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スマホ電子決済クーポンで7万円を配布、香港の新型コロナウィルス消費振興策第二弾
2021年8月5日 00:00
筆者の居住する香港では、ここ数か月新型コロナウィルスの感染者の抑え込みに成功しています。香港の人口は約750万人。2021年6月1日から7月25日までを見ると、新規感染者数は136名。うち130名は海外からの流入(帰国者など)。香港域内での感染者はわずか6名となっています。香港政府はマスク着用の義務化だけではなく飲食店などの営業制限などを行っていますが、今のところそれらがうまく作用しているようです。
そのかいもあってか、現在は店舗従業員のワクチンの接種状況に応じて、店舗営業の制限は緩やかになりつつあります。しかし飲食に行けるようになったり買い物がしやすくなったとしても、新型コロナウィルスの影響で所得が減った人も多くいます。そこで香港政府は香港居民に消費を喚起するため給付金の支給を決めました。これは2020年に続く第二弾となります。
日本でも2020年に10万円の特別給付金が国民に支給されました。香港では同様に1万香港ドル(約14万2000円)の支給が行われました。これは各個人の銀行口座への現金振り込みでした。
2021年の二回目の支給は5000香港ドル(約7万1000円)。但し今回は現金ではなく、電子決済サービス向けの電子クーポンとして支給されます。5000香港ドルを受領できるのは、以下の電子決済サービス。
・Octopus(物理カードまたはスマートフォンアプリ)
・Tap & Go(スマートフォンアプリ)
・Alipay Hong Kong(スマートフォンアプリ)
・WeChat Pay Hong Kong(スマートフォンアプリ)
OctopusはFeliCa方式を日本より早く、1997年に世界で初めて香港で開始した非接触型決済サービス。ICカードであるOctopusカードは香港居民のほぼ全員が持っているといわれるほど誰もが日常的に使っています。当初は交通機関のみでしたが、今では店舗の買い物でも利用可能です。さらにはスマートフォンアプリとしてiPhoneなどでも利用可能。いわば「香港版Suica」です。
他の3つのサービスは、香港の通信事業者である香港テレコムの子会社(HKT Payment )が展開しているTap & Go。またAlipay Hong KongとWeChat Pay Hong Kongはそれぞれ中国でメジャーな2つのモバイルペイメントの香港向けサービスです。
5000香港ドルの申請は7月2日から行われ、支給は一回ではなく2回または3回の分割となります。これは5000香港ドルを受領しながら使わず預金に回す、といったことを防ぐためでしょう。またOctopus以外のサービスは有効期限が年内。Octopusは最初2回に支給された金額を使い切らないと追加支給がありません。おのずと期間内に全てを消費することになるわけです。
なお電子クーポンで入手した給付金は他の人への譲渡はできません。しかし友人の代わりに買い物をして、その金額を現金でもらう、など現金化の方法はいくらでもあります。またOctopusのみ物理的なカードであるOctopusカードでの受領も可能。8月1日に地下鉄の駅やコンビニのOctopusカードリーダーに申請時に登録したOctopusカードをタッチすると、自動的に入金がされます。この入金されたOctopusカードを他人に売る、なんてこともできないことはりません。まあそこまでやるくらいなら、自分で使ったほうが手っ取り早いでしょうね。
申請期間は2回。7月4日から17日までと、7月18日から8月14日まで。早い時期に申し込みを行ったほうが早くもらえます。またオンラインではなく申込用紙による申請もできますが、その場合は後期申し込み扱いとなります。申請時に必要となるのは香港IDカード番号と携帯電話の番号。香港は国民ID番号制度があるので本人認証は簡単です。
筆者は7月4日に申し込みしようと思ったのですが、当日は申請サイトが混雑しておりなかなか入れませんでした。なおサイトでは「あと何人待ちか」「あと何分か」がリアルタイムで表示されるのですが、7月4日朝は自分の番が来てもサイトに入れずエラー。再度申請しなおすと順番待ちの数が1万、2万と増えていき先が見えないので諦めました。翌日も同じような状況で、申請できたのは結局7月7日でした。
