三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

ついに4800万画素に! 「iPhone 14 Pro」のカメラ性能はどう進化した?

 毎年恒例、秋の新型スマホシーズンがやってきた。アップル(Apple)から登場のiPhoneシリーズは「14」となり、今年は「iPhone 14」「iPhone 14 Plus」「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」の4機種がお目見えした。

 今回は3つのカメラを搭載した「iPhone 14 Pro」を手に、そのスチル性能の写りを確かめるためブラブラと撮影を敢行した。スペックなど詳細は本誌既報記事をご覧いただきたい。

 なお、本稿で紹介している作例はすべて、タップかクリックで元の画像を参照できる。

ついに4800万画素を手に入れた「iPhone 14 Pro」

 「iPhone 14 Pro」は、先代機と同様に3つのカメラを搭載している。その3つのカメラは口径と突出量が大きくなり、ちょっと「ギョッ」としてしまうほどの存在感になった。

「iPhone 13 Pro」(左)と比較してもそのデカさは際立つ。デニムパンツのポケットに入れる際、スムーズな出し入れがしにくくなった

 それぞれのカメラはこんな感じになった。

変更点
  • メイン:4800万画素 24mm / F1.78 → 2mm 広角になってF値が少し暗くなり被写体に寄れなくなった
  • 超広角:1200万画素 13mm / F2.2 → センサーを少し大型化しF値がやや暗くなった
  • 望遠:1200万画素 77mm / F2.8 → 変更なし

 搭載カメラは3つだが、カメラ画面では画角ボタンが4つになり、瞬時にカメラ切り替えが可能になった。これにより使い勝手が向上している。描写は「いわゆるスマホ」画質のスタンダードといえるもので、鮮やかでメリハリの効いた描写になっていると感じる。2倍時は、4800万画素になった中央部分をクロップして使う仕様だ。

0.5倍
1倍
2倍
3倍

 注目は、普段最も使うであろうメインカメラだ(今までは「広角カメラ」と呼んでいたが表記が変更された)。

 大型化されたセンサーは4800万画素となり、先行する他のカメラを売りにするAndroid機にようやく追いついた格好だ。「4800万画素」と言っても、通常記録される画素数は1200万画素である。4つの画素をひとつとして扱う「ピクセルビニング」という技術を使い、解像感や感度を向上させている。

 ウリの4800万画素の描写を味わうためには、RAWで撮影しなければならない。画面上のアイコンをタップして「ProRAW」で撮影するのだ。できればHEIFまたはJPEG + RAWの同時記録モードも欲しいところだが、新搭載のチップセット「A16 Bionic」でも難しいのだろうか……? カンタンに高画素で撮影できるがデータ量が大きくなることに注意したい。

 さすがにデータ量が大きいだけあり、細部の写りが鮮明である。手持ち撮影のため厳密な同ポジではないが、その精細感は実感できるだろう。

比較その1(右が4800万画素)

 4800万画素で記録するには「RAW」での撮影が必須となり、シャッターを切ったあとは書き込み時間を要する。テンポ良く撮影したい場合には不向きだ。高解像感が欲しい「ここぞ!」と言うときに使うモードとなっている。

比較その2(右が4800万画素)

ポートレートモード

 ポートレートモードが進化した。ようやく前ボケを表現できるようになったのだ。相変わらず撮影距離の制限が存在するものの、これは評価できる。

 このようにフォーカス位置をずらせば、前ボケを活かした写真が撮影可能だ。後ボケに比べてやや不自然さが残るが、人物や静物撮影でうまく使用すれば印象的なカットを手にすることができるだろう。

ナイトモード

 グーグル(Google)の「Pixel」シリーズなどに大きく差をつけられていた夜間撮影機能も向上してきている。ノーマル撮影のカットと比較するとより明るく、星まで写っていることが確認できた。ただこの機能を手動でオンオフすることができない。「ナイトモードで!」と思ってもノーマル撮影になってしまうケースが多く残念である。

「iPhone 14 Pro」でブラブラスナップを楽しむ

 晴天時の描写は優等生的な写りだと感じる。雲の立体感、草木の精細感、建物の解像感などオーソドックスかつ安定した絵作りになっている。センサー大型化とピクセルビニングの恩恵だろう。

 ハンバーガーの置物を撮った。強烈な反射光が差し込む環境だが、ヒトの目で見るよりやや強調された描写が最近のiPhoneらしい仕上がりだ。コントラストと色合い、シャープネスが効いている。

秋になり日がめっきりと短くなってきた。土手上を走る自転車を望遠カメラで狙う。太陽がフレーム内に入っているので相変わらず盛大なゴーストが発生してしまう。夜間の点光源などにも気をつけたいものである
逆光時の写りは、点光源さえフレーム内に入れなければ良好だ。このカットの場合、ビルの反射や雲などハイライト部をキープしつつ、ビル壁面の描写もしっかりとしている

 竹林を歩く。やや大型化されたセンサーは、その葉の様子から竹の節目まで描きだした。メインカメラが24mmとワイド化されたが使い勝手は悪くない。現代スマートフォンの標準的な画角、といえるだろう。

 望遠カメラを最大までデジタルズームして、境内の大きなちょうちんを狙った。ダイナミックな構図が得られるが、やや苦しい塗り絵的な描写となった。画質を気にするのであれば、デジタルズームは最大の15倍ではなく6倍程度にとどめておきたい。

 ナイトモードは意図的にオンオフできないのが難点だが、描写はいい。ライトアップされた東京都庁舎をメリハリ感高く手ブレもなく撮影できた。ISO 800だがとてもクリーンな描写だと感じる。

 超広角カメラとナイトモードの組み合わせがなかなかいい。久しぶりに海外の街をブラブラと歩いたが、日本と違って薄暗くムーディーなので、ナイトモードが発動して美しいカットを撮影できた。前モデルより描写もやや向上している印象だ(ちなみに海外だとシャッター音がしなくなり、帰国すると再び鳴り響いた)。

 ようやく前ボケを作ることができるようになったiPhoneだが、そのボケ描写は書き割り的で固い雰囲気になってしまう。ただ境界判定性能は向上しており、細い被写体の場合でもうまく切り抜いてくれる確率が高くなっている。

 今回のモデルチェンジで一番気に入ったのが超広角カメラの描写だ。センサーがやや大型化され、F値が少し暗くなっているのだが、実に気持ちいい写りになる。このカットではレンガの立体感、窓の描写、手前に停まっているクルマの写り込みが素晴らしい。ヌケ感も良好だ。

誰でも気軽に美しい写真を撮れる「iPhone 14 Pro」

 「iPhone 14 Pro」でわずかな期間ブラブラと撮り歩いたが、誰が使っても失敗のないキレイな写真を撮れるのは間違いない(毎年恒例だ)。

 大型化されたセンサーによって「4800万画素」を「1200万画素」にピクセルビニングされた画質は、メリハリが効いていて美しい。ポートレートモードではようやく前ボケを表現できるようになったし、超広角カメラの画質もよくなった。

 ただし、「iPhone 13 Pro」からの機種変更では、それほど感動しなかった。もしそれより前の機種からのアップデートであれば(「iPhone 11 Pro」からか……)、きっと興奮したであろう。

 「iPhone 14 Pro」を「写真撮影で失敗したくない」という理由で選ぶのであれば、大いに推奨したい機種と言える。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau