法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

Google Pixel 6aが目指す、便利に役立つ楽しい「自分だけの一台」

Google「Pixel 6a」。大きさは約152.2mm(高さ)×71.8mm(幅)×8.9mm(厚さ)、重さは約178g。Charcoal(写真のカラー)、Sage、Chalkをラインアップ

 今年5月に開催されたGoogle(グーグル)の開発者イベント「Google I/O」でお披露目されていた「Pixel 6a」が発売された。

 Googleが展開するスマートフォン「Pixel」シリーズの最新機種で、国内では「Googleストア」に加え、auとソフトバンクからも発売され、「povo2.0」や「LINEMO」とのキャンペーンも実施されている。

 筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

「自分のための一台を」求めて

 スマートフォンは、生活にもビジネスにも欠かせないデバイスのひとつだ。先般のKDDIの大規模障害でも、改めてモバイルネットワークが自分たちの社会生活に重要なインフラストラクチャーであるかを再認識させられた。

 コミュニケーションや社会生活に欠かせないデバイスであるからこそ、いざというときの備えやバックアップが重要になるが、その一方で、スマートフォンは単なる持ち物ではなく、自分を表わす一台と捉える人も少なくない。

 さすがに、ロレックスやオメガといった高級腕時計などとは、少し位置付けが違うかもしれないが、自分だけの持ち物だからこそ、こだわって機種を選ぶ人もいれば、ケースなどのアクセサリーで自分らしさを主張する人もいる。

 かつて、国内外のハイエンドモデルやフラッグシップモデルが何機種もラインアップされていたときであれば、「自分のための一台」の選択肢も豊富だったが、今やフラッグシップモデルは10万円台半ば以上が中心になってしまい、おいそれと手を出せる製品がなくなりつつある。各社の端末購入プログラムなど安価に購入できる方法もあるが、価格の高さから躊躇する人も少なくないようだ。

 今回、Googleから発売された「Pixel 6a」は、そんな「自分のための一台」を求めるユーザーにとって、なかなか魅力的な一台と言えそうだ。

 Googleが展開する「Pixel」シリーズは、過去の機種のレビューでも説明してきたように、2015年までサムスンやLGエレクトロニクスなどと共同で開発してきた「Nexus」シリーズと入れ替わる形で、展開されているシリーズで、2016年に「Google Pixel」や「Google Pixel XL」が発表された。

 かつての「Nexus」シリーズがAndroidプラットフォームのリファレンスモデル的な位置付けだったのに対し、「Pixel」シリーズはGoogleが提供するさまざまなサービスを快適に利用できることを念頭に、「Google」ブランドのスマートフォンとして開発されている。

 「Pixel」シリーズは、国内向けに2018年10月発表の「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」から投入され、Googleストアだけでなく、NTTドコモやau、ソフトバンクからも販売された。ただし、機種によって取り扱いの有無が異なり、ここ最近の数モデルはソフトバンクが積極的に採用しているように見受けられる。

 今回の「Pixel 6a」については、Googleストア以外に、auとソフトバンクで販売されているほか、「povo2.0」や「LINEMO」とのキャンペーンも実施されている。NTTドコモが取り扱わないのは、後述するが、「ドコモに割り当てられた5G対応周波数の一部がサポートされていないため」と推察される。

 また、昨年と一昨年の「Pixel」シリーズは、コロナ禍による開発の遅れや5Gネットワークへの移行期だったこともあり、ややネーミングなどがわかりにくい印象だったが、今回からシンプルなネーミングに戻ったようだ。

 「Pixel」シリーズは当初、「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」のように、ディスプレイサイズの違うモデルがラインアップされていたが、これとは別に、機種名の数字の後ろに「a」を付加した普及価格帯向けの「Aシリーズ」や「Aライン」と呼ばれるシリーズが2019年から追加されている。例年、5月頃に開催される開発者イベント「Google I/O」のタイミングなどで発表後、初夏のタイミングで市場に投入されてきた。ただ、2020年には5G対応の有無の違いで、「Pixel 4a」と「Pixel 4a(5G)」が発売されたり、2021年には4G対応モデルがラインアップされないのに「Pixel 5a(5G)」というネーミングで発売されるなど、ユーザー側から見ると、ちょっとラインアップがわかりにくい面があった。

 これに対し、昨年秋から今年への展開では、2021年10月にフラッグシップモデルとして、ディスプレイサイズが異なる「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」が発売され、今回、普及価格帯向けの「Pixel 6a」が発売されることになった。ちなみに、Googleは今年秋にフラッグシップモデルとして、新しいチップセットを採用した「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」を発売することも明らかにしている。

 また、今回の「Pixel 6a」で注目されるのがその価格設定だろう。

 各社のフラッグシップモデルが20万円近い価格になり、iPhoneも円安や半導体価格の上昇などを受け、数万円レベルの値上げを発表されるなど、国内で販売されるスマートフォンは全般的に高くなる傾向にある。8月に入り、円安傾向は少し落ち着きを取り戻しつつあるが、それでも約1年前に「1ドル=110円」前後だった状況から、一気に「1ドル=140円」近くまで円安が進んでしまうと、以前のような価格設定は難しくなってしまう。特に、スマートフォンのように、海外で生産する製品は影響がかなり大きい。

 ところが、今回の「Pixel 6a」はGoogleストアでの価格が5万3900円という、非常にリーズナブルな設定となっている。価格を大きく左右する要素であるチップセットに、Google自ら開発した「Tensor」を採用しているため、2022年の米クアルコム(Qualcomm)製チップセットの最上位に位置付けられる「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載した他社のフラッグシップモデルと互角とは言えないが、それでもフラッグシップモデルに迫る性能を持ちながら、この価格設定は魅力的だ。

 米国での価格が449ドルなので、単純計算で「1ドル=120円」程度であり、為替レートから考えてもリーズナブルであることがわかる。これに加え、Googleストアでの分割払いや、auとソフトバンクでの端末購入プログラムでの残価設定型分割払いも利用できるなど、ユーザーとしてはかなり買いやすい状況が整っている。

 ちなみに、オンラインで購入する場合の一括払い価格は、auオンラインショップが5万3270円、ソフトバンクオンラインショップが6万7680円と、Googleストアとは差があるので、購入時は注意したい。

軽量コンパクトで持ちやすいボディ

 まず、ボディからチェックしてみよう。

 「Pixel」シリーズは当初、背面中央上に指紋センサー、背面左上にカメラモジュールをレイアウトしたデザインを採用していたが、昨年秋に発売された「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」からデザインを一新し、今回の「Pixel 6a」もこの新デザインが踏襲されている。

 背面の上部にカメラを内蔵したバー状(棒状)のパーツをレイアウトし、その上下でツートーンカラーを構成するデザインに仕上げられている。別売のカバーもこのバー上のパーツ部分が開いたデザインだが、カバーの開いている部分の上下には突起(リブ)があるため、机などに置いてもカメラ部そのものが当たることはない。

背面は上部にカメラを内蔵したカメラバーを配置。カメラバーを境に、上下でカラーが少し異なるツートーンデザイン
右側面には上部側に電源ボタン、その下側にシーソー式の音量キーを備える。一般的なAndroidスマートフォンとは配置が上下が逆だが、慣れてしまえば、あまり気にならない
左側面は中央付近にSIMカードスロットを備える。カメラバー横と本体下側のアンテナが内蔵された部分の継ぎ目は、フレームと同系色のパーツで仕上げられている
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。外部接続端子横と本体前面上部のスピーカー(レシーバー)で、ステレオスピーカーとして利用できる
パッケージには1メートルの「USB-C - USB-Cケーブル」(USB 2.0)、クイックスイッチアダプター、クイックスタートガイドなどが同梱される。Androidスマートフォンからのデータ移行は同梱のケーブルでつなぎ、初期設定時にコピー可能。iPhoneからは、クイックスイッチアダプターを挿し、USB Type-A端子にLightningケーブルを接続する。同じように初期設定時にコピーすれば、写真なども移行することができる
別売(3600円)の「Google Pixel 6a ケース」(左)。カラーはCharcoal(写真のカラー)とSeafoamが用意される

 ボディは幅71.8mm、重さ178gと、軽量コンパクトにまとめられており、手にフィットし、持ちやすい。厚さは8.9mmとなっているが、カメラ部の突起も1mm程度なので、あまり厚さを意識せずに持つことができる。

 サイズとしてはiPhone 13とほぼ同じだが、iPhoneの側面が前後面から垂直に立った形状であるのに対し、Pixel 6aは背面の左右両サイドが少し湾曲しているため、より手にフィットして、持ちやすい印象だ。ボディはIPX7の防水、IP6Xの防塵に対応し、背面は指紋が付きにくいコーティング処理が施されている。

 ディスプレイはフルHD+対応の6.1インチOLED(有機EL)ディスプレイを採用する。仕様としては、縦横比が20:9、高輝度モードでのコントラスト比が100万:1、リフレッシュレートは最大60Hzで、「常に表示状態のディスプレイ」(Always On Display)もサポートする。表示は、HDRをサポートしているため、YouTubeなどで公開されているHDR対応コンテンツを楽しむことができる。

 前面のガラスにはCorning製の「Gorilla Glass 3」を採用しており、ディスプレイ内には光学式指紋認証センサーを内蔵する。指紋認証はレスポンスも良好で、快適に使うことができるが、指紋センサー長押しで何かアプリを起動するといった追加機能は用意されていない。

 バッテリーは4410mAhの大容量バッテリーを内蔵する。一般的な利用で24時間以上のバッテリー駆動が可能で、[設定]アプリの[バッテリー]-[バッテリーセーバー]-[スーパーバッテリーセーバー]を有効にすれば、最大72時間までバッテリー駆動時間を延ばすことができる。充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子からの充電のみに対応し、「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」でサポートされているワイヤレス充電には対応しない。ほかのワイヤレス充電対応機器に給電するバッテリーシェアも対応しない。USB Type-C外部接続端子からの充電では、最大18Wの急速充電に対応する。

ほかのPixelシリーズと比較
昨年8月に発売された「Pixel 5a(5G)」(左)に比べ、今回の「Pixel 6a」(右)は、本体とディスプレイの四つの角の形状が少しスクエアに変更された
昨年8月に発売された「Pixel 5a(5G)」(左)と今回の「Pixel 6a」を背面で比較すると、スクエアな形状になったことがわかる。幅と高さは、「Pixel 6a」の方が3mm程度、コンパクトに仕上げられている。仕上げもマットから光沢に変更された
昨年10月に発売された「Pixel 6」(左)と比較すると、「Pixel 6a」はひと回りコンパクト
「Pixel 6」(左)に比べ、「Pixel 6a」(右)は幅で3mm、高さで6.4mmも小さい。カメラバーもカメラの構成が異なるため、少し細めだ

Google独自開発のチップセット「Tensor」を搭載

 今回発売された「Pixel 6a」には、昨年の「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」に引き続き、Googleが独自開発した「Tensor(テンサー)」と呼ばれるチップセットが搭載されている。

 Tensorチップは、Googleがこれまで最先端の機械学習モデルで培ってきた研究をベースに設計されたもので、機械学習に最適化されている。

 具体的な活用例としては、後述するカメラの画像信号処理をはじめ、セキュリティ機能、自動字幕起こし(自動文字起こし)、視聴中の動画のリアルタイム翻訳などが利用できる。

 なかでも筆者とご同業のライター諸氏や記者の間では、自動文字起こしと動画のリアルタイム翻訳の評価が非常に高く、昨今、オンラインで開催されることが多い各社の新製品発表のイベントなどでも幅広く活用されている。業種にもよるだろうが、生活やビジネスシーンで日本語圏以外の人と接することが多いユーザー、会議の議事録などを録音しながらテキスト化したいユーザーは、ぜひ一度、試してみてもらいたい機能だ。

 Tensorチップのパフォーマンスについては、昨年、「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」のレビューでも説明したように、米クアルコム製Snapdragon 888を搭載した昨年のハイエンドモデルと比較して、ほぼ同レベルの結果が得られていた。スマートフォンのパフォーマンスは通信環境やほかのアプリの利用状況なども影響するため、ベンチマークテストの結果に一喜一憂する必要はまったくないが、Tensorチップは基本的にハイエンドモデルに搭載するチップセットと同等か、それに準ずるレベルのパフォーマンスが得られると見ていいだろう。

 実際、筆者は昨年来、「Pixel 6 Pro」を半年近く利用してきたが、パフォーマンスに不足を感じることはなく、快適に利用することができており、今回の「Pixel 6a」も同じように利用できることが期待できる。

 メモリーとストレージについては、6GB RAMと128GB ROMという仕様で、microSDメモリーカードなどの外部メモリーはサポートされない。上位モデルの「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」に比べると、RAMが少ない仕様だが、ライバル機種と同等の容量であり、それほど困ることはないだろう。ストレージも必要に応じて、Googleのクラウドサービスに退避していくように心がけておけば、十分な容量と言えそうだ。

 ネットワークについては5G NR/4G LTE/3G(UMTS/HSPA+/HSDPA)/2G(GSM)に対応する。5Gについては、Sub-6のみの対応だが、国内4社に割り当てられたn77とn78をサポートするほか、auとソフトバンクが使用している「4Gから転用する周波数帯域」もサポートする。

 前述の通り、NTTドコモに割り当てられている5G対応バンドの内、n79がサポートされていないが、グローバル向けに展開されるAndroidスマートフォンの多くでサポートされておらず、対応はNTTドコモ向けに開発されたシャープやソニーなど、一部の端末に限られている。n79に対応していなくてもn78で利用できるうえ、今年4月からNTTドコモも4G対応周波数帯域の5Gへの転用をスタートさせているため、実用上はそれほど大きな問題にはならないだろう。

 SIMカードは、nanoSIMカード(物理カード)とeSIMのデュアルSIMに対応しており、eSIMについてはすでにpovo、LINEMO、IIJmio(データプランゼロ)などが「Pixel 6a」を対応機種リストに加えている。

 SIMカードに関連するところで、少し気になるのがAPNの内容だろう。これは「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」のときから変わらないが、全体的に情報が古く、auやソフトバンクのネットワークを利用したMVNO各社のAPNはほとんど表示されない。その一方で、UQモバイルやLINEMOが自動的に認識される。ネットワーク側の仕様が関係しているのかもしれないが、より幅広いユーザーへの利用を目指すなら、こうした部分も改良していく必要があるだろう。

本体左側面に備えられたSIMカードトレイはピンを挿して、取り出すタイプ。nanoSIMカード1枚のみを装着できる。もう1回線はeSIMで利用できる
出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN、1ページ目。OCN モバイル ONEは新旧コースのAPNが登録されているが、今年6月に発表されたプライベートIPアドレスが割り当てられるAPN(ocn.ne.jp)は登録されていない。バッテリー消費を抑えたいときは、プライベートIPアドレスが割り当てられるAPNへの変更がおすすめだ(編集部注:OCNサポートサイトでは「『グローバルIPアドレス』による接続は、『プライベートIPアドレス』を利用した接続より、電池の消費が多い場合があります」と案内されている)
出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN、2ページ目。spモードなどは登録されているが、新規受け付けが終了されている楽天モバイル(MVNO)などのAPNが残されている
出荷時に設定されてるau網のAPNは、なぜか楽天モバイル(MVNO)の項目しがない。IIJmioやBIGLOBEなど、au網を利用したMVNOも多いのに、残念だ
5G契約をしたauのSIMカードを挿すと、自動的にauの「5G NET」のAPNが選ばれる
UQモバイルで契約したSIMカードを挿すと、自動的に「UQ mobile」のAPNが表示され、設定される。ほかのau網を利用したMVNO各社のAPNは、表示されない
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN。ソフトバンクとワイモバイルのどちらのSIMカードを挿しても、同じAPNが表示され、自動的に接続される。mineoやnuroモバイルなどのソフトバンク網を利用したMVNOのSIMカードを挿しても、表示される項目は変わらない
LINEMOで契約したSIMカードを挿すと、自動的に「LINEMO」のAPNが表示され、設定される。ほかのソフトバンク網を利用したMVNO各社のSIMカードを挿してもAPNは表示されない
楽天モバイルで契約したSIMカードを挿すと、自動的に楽天モバイルのAPNとして、「Internet」の項目が表示され、自動的に表示される

 また、従来に引き続き、FeliCaに対応しており、モバイルSuicaや電子マネー、会員証など、各社が提供するおサイフケータイのサービスを利用できる。

Android 12を搭載、5年間のアップデート

 プラットフォームについては、Android 12が搭載され、米国のGoogleストアでの提供開始から最低5年間のアップデートが保証される。

ホーム画面は、最下部に検索ボックスのウィジェットが表示される構成。Material Youにより、壁紙を設定すると、ほかのパーツの色合いも自動的に変更される
ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。最上段に履歴が表示され、2列目以降にインストールされているアプリが一覧で並ぶ。ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットの順。アプリ一覧画面でフォルダーが作成できないため、アプリが増えたときは、一番上で検索するのがベターだ
通知の機能パネルは、Android 12のデザインで、ボタンが大きく、操作しやすい。左下のペンアイコンで編集をすると、ほかの機能ボタンの追加や削除ができるが、Wi-Fiは項目が用意されていない。左上の[インターネット]のパネルをタップして、表示された画面でWi-FiをON/OFFできる

 ただし、最低5年間、Androidプラットフォームをバージョンアップできるという意味ではなく、ソフトウェアを含むGoogle Pixelのアップデートが最低5年間、提供されることを意味する。

 Pixelのヘルプページによれば、「Pixel 6a」の場合、Androidバージョンアップデートの提供保証期限が2025年7月、セキュリティアップデートの提供保証期限が2027年7月となっている。つまり、Androidプラットフォームについては発売から3年間のバージョンアップが可能で、これに加え、セキュリティアップデートがさらに2年間、サポートされることになる。実際に、どの程度、長く使い続けられるのかは、内蔵バッテリーの劣化なども関係してくるため、「これで万全」とまでは言えないかもしれないが、少なくともソフトウェアについて、5年間のアップデートが受けられることは、ユーザーとしても安心感は大きい。

 Pixel 6aに搭載されているAndroid 12については、基本的にほかのAndroidスマートフォンと変わらないが、「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」に続き、「Material You」と呼ばれるカスタマイズ機能が利用できる。

 Material Youはユーザーが選んだ壁紙に合わせ、メニューなどのユーザーインターフェイス(カラーリング)が設定されるもので、ユーザーに合わせたカスタマイズの一歩になる。もちろん、ユーザーによって、好みがあるため、選ばれたカラーリングが気に入るかどうかはわからないが、意外にデフォルト(出荷時設定)のまま、使うユーザーも少なくないため、こういったアプローチは楽しいだろう。

 また、Pixelシリーズではおなじみの「この曲なに?」も利用できる。街中で流れてきた楽曲がロック画面に表示され、認識した曲名をタップすれば、YouTube Musicなどで楽しんだり、Googleで検索するといった使い方ができる。同様の機能を持つアプリはいくつか存在するが、ロック画面からワンタップで認識できるのは、Pixelシリーズならではの便利さだ。

写真の楽しさを拡げる「消しゴムマジック」と「カモフラージュモード」

 カメラについては、背面のカメラバーに広角カメラと超広角カメラ、ディスプレイの上部のパンチホール内に前面カメラを内蔵する。

広角カメラと超広角カメラ、LEDを収めたカメラバー。必要以上にカメラが主張されていないデザイン。カメラバー上下には縁(リブ)があり、机に置いてもキズが付きにくい。同様の縁は純正のカバーの開口部にも付けられている
インカメラは、ディスプレイの上部中央のパンチホール内に内蔵される。インカメラでは1倍のほかに、1.4倍も選択できる
作例
ポートレートで撮影。ひまわりは色合いを残しながら、背景がボケて、人物が強調される モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション
同じように、ひまわりの花壇を背景に撮ったが、ほぼ同じ距離にある右手前のひまわりも少しボケながら、人物にはしっかりとフォーカスされている
インカメラを使い、自分撮り(セルフィー)
ホテルの窓越しに超広角で撮影。右奥の建物などもあまり歪みがなく、拡がりのある写真に仕上がっている
薄暗いバーで撮影。左上からの照明もあるが、明るく撮影できている。

