリック]で新たにサポートされた機能としては、[迷惑電話の対策]が注目される。昨今、しつこいセールス電話や犯罪に結び付く詐欺電話などが数多く報じられているが、[迷惑電話の対策]では連絡先に登録されていない相手からの着信に対し、注意喚起と「迷惑ストップボタン」を表示する[ご注意表示]、電話に出る前に自動音声による応答で対応する[電話に出る前確認]が利用できる。[電話に出る前確認]での応答では[お名前確認][迷惑電話対策][特殊詐欺対策]の3つの自動音声モードが用意される。通話についてはすべて録音する[通話録音]が利用できるほか、特殊詐欺などが疑われる不審な会話には、音とバイブで知らせ、メッセージも表示する[不審な会話のお知らせ]という機能も用意される。着信時の対応については、連絡先への登録がひとつの区分になるため、家族やパートナーなどが利用するときは、それぞれの電話番号を連絡先に登録しておくことが重要になる。シニアやシルバー世代のユーザーが利用するうえでは、安心できる機能のひとつと言えそうだ。

[設定]アプリの[迷惑電話の対策]では、[電話に出る前確認]や[ご注意表示]などの機能が設定できる
[迷惑電話の対策]を設定しておくと、連絡先に登録されていない電話番号からの着信時に、注意喚起の画面が表示される
[迷惑電話の対策]の[電話に出る前確認]では連絡先に登録されていない電話番号からの着信に、自動音声で応答する。応答までの時間も設定可能
[迷惑電話の対策]の[電話に出る前確認]では、自動音声のモードが3つ用意されている
通話中に特殊先などが疑われる会話があると、音とバイブで警告する機能も搭載される

愛嬌のあるデザインでワクワクを演出する定番モデル

 スレート状のボディを採用するモデルが大半を占めるようになったスマートフォンは、デザイン的な差別化が難しく、各社共、毎年のように新モデルを発表しながら、ユーザーからは目新しさが感じられず、なかなか購入に結び付かないといったことが起きている。特に、『定番』と呼ばれるモデルはスマートフォンに限らず、デザインなどを大きく変更しにくく、どうしても保守的なデザインを継続してしまう傾向にある。

 国内のAndroidスマートフォンでもっとも安定した人気を保持する「AQUOS sense」シリーズもそうした傾向にあり、「AQUOS sense8」のレビューでは代わり映えのしない内容に対し、「新しさを感じさせる要素が欲しかった」と書いたが、今回の「AQUOS sense9」ではデザインを一新することで、見事に期待に応えてくれた印象だ。miyake designによる愛嬌のある背面デザインについては、「AQUOS R9」のレビューで「AQUOS Rらしくない」と厳しい評価を書いたが、逆に「AQUOS sense9」や「AQUOS wish4」などの幅広いユーザーの利用を期待するモデルでの採用については、一目でそれとわかるデザインであり、非常にマッチする印象だ。もちろん、それぞれのユーザーに好みがあり、「ちょっとかわいすぎる?」といった指摘もあるが、ボディカラーと純正ケースの組み合わせを考えることで、派手にも地味にも演出でき、これまでのモデルとは違ったワクワク感を演出することもできる。パフォーマンスやスペックなどもしっかりと『必要十分』を追求しており、6~7万円前後という価格を考慮しても非常にバランスに優れたミッドレンジからミッドハイにおける『ベストバイ』と言えるモデルに仕上がっていると言えるだろう。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるfit ずっと使えるiPhone 16&15 Plus/Pro/Pro Max対応」「できるfit ずっと使えるGoogle Pixel 8a/8 Pro/8/7a対応」、「できるWindows 11 2025年 改訂4版 Copilot対応」、「できるWindows 11 パーフェクトブック 困った!&便利ワザ大全」、「できるゼロからはじめるパソコン超入門 ウィンドウズ11 対応」、「できるはんこレス入門 PDFと電子署名の基本が身に付く本」、「できるゼロからはじめる Androidスマートフォン超入門 改訂3版」、「できるゼロからはじめるiPhone SE 第3世代 超入門」、「できるZoom ビデオ会議やオンライン授業、ウェビナーが使いこなせる本 最新改訂版」、「できるChromebook 新しいGoogleのパソコンを使いこなす本」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。
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