法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」速報レビュー

 スマートフォンで世界トップシェアを持つサムスンは、Galaxy Unpackedをオンラインで開催し、フォルダブルスマートフォンの「Galaxy Z Fold」「Galaxy Z Flip」の新モデルなどを発表した。国内での発売は未発表だが、グローバル版の実機を試すことができたので、内容をチェックしてみよう。

フォルダブルの先駆者として

 「どれも似たようなデザインで……」そんな言葉で語られることが増えてきた最近のスマートフォン。これまでも記事で何度となく触れてきたが、現在、国内外で販売されているスマートフォンは、スレート状(板状)のボディを採用し、デザインや構成など、基本的なフォームファクターはいずれも似通っている。初期のスマートフォンには、キーボード一体型やスライド式など、ユニークな形状の製品もラインアップされたが、時代との流れと共に、現在のフォームファクターにほぼ集約されてきた。デザインについては、「BALMUDA Phone」や「Nothing Phone (1)」のような新しいアプローチも試みられているが、個性的なモデルがいくつも登場したケータイ時代を振り返ると、「つまらなくなった」と言われてしまうのも仕方がないのかもしれない。

 そんなスマートフォン市場において、新しいデザインの方向性として、注目を集めているフォームファクターが「フォルダブルデザイン」(折りたたみデザイン)だ。大画面ディスプレイを搭載しながら、本体を折りたためるようにすることで、コンパクトに持ち歩くことができるというメリットを持つ。折りたたみデザインのスマートフォンは、古くは2013年にNTTドコモが販売したNECカシオ製「MEDIAS W」などに遡ることができるが、現在、市場でもっともフォルダブルデザインのスマートフォンをリードしているのは、サムスンの「Galaxy Z Fold」シリーズと「Galaxy Z Flip」シリーズだろう。

 サムスンのフォルダブルスマートフォン「Galaxy Fold」は、2019年2月にグローバル向けに発表され、同年10月には国内でもauから発売された。曲げられるという有機ELディスプレイの特性を活かし、7.3インチの大画面ディスプレイを搭載しながら、端末を閉じると、一般的なスマートフォンよりもスリムな62.9mmというサイズを実現した。閉じた状態のカバー部分にもディスプレイとカメラが搭載され、コンパクトに持ち歩きながら、書籍などと同じように、横方向に開くと、大画面でアプリやコンテンツを楽しめるという新しいスマートフォンのスタイルを提案し、高い注目を集めている。

 一方、同じく曲げられる有機ELディスプレイの特徴を活かしながら、縦方向に折りたたむことで、かつてのケータイのようなスタイルを実現したのが「Galaxy Z Flip」だ。2020年2月にグローバル向けに発表され、国内ではauから発売された。「Galaxy Z Fold」は開いたときの大画面を活かしたタブレット的な使い方を提案をしていたのに対し、「Galaxy Z Flip」はスレート状のボディを自由な角度に折り曲げられるという新しいスタイルを提案し、若い世代をターゲットに積極的なプロモーションが展開されてきた。

 その後、フォルダブルデザインの両シリーズは世代を重ね、今年は「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」として、発表された。基本的なデザインや構成は、昨年の「Galaxy Z Fold3」「Galaxy Z Flip3」を継承しているが、最新のチップセット搭載やカメラの仕様を変更する一方、ヒンジ部分の構成を見直し、軽量化を実現するなど、全体的に内容が更新されている。

 これらの進化を遂げながら、価格は昨年の「Galaxy Z Fold3」「Galaxy Z Flip3」と同じ「1799ドルから」と「999ドルから」にそれぞれ据え置かれている。今のところ、国内での販売についてはアナウンスされていないが、順当に行けば、これまで両シリーズを扱ってきたauとNTTドコモから発売される可能性が高い。ただし、価格については昨今の円安を鑑みると、昨年と同レベルには収まらないことも十分に考えられる。いずれにせよ、国内向けの正式発表を期待しながら待ちたい。

 ちなみに、今回試用した「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」の実機は、いずれもグローバル版であり、総務省が定める「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」に登録のうえ、試用している。今後、国内版が発表された場合、アプリや各機能などの内容が異なるケースも考えられるため、今回は外観やカメラ、基本的な操作感などを中心に説明する。国内版については、また別の機会に触れるようにしたい。

ヒンジの変更で軽量化を実現した「Galaxy Z Fold4」

 「Galaxy」シリーズのラインアップにおいて、かつては「Galaxy S」シリーズと「Galaxy Note」シリーズがフラッグシップモデルに位置付けられていたが、2つのシリーズは統合され、現在販売中の「Galaxy S22」シリーズがその位置を占める。これに対し、プレミアムラインとも言える位置付けになるのが「Galaxy Z Fold」シリーズになる。

サムスン「Galaxy Z Fold4」(海外版)、開いた状態:約155.1mm(高さ)×130.1mm(幅)×6.3mm(厚さ)、閉じた状態:約155.1mm(高さ)×67.1mm(幅)×14.2~15.8mm(厚さ)、263g(重さ)、Gravygreen(写真)、Phantom Black、Beige、Burgundyをラインアップ
トリプルカメラを搭載した「Galaxy Z Fold4」の背面はマット仕上げ

 今回発表された「Galaxy Z Fold4」は、初代モデルの「Galaxy Fold」から続く、ディスプレイを曲げながら、本体を折りたたむことができるフォルダブルデザインを継承している。この『フォルダブル』(折りたたみ)を実現するうえで、重要なカギを握るのがヒンジ(Hinge)になる。スマートフォンの折りたたみデザインについては、いろいろな実現方法があり、かつての「MEDIAS W」や最近の「Surface Duo 2」などは、2台のスマートフォンをヒンジでつなぎ、折りたたみデザインを実現している。これに対し、「Galaxy Z Fold4」は1枚のディスプレイを曲げながら折りたたむ構造で、折り目部分はディスプレイを湾曲させている。そのため、ノートパソコンのようなヒンジではなく、複数の歯車を組み合わせた独特のヒンジを採用してきたが、構造が複雑で、部品点数が多く、重量も増えてしまうなどの課題を抱えていた。

 そこで、今回の「Galaxy Z Fold4」ではヒンジの設計を見直し、歯車で構成するヒンジから蝶番(蝶つがい)によって、2つの筐体をつなぐ構造に変更し、ヒンジのスリム化と軽量化を実現している。気になる耐久性については、従来と同レベルを確保しているという。筆者は従来モデルを常用していないため、明確な違いを示せないが、端末の開閉動作はスムーズで、扱いやすい印象を得た。

「Galaxy Z Fold4」を閉じた状態の側面は左右の筐体がしっかりと合わさった仕上がり
「Galaxy Z Fold4」のヒンジ部には「SAMSUNG」のロゴがあしらわれている

 厚さと重量の差については、厚さが折りたたみ時で0.2mm、開いた状態で0.1mmのスリム化、重量は8gの軽量化なので、体感できるほどの差がないかもしれないが、構造の見直しは、耐衝撃性やメンテナンス性などにもメリットがあると考えられる。実際に手にしたときの印象としては、折りたたんだ状態が一般的なスマートフォンに比べ、幅がスリムで持ちやすく、閉じた状態で約15mm前後の厚さもそれほど気にならない。開いた状態については、幅が155.1mmとワイドになるが、両手で挟むように持つと、操作もしやすく、重さも気にならない。

「Galaxy Z Fold4」を閉じた状態で手に持ったところ。筆者の手は大きいので、かなりコンパクトに見えるが、実際にスリムなので、手の大きくない人にも持ちやすいサイズ
「Galaxy Z Fold4」を開いた状態で手に持ったところ。片手でも持てるが、実際に使うときは両手で挟み込むように持つと扱いやすい

 本体右側面には音量ボタンと電源ボタンが備えられ、電源ボタンには指紋認証センサーが内蔵されている。本体を閉じた状態でも開いた状態でも側面の電源ボタンをタッチすれば、画面ロックを解除できるほか、Galaxy Passアプリにより、ログインが必要なサイトやアプリの起動などにも生体認証が利用できる。

「Galaxy Z Fold4」を閉じた状態の左側面はSIMカードスロットのみ
「Galaxy Z Fold4」を閉じた状態の右側面はシーソー式の音量キー、電源ボタンを備える
「Galaxy Z Fold4」を閉じた状態の下部。充電やデータ転送に利用するUSB Type-C外部接続端子を備える
「Galaxy Z Fold4」を閉じた状態の側面。電源ボタンには指紋センサーを内蔵されているため、少し凹んでいる
「Galaxy Z Fold4」のSIMカードトレイはピンで取り出すタイプ。表裏にnanoSIMカードを2枚、装着できるほか、eSIMにも対応する

 耐環境性能については、IPX8の防水に対応するが、プールや海での利用は推奨されていない。防塵性能は「Not dust-resistant」(防塵なし)と表記されているので、砂や土の多いところでの利用は十分に留意する必要があるだろう。

7.6インチ大画面ディスプレイと6.2インチカバーディスプレイを搭載

 「Galaxy Z Fold」シリーズの魅力と言えば、やはり、その大画面だろう。本体を開くと、コンパクトなタブレットにも匹敵する7.6インチのDynamic AMOLED(有機EL)ディスプレイを搭載しており、さまざまなコンテンツやアプリを大画面で楽しむことができる。対角サイズは従来モデルと同じだが、解像度は縦横比がわずかに変更され、2176ドット×1812ドット表示が可能。リフレッシュレートは従来モデルの10Hz~120Hzから、1Hz~120Hzに変更され、なめらかな表示を保ちつつ、静止画表示時の消費電力を抑えることができるわけだ。ディスプレイ中央部分の折りたたみ時に湾曲する部分は、わずかに折り目があるものの、実用上は気にならないレベルに仕上げられている。

 本体を閉じたときに操作できるカバーディスプレイは、6.2インチのDynamic AMOLEDディスプレイを搭載する。対角サイズは従来モデルと同じだが、解像度はわずかに高解像度化され、2316×904ドット表示が可能。リフレッシュレートは120Hzで、滑らかな表示ができる。カバーディスプレイは本体を閉じた状態でも操作するためのもので、補助的な位置付けディスプレイと捉えられそうだが、実際に使ってみると、他の一般的なスマートフォンと変わらないサイズであるため、縦長の画面やボディの厚みなどを気にしなければ、普段通りの感覚で使うことができる。

「Galaxy Z Fold4」を閉じた状態。6.2インチのカバーディスプレイにより、一般的なスマートフォンと同じ感覚でも使える

 チップセットは最新のSnapdragon 8 Gen1を採用し、RAM(メモリー)は12GBを搭載する。ROM(ストレージ)は256GB/512GB/1TBがラインアップされる。バッテリーは従来同様、4400mAhで、本体下部のUSB Type-C外部接続端子からの充電に加え、Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応する。Galaxy Buds Proなど、他のワイヤレス充電対応機器を充電するワイヤレスバッテリー共有も利用できる。

「Galaxy Z Fold4」はSペンによる手書き入力にも対応するが、Galaxy Z Fold4に対応した「SペンPro」が必要
Sペン Proにはスイッチが備えられており、「Galaxy Z Fold4」で利用するときはスイッチを「Z Fold」側にスライドする

初のAndroid 12Lを搭載

 「Galaxy Z Fold4」はプラットフォームとして、タブレットやフォルダブルスマートフォンなど、大画面ディスプレイを搭載したモデル向けに開発された「Android 12L」を初搭載する。Android 12Lの詳細については、正式発表時の本誌記事を参照していただきたいが、クイック設定や通知の2列表示ができたり、折りたたんだ状態から本体を開くと、同じアプリが利用できるなどのシームレスな連動性を実現している。アプリ起動中、ホーム画面の最下段に表示される「タスクバー」は、他のアプリをすぐに起動して切り替えたり、他のアプリをドラッグして、マルチウィンドウで表示する操作などが簡単にできる。タスクバーにアプリペアを登録しておくことで、最大3つのアプリを同時に起動することも可能だ。これらの機能の多くは、従来の「Galaxy Z Fold」シリーズでも一部利用できたが、プラットフォームに標準で実装されたことで、より使いやすい環境が整ったことになる。