 背面の広角カメラは12.2MP(メガピクセル)のデュアルピクセルイメージセンサー(ピクセルピッチ1.4μm)にF1.7のレンズを組み合わせ、77度の画角で撮影が可能。超広角カメラは12MPのイメージセンサー(ピクセルピッチ1.25μm)にF2.2のレンズを組み合わせ、114度の画角で撮影が可能。光学式及び電子式の手ぶれ補正もサポートする。カメラのスペックとしては「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」に比べ、やや抑えられているが、実際の撮影については作例を見てもわかるように、ポートレートや暗いところでの撮影も十分な仕上がりとなっている。

 また、「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」でサポートされ、話題となった編集機能も継承され、「消しゴムマジック」も利用できる。

 消しゴムマジックは背景に写り込んだ人物など、余計なものを消去する機能で、この写真の解析と背景の対象物の検出には、TensorチップのAIが活かされている。背景に写り込んでいるものにもよるが、筆者が試した範囲ではかなり自然に消せるという印象だ。「Pixel 6a」のテレビCMなどでも紹介されており、少しずつ認知度が上がりつつあるが、消しゴムマジックをご存知ない人を相手に、消す作業をひと通り見せると、自然な消え具合いに驚かれることもあった。

Googleフォトを起動し、撮影した写真を表示。[編集]-[ツール]の順に選ぶと、写真が解析され、消す候補が自動的に認識される
[すべてを消去]を選ぶと、候補に挙げられた対象物が消去される。ちょっと面白いのが人物の後ろにある「建物の1階付近」が、自然に仕上がっているところ

 消しゴムマジックは背景の人物などを消すことができる機能だが、「Pixel 6a」では消しゴムマジックを応用した「カモフラージュ」という処理が新たに追加されている。

 しくみとしては消しゴムマジックと同じだが、対象物の色調などを変更することで、目立たなくすることができる。もちろん、人物を目立たなくすることもできるが、どちらかと言えば、背景にある看板などが目立つとき、カモフラージュを使って、目立たなくさせるような使い方が適しているようだ。

便利なこと、役立つこと、楽しいことがいっぱいのお買い得な一台

 昨年10月に発売された「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」は、ボディのデザインを一新し、Google独自の「Tensor」チップを搭載するなど、それまでのPixelシリーズから大きな転換を図った。なかでも筆者は「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」が発表された「Pixel Fall Launch」のオープニングで流れたショートムービーが利用シーンをうまく説明できていることが気に入り、「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」のレビュー記事でも触れた。

 今回発売された「Pixel 6a」もこの流れをしっかりと受け継ぎ、日々の生活やビジネスの中で、いかに便利に使えるか、役立つことができるか、楽しめるかといったことに注したスマートフォンに仕上げられている。従来モデルから搭載されてきた「この曲なに?」にはじまり、Tensorチップを活かした「自動字幕起こし」や「リアルタイム翻訳」、撮影した写真を仕上げる「消しゴムマジック」や「カモフラージュ」など、さまざまシーンで「Pixel 6a」ならではの活用ができるはずだ。

 そして、今回の「Pixel 6a」で特筆すべきは、やはり、5万円台という価格設定だろう。冒頭でも触れたように、ここ半年から1年ほどの間に、スマートフォンの価格は、あれよあれよという間に高騰してしまった。なかには各社から最新モデルが発表されても、縁遠い存在に感じられるようになった人がいるかもしれない。

 しかし、「Pixel 6a」は約半年前に発表されたフラッグシップモデルの「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」と同じチップセットを搭載し、変わらない性能をキープしながら、多くの人が手に取りやすい価格を実現している。まさに、「ちょうどいい」を求めるユーザーのためのお買い得な一台と言えるだろう。

 ぜひ一度、実機を手に取り、Googleが描く『新しい世界』の機能を体験して欲しい。