そして給付日時は申請期間とサービスによって異なります。Tap &Go、Alipay Hong Kong、WeChat Pay Hong Kongは、
・1回目HK$2000(約2万8000円):8月1日(申請日が前半期間時)、10月1日(後半時)
・2回目HK$3000(約4万3000円):9月1日(申請日が前半期間時)、11月1日(後半時)
それぞれ支給日になると自分のスマートフォンアプリにそれぞれの金額が入金されるわけです。なお有効期限は2021年12月31日までなので、それまでに使い切らないと無効になります。
一方Octopusを選んだ場合は給付金の有効期限がありません。しかし3回に給付が分かれます。1か目は他のサービスと給付日、金額は同じ。2回目は給付日は同じですが、金額がHK$3000ではなくHK$2000となります。
・1回目HK$2000(約2万8000円):8月1日(申請日が前半期間時)、10月1日(後半時)
・2回目HK$2000(約2万8000円):9月1日(申請日が前半期間時)、11月1日(後半時)
そして3回目の残りのHK$1000(約1万5000)は、1回目と2回目の合計HK$4000を使い終わった時期により下記のようになります(申請日が前半期間時。後半時は給付日がプラス1か月)。
・11月30日までに使い切った場合:2021年12月16日3回目給付
・12月31日までに使い切った場合:2022年1月16日3回目給付
・2022年1月31日までに使い切った場合:2022年2月16日3回目給付
・2022年2月28日までに使い切った場合:2022年3月16日3回目給付
Octopusだけ複雑にしているのは他のサービスと比べて香港人がOctopusカードを誰もが持っており、同じタイミングで給付されるのであればだれもが支給先にOctopusを選んでしまうからでしょうか。香港政府としては公平競争になるよう、Octopusより利用者がまだ多くない他のサービスへの給付をより早く、シンプルにしたと思われます。
さて8月1日に最初の2000香港ドルが入金されたら何を買おう、と誰もがワクワクしているわけですが、7月の申請期間中から各決済サービス会社の戦いは始まっていました。どの決済サービスに給付金を受けるかは申請時に登録するのですが、7月に入ると決済サービスを立ち上げるだけでアプリには「給付金はここに!」といったプロモーションが流れるようになっていたのです。またその決済サービスを給付金の支給先に設定すると受けられるクーポンや割引案内もしつこいくらいに表示されました。
筆者は申請期間中にTap & Goのアプリを立ち上げ残高を見ようとしたのですが、トップページは強制的に政府の電子クーポン申請サイトへの接続がはじまり、通常サービスを使うことができませんでした。申請は直接政府の申し込みサイトへ行かずとも、各決済サービスからも入ることができるようになっていたのです。「俺は今すぐ残高を見たいんだ!」と思っても見ることができません。おそらくこんなことを日本でやったらクレームの嵐になるでしょうね。香港ではそのあたりは「まあ仕方ないか」てな具合でスルーする人が大半です。
申請後はSMSで「申請受付」のメッセージが届き、数日で「申請完了」のメッセージが届きます。そして申請がOKになると、決済サービスのアプリ内には8月1日以前から使えるさまざまな優待が表示されます。たとえば筆者はAlipay Hong Kongを選んだのですが、7月中にコンビニで買い物をしたところ、勝手に5香港ドル(約70円)が割引されました。Alipay Hong Kongを選ぶと申請が通った時点からさまざまな割引を受けることができるというわけです。これは他の決済サービスもやっています。
香港の人口は約750万人ですが、仮にそのうち100万人を獲得できれば、100万×約7万1000円=710億円です。しかもこの消費がわずか数か月で行われるわけです。決済サービス企業にとっては手数料収入だけでもかなりの額になります。また香港内の店舗や飲食店にとっても総額で数千億円が域内で消費されるわけで、大きな内需拡大につながるでしょう。
筆者は何を買うかは決めていませんが、まあスマートフォンでしょうね。ハイエンドな最新モデルがでてきても、約7万円が手元にあるとなればかなり安く買うことができます。ということでこの秋に出てくる新製品を心待ちにしています。