「Galaxy Z Fold4」を開いた状態のホーム画面。中央にはGalaxyシリーズでおなじみの天気ウィジェットが標準でセットされている。そのほかの使い勝手も既存のGalaxyシリーズを踏襲
「Galaxy Z Fold4」を開いた状態のホーム画面で、上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。表示できる数が多いため、出荷状態では一画面に収まっている
「Galaxy Z Fold4」でもよく使うアプリなどを登録しておくことができる「エッジパネル」が利用できる。端末を閉じた状態のカバーディスプレイのホーム画面でも表示可能
「Galaxy Z Fold4」ではアプリを起動中、タスクバーからアプリ一覧を表示し、他のアプリをすぐに起動したり、分割表示ができる
「Galaxy Z Fold4」で分割表示をしたいときは、アプリの履歴を表示し、対象のアプリのサムネイルをドラッグする。画面は右側にブラウザを表示するところ
「Galaxy Z Fold4」でブラウザを分割表示で右半分に表示。左半分に一覧が表示されるので、分割画面アプリを選択できる
「Galaxy Z Fold4」の分割表示は左右だけでなく、上下で分割することも可能

背面トリプルカメラ、カバーカメラ、フロントカメラを搭載

 カメラについては、従来モデル同様、合計5つのカメラを搭載する一方、背面カメラの強化が図られている。

 まず、背面カメラは上から順に、1200万画素/1.12μm/F2.2の超広角カメラで、画角123度の超広角撮影が可能。次に、5000万画素/1.0μm/F1.8の広角カメラで、画角85度の広角撮影に対応し、ビニング時は1200万画素相当で、ピクセルサイズが2.0μmになる。上から3つめは1000万画素/1.0μm/F2.4の望遠カメラで、3倍の光学ズームでの撮影が可能だ。光学3倍ズームに、AI超解像度ズームを組み合わせた最大30倍のスペースズームでの撮影もできる。

 カバーディスプレイ上部のパンチホール内には、1000万画素/1.22μm/F2.2のカバーカメラが内蔵されており、画角85度で自分撮りなどに利用できる。メインディスプレイの右側中央上には400万画素/2μm/F1.8のフロントカメラが内蔵されているが、パンチホールではなく、アンダーディスプレイカメラになっており、アプリなどの全画面表示でもカメラ部は通常通り、表示される。

 撮影時の機能としては、シングルテイクや写真、ビデオ、パノラマ、ポートレート、夜景などの撮影モードが選べるほか、AIによるシーン自動認識や撮影ガイドなどにも対応しており、あまりカメラに詳しくないユーザーでも手軽に美しい写真や動画を撮ることができる。今回は日中だけでなく、夕景を背景にした撮影なども試してみたが、非常に雰囲気のある美しい仕上がりで、Galaxy S22シリーズなどと比較してもまったく遜色ない印象だった。

カメラの作例
「Galaxy Z Fold4」の広角カメラを使い、夜景をバックにポートレートを撮影。モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション
「Galaxy Z Fold4」の超広角カメラで撮影
「Galaxy Z Fold4」の広角カメラで撮影。超広角カメラと比較しても色合いなどが違うようなことはない
「Galaxy Z Fold4」の望遠カメラで撮影。広角カメラの3倍程度のズーム
「Galaxy Z Fold4」の望遠カメラを使い、30倍まで寄った写真。光学と超解像デジタルズームの組み合わせで、夕方の少しくらい時間帯ながら、十分なレベルで撮影できている
「Galaxy Z Fold4」のカバーカメラを使い、ポートレートで自分撮り
「Galaxy Z Fold4」の広角カメラを使い、ライトアップされた夜景を撮影
「Galaxy Z Fold4」の超広角カメラを使い、夜景を撮影
「Galaxy Z Fold4」の広角カメラを使い、薄暗いバーで撮影。かなり明るく撮影できるため、逆に暗さが感じられないくらい

