三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

グーグル「Pixel 7 Pro」は、望遠&夜間撮影が本当に楽しい! 3眼カメラを使って撮り歩いてみた

 待ちに待った新型Pixelが登場した。いよいよ発売となるグーグル「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」の2機種は、進化した「コンピュテーショナルフォトグラフィー」の恩恵を存分に味わえる、素晴らしい「カメラスマートフォン」に仕上がっている。

 今回は、3眼カメラ搭載のフラッグシップ機「Pixel 7 Pro」のカメラ機能をひとあし先に試してみた。なお、スペックなどについては本紙既報記事をご覧いただきたい。

 本稿で紹介する作例はすべて、クリックもしくはタップで元のファイルを表示できる。

撮影領域を大幅に拡大した「Pixel 7 Pro」

 「Pixel 7 Pro」が搭載する3眼カメラはこのような仕様になっている。

「Pixel 7 Pro」のカメラの仕様
  • 超広角カメラ:約1200万画素 ピクセル幅1.25μm 画角125.8度 F2.2
  • 広角カメラ:約5000万画素 Octa PD Quad Bayer ピクセル幅1.2μm 画角82度 F1.85 1/1.3インチ大型センサー
  • 望遠カメラ:約4800万画素 Quad Bayer PD ピクセル幅0.7μm 画角20.6度 F3.5 5倍光学ズーム 最大30倍超解像ズーム
「Pixel 7 Pro」は3眼、「Pixel 7」は2眼。カメラバーの処理が異なっている

 前モデル「Pixel 6 Pro」から画角など若干変更されたカメラもあるが、仕上がりが素晴らしかっただけに基本的にはキープコンセプトか。スゴいのは望遠カメラのズームを、光学ズーム4倍→5倍、超解像20倍ズーム→30倍とグーンと広げてきたことだ。これは撮影表現域の拡大を意味する。

 しかもこの画質がスゴいのだ。望遠カメラでのズーム撮影時に広角カメラでの画像を複数加えて取得し、新搭載のチップセット「Tensor G2」のパワーで統合して高画質化しているのだという。まさにコンピュテーショナルフォトグラフィー。

 実際に撮影してみると、たしかに望遠カメラでの超解像30倍ズームは美しい。一度使うと“とりこ”になってしまうほどである。

画角比較
0.5倍
1倍
2倍
5倍
10倍
30倍
カメラ画面
画角ボタンをタップして、画角を切り替えられる。ドラッグにより、シームレスに30倍まで設定することもできる。また、設定から、露出とホワイトバランスコントロールを表示できる
被写体に接近すると、花のアイコンが表示されてマクロモードに切り替わる

 なお、どのカメラからも、出力される画像は12.5メガピクセルで縦横4080×3072ピクセルと変わらない。4つのピクセルを束ねて高画質化を図っているのは「Pixel 6 Pro」と同様である。

 圧巻の描写を誇る「夜景モード(Night Sight)」、動きを表現できる「モーション」、ボケ効果を作り出せる「ポートレートモード」、不要な被写体を消去できる「消しゴムマジック」、肌色の違いを見た目同様に再現する「リアルトーン」に加え、ピンボケを補正する「ボケ補正(Photo Unblur)」も新機能として搭載した。

自然なボケ味が楽しめるポートレートモード。撮影後に絞りやピント位置の変更も可能だ
Pixel Watch(LTEモデル)に迫ってみた。驚くほど被写体に接近できる

 ちなみに、Pixel Watchもいい感じだった。撮影に2万歩オーバーブラブラしても、上の写真にあるとおり、バッテリー残量は6割以上残っていた。Google マップも見られるし重宝した。またPixel Watchから「Pixel 7 Pro」のカメラを起動して、プレビューを見ながらシャッターを切ることも可能である。

「Pixel 7 Pro」でブラブラスナップを楽しむ

 インテリジェントビルを見上げて撮影した。曇天だったが的確なホワイトバランスと、ビル壁面の緻密な描写が心地よい。解像感も高い。

 そして、建物のドアのレリーフをパシャリ。紋章の立体感と金属の質感描写がリアルだ。

 湾内を航行中の観光船を連写で撮った。画面をタップして観光船を捕捉し「Pixel 7 Pro」を構えながらシャッターボタンを押したが、しっかりとピントが合った。操船中のスタッフの様子までよくわかるほど。