フレックスモードで新しいスタイルを提案する「Galaxy Z Flip4」

 一般的なスレート状のスマートフォンを縦方向に折りたたむようなボディを採用した「Galaxy Z Flip」シリーズは、かつてのケータイを彷彿させるデザインの端末として、2020年2月に初代モデル「Galaxy Z Flip」が発表され、今回の「Galaxy Z Flip4」はその名の通り、四代目モデルになる。基本的なフォームファクターは変わらないが、内部構造やデザインなどを含め、歴代モデルごとに着実に進化を遂げている。

サムスン「Galaxy Z Flip4」(海外版)、開いた状態:約165.2mm(高さ)×71.9mm(幅)×6.9mm(厚さ)、閉じた状態:約84.9mm(高さ)×71.9mm(幅)×15.9mm(厚さ)、187g(重さ)、Bora Purple(写真)、Graphite、Pink Gold、Blueをラインアップ
「Galaxy Z Flip4」を開いた状態の背面。ヒンジ部分は上下の筐体がぴったり合わさっているため、ほぼフラット。マット仕上げで、サラサラした触り心地

 今回の「Galaxy Z Flip4」は従来モデルをベースに、わずかにボディサイズが小さく仕上げられている。幅71.9mmのボディは、現在、国内でも販売中の「Galaxy S22」などに近い幅で、あまり手の大きくない人にも持ちやすい。縦方向は端末を閉じた状態で84.9mm、端末を開いた状態が165.2mmなので、高さ(長さ)としては開いた状態が「Galaxy S22 Ultra」と同程度になる。従来の「Galaxy Z Flip3」と比較すると、幅は0.3mm、高さは開いた状態で0.8mm、閉じた状態で1.5mmの小型化を実現している。

 厚さについては、上下2つの筐体をつないだ構造ということもあり、折りたたんだ状態では上下筐体を合わせる部分が15.9mm、ヒンジ側が17.1mmとなっている。一般的なスレート状のスマートフォンの厚さが8~9mm前後ということを考えると、6~8mmは厚くなっているが、シャツの胸ポケットに入れてみると、それほど違和感はない。むしろ、折りたたんだ状態はコンパクトなので、ちょっとした財布などを入れているような感覚に近い。

「Galaxy Z Flip4」を開いた状態で手に持ったところ。手が大きいため、かなりコンパクトに見えるが、実際にコンパクトで持ちやすいサイズ
「Galaxy Z Flip4」を閉じた状態で手に持ったところ。カバーディスプレイはタッチパネル対応。折りたたんだ状態で約15mm前後の厚みがあるが、コンパクトで軽く、持ちやすい

 「Galaxy Z Flip4」の折りたたみについては、「Galaxy Z Fold4」同様、フレックスモードにより、さまざまな使い方ができる。端末本体を折りたたんだときの角度を自由に調整できるため、L字型の状態でアウトカメラを撮影したり、複数のアプリを上下に分割して表示することができる。「Galaxy Z Fold4」のフレックスモードはコンテンツ視聴などに便利だが、「Galaxy Z Flip4」のフレックスモードはインカメラを使ったビデオチャットにも適しており、スマートフォンで手軽に配信などを楽しみたいユーザーにも支持されそうだ。

「Galaxy Z Flip4」の開閉を約90度付近で止めた「フレックスモード」では、画面を分割で利用したり、デュアルカメラなどを活用できる

 また、「Galaxy Z Flip」シリーズの持ち方については、最近の若い世代で増えている『斜めがけスタイル』に合わせたアクセサリー類が従来モデルから提案されている。東京・原宿の「Galaxy Harajuku」を訪れると、斜めがけスタイルで端末を提げたスタッフを見かけるが、こうしたスタイルは韓国発のドラマや映画などでも見かけることが多い。これらのコンテンツは若い世代から関心を集めていることから、今後、国内でも拡がりを見せてくるかもしれない。

 縦方向に折りたたむボディの「Galaxy Z Flip4」だが、スムーズに開閉できるものの、上下の筐体がある程度、しっかりと閉じられた構造のため、かつての折りたたみデザインのケータイのように、側面から親指をさし込んで開くような使い方は、ちょっと指の力が必要かもしれない。

 本体の上側の筐体の右側面には、音量ボタンと電源ボタンが備えられ、電源ボタンには指紋認証センサーが内蔵されている。基本的には本体を開いた状態で、画面ロックを解除したり、Galaxy Passでアプリやサイトへのアクセスに生体認証を使いたいときに利用するが、本体を閉じた状態で、後述するカバーディスプレイにウィジェットを追加したり、操作するときの生体認証にも利用できる。レスポンスは画面内指紋センサーなどよりも早く、すぐに画面ロックの解除などができる。

「Galaxy Z Flip4」を開いた状態の左側面は、上部側筐体のSIMカードスロットのみ
「Galaxy Z Flip4」を閉じた状態の左側面。ヒンジ部分にわずかな隙間があり、先端部の方がわずかに薄い
「Galaxy Z Flip4」を開いた状態の右側面は、シーソー式の音量キー、電源ボタンを備える
「Galaxy Z Flip4」を閉じた状態の右側面。電源ボタンには指紋センサーが内蔵されていて、ボタンは少し凹んだ位置にある
「Galaxy Z Flip4」を閉じた状態。下側の筐体には充電やデータ転送に利用するUSB Type-C外部接続端子を備える
「Galaxy Z Flip4」を閉じた状態のヒンジ部分。中央には「SAMSUNG」のロゴがあしらわれている
「Galaxy Z Flip4」を閉じた状態。デュアルカメラとカバーディスプレイを備える
「Galaxy Z Flip4」の上側の筐体にピンで取出すタイプのSIMカードトレイを備える。SIMカードは1枚のみ装着が可能。デュアルSIMを利用したいときはeSIMを追加する

 耐環境性能については「Galaxy Z Fold4」同様、IPX8の防水に対応し、防塵は「Not dust-resistant」(防塵なし)と表記されているので、土や砂などが多い環境での利用は十分、気をつけた方がいいだろう。

6.7インチの大画面ディスプレイに、1.9インチカバーディスプレイを搭載

 折りたたむとコンパクトな「Galaxy Z Flip4」だが、本体にはメインディスプレイとして、フルHD+対応の6.7インチのDynamic AMOLED(有機EL)ディスプレイを搭載する。この対角サイズは現在販売中の「Galaxy S22」よりも大きく、「Galaxy S22 Ultra」の6.8インチに迫るサイズになる。最大120Hzのリフレッシュレートによる滑らかな表示、HDR10+対応など、スペック的にもまったく遜色のない仕様となっている。

 本体の外側のカメラ横には、従来モデル同様、カバーディスプレイとして、1.9インチのSuperAMOLEDディスプレイを搭載する。「Galaxy Z Flip4」のカバーディスプレイは「Galaxy Z Fold4」と違い、通知やウィジェットが表示される『サブディスプレイ』的な役割のものになる。タッチ操作にも対応しているため、タイマーやアラームを設定したり、音楽再生のコントロールしたり、よく使う連絡先などを登録することができる。カレンダーなど、一部のアプリは、カバーディスプレイで確認し、本体を開いて、メインディスプレイで操作するといった連動性も確保されている。

 チップセットは最新のSnapdragon 8 Gen1を採用し、RAM(メモリー)は8GBを搭載する。ROM(ストレージ)は128GB/256GB/512GBがラインアップされる。バッテリーは従来モデルよりも大きい3700mAhで、本体下部のUSB Type-C外部接続端子からの充電に加え、Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応する。Galaxy Buds Proなど、他のワイヤレス充電対応機器を充電するワイヤレスバッテリー共有も利用できる。プラットフォームについてはAndroid 12が搭載される。

「Galaxy Z Flip4」のホーム画面。他のGalaxyシリーズと同じ「ONE UI」を採用
「Galaxy Z Flip4」ではホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される
「Galaxy Z Flip4」のステータスバーを下方向にスワイプして表示される通知パネル
「Galaxy Z Flip4」ではよく使うアプリなどを登録しておくことができる「エッジパネル」が利用可能

背面デュアルカメラ、フロントカメラを搭載

 カメラについては、従来モデルに引き続き、カバーディスプレイ横にデュアルリアカメラ、メインディスプレイ中央上のパンチホール内にセルフィー用カメラを搭載する。

 カバーディスプレイ横のリアカメラは、1200万画素/1.12μm/F2.2の超広角カメラで、画角123度の超広角撮影が可能。ヒンジ側の隣は、1200万画素/1.8μm/F1.8の広角カメラで、デュアルピクセルAFと光学手ぶれ補正に対応し、画角83度の広角撮影ができる。いずれも[カメラ]アプリ起動時、ファインダー右上の[カバー画面プレビュー]アイコンをタップして、オンに切り替えると、カバーディスプレイにプレビューが表示される。ポートレートなどで撮影するときは、被写体側からもプレビューが確認できるほか、超広角カメラ側に切り替えて、ワイドなシーンで自分撮りができるわけだ。

「Galaxy Z Flip4」でカメラ起動時、カバーディスプレイにプレビューを表示でき、被写体側から確認できる

 メインディスプレイ側のフロントカメラは、1000万画素/F1.22μm/F2.4というスペック。「Galaxy Z Fold4」のようなアンダーディスプレイカメラではなく、パンチホール内に収められている。画角は2段階で変更できるため、自分撮りだけでなく、2人程度のグループショット(カップルショット)も撮影できる。

 それぞれのカメラの撮影時の機能については、シングルテイクや写真、ビデオ、パノラマ、ポートレート、夜景などの撮影モードが選べるほか、AIによるシーン自動認識や撮影ガイドなどにも対応する。カメラの詳しい知識がなくても仕上がりのいい写真や動画を撮影できる点は「Galaxy Z Fold4」と同様で、暗いところでの撮影にも強い。

「Galaxy Z Flip4」でカメラを起動し、[その他]を選ぶと、写真や動画、ポートレート以外の各撮影モードが選べる
カメラの作例
「Galaxy Z Flip4」の広角カメラを使い、夜景をバックにポートレートを撮影。モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション
「Galaxy Z Flip4」の広角カメラを使い、ライトアップされた夜景を撮影
「Galaxy Z Flip4」のフロントカメラを使い、ポートレートで撮影
「Galaxy Z Flip4」の広角カメラを使い、薄暗いバーで撮影。ほぼ同じシーンで撮影した「Galaxy Z Fold4」とは明るさが違うが、背景のボケ具合も良く、きれいに撮影できる

進化を続ける新時代のモバイルデバイス「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」

 冒頭でも触れたように、スマートフォンは十数年の進化において、デザインやスタイルが集約されたことで、徐々に個性が失われてしまった感がある。それぞれの機種は魅力的だが、「何か違ったものを使いたい」「新しいスタイルを試したい」といった意見が聞かれるようになってきたことも確かだ。

 今回、サムスンから発表された「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」は、そんなユーザーの期待に応える端末と言えそうだ。ディスプレイを折り曲げ、本体を折りたためるようにしたことで、「コンパクトに持ち歩き、大画面で使う」という相反するニーズを満たしつつ、フレックスモードというフォルダブルならではの機能も提案し、新しいスタイルを追求している。初代の「Galaxy Fold」と「Galaxy Z Flip」からの進化によって、防水などの耐環境性能を向上させる一方、耐久性についても着実に強化され、『ちょっと変わったデザインのスマートフォン』という位置付けから、『普段から使えるフォルダブルスマートフォン』へと着実に完成度を高めてきた。昨年の「Galaxy Z Fold3」「Galaxy Z Flip3」に比べ、ジャンプアップした要素は一見、少なそうに見えるかもしれないが、新しいモバイル体験をしっかりと楽しめる一台に仕上げている。

 気になる国内展開については、具体的なアナウンスがないが、順当に行けば、今年もNTTドコモとauからの発売が期待される。気になる価格は、グローバル版の価格がほぼ据え置かれたことで、昨年並みの価格設定が期待されるが、昨年に比べ、為替レートが大きく円安に触れていることを鑑みると、もう少し価格が高くなることも十分に考えられる。いずれにせよ、国内版の正式発表を待ちたいが、少しでも早く試してみたいときは、東京・原宿のGalaxy Harajukuでひと足早くチェックしてみることをおすすめしたい。