 「Pixel 7 Pro」の30倍ズームは、本当にスゴい。水陸両用車が大型船の脇を行く姿をこのように手軽に写せてしまうのだから。やや塗り絵的なところもあるが「撮れる」と「撮れない」の差は大きい。たとえばデジタル一眼カメラを使う人にとって、コンパニオンとして有効なスマートフォンでもあるだろう。

望遠カメラだけでなくマクロモードも優秀なので、さまざまな人にとって役立つ。花壇の花に「Pixel 7 Pro」を向けて接近しただけで、精細感あふれるカットが撮れた。花や趣味の小物撮影はもちろん、ネイルアート、昆虫や生き物の撮影など活躍するシーンは多い
シームレスにマクロ撮影に入れるのが魅力だ。被写体に接近すると自動的にカメラが切り替わってマクロモードになる。「Pixel 7 Pro」だけの機能となっている
桟橋を歩いていると、40cmオーバーの見事なクロダイを釣り上げた人がいた。声をかけて大物をマクロで撮らせてもらったが、ウロコの描写と、口の中までしっかりとキャプチャーできた。クロダイの瞳に、「Pixel 7 Pro」と釣り人が写っているのがお分かりだろうか
店先の窓に下がっているジョーロ。「Pixel 7 Pro」は錆びている先っぽ、そしてステッカーの貼り跡が残る本体部分の様子まで克明に写し止めてくれた

 そして、この端末を使っていると、光学ズームと超解像ズームの境目をさほど意識しなくなる。それくらい、コンピュテーショナルフォトグラフィーによる画質向上がめざましいのだ。係留されている客船の船尾を望遠カメラでたぐり寄せたが、リベット、錆び、塗装の様子が実にいい感じ。

何気ない波止場のカットだが、豊かなトーンと色合いがいい感じ。3つのカメラとも自然で好感が持てる描写になっている
「Pixel 7 Pro」は、何と言っても望遠カメラが楽しい。遠くに停泊中の船も大きく撮ることができる。船の灯りが付いていることから分かるように薄暮のシーンだが、超高解像ズームは見た目と同じような撮影が可能だった

 海沿いを歩いていると、空が見事に焼けてきた。「Pixel 7 Pro」をそれに向けて撮ったカットだが、実に美しいものになった。ヒトの見た目に近い描写+αの仕上がりを提供してくれた。

ビルの谷間に富士の姿を発見。最大にズーミングして「Pixel 7 Pro」のシャッターを切ったが、手ブレもなくクリーンなカットを手にすることができた。山頂の凹凸もよくわかる。これはうれしい
暗くなるまでブラブラしていたら、大きな月が。まさに「Pixel 7 Pro」向きの被写体である。超高解像ズーム+「夜景モード(Night Sight)」でその様子を写し止めた。月表面の様子と色が変わったベイブリッジが美しい

 望遠カメラももちろんだが、超広角カメラも「夜景モード(Night Sight)」で撮ると面白い。建物のパース感と遠景のビルを対比させたが、狙ったとおりダイナミックな感じが出た。

 停泊中の観光船を、モーションモードの「長時間露光」で。水面がスローシャッターで撮ったようにブレているのがわかる。後方の遊具も同様だ。「Pixel 7 Pro」は夜が楽しくなる端末だと言えよう。

モーションモードの「長時間露光」を使えば、横浜みなとみらい地区のロープウェイもこのように表現できる

「Pixel 7 Pro」は望遠と夜間撮影が面白い!

 「Pixel 7 Pro」は、使っていて本当に楽しい端末だと感じた。何よりも写りがいい。超広角から超望遠までスキがないと言っていい。特に望遠カメラの写りが秀逸だ。さすがコンピュテーショナルフォトグラフィーのグーグル! という感じ。

 マクロもあるし、さらに暗所でも定評ある「夜景モード(Night Sight)」で怖いものなしだ。

 カメラの起動も、電源ボタンを2回押せばすぐに撮影態勢に入れるし、大きく明るいスクリーンもフレーミングに有効(エッジディスプレイはやめて「Pixel 7」と同じにしてほしいが)だ。

 「Pixel 7 Pro」は、スマートフォンによる写真撮影をより楽しく深いものにしてくれたという印象を受けた。

 そして下取りなどのキャンペーンもスゴい。まさに大盤振る舞いである。カメラ性能を重視するならば「Pixel 7」ではなく「Pixel 7 Pro」一択だろう。

 「Pixel 7 Pro」は、写真撮影そして画質にこだわる人に、期待を超える性能で応えてくれる端末に仕上がっている。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau