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法人向け料金プランの現況との中小・零細企業層の開拓

 NTTドコモビジネスは、NTTドコモが提供する法人向けの新料金プラン「ドコモBiz データ無制限」「ドコモBiz かけ放題」の取り扱いを開始した。今回は法人向け料金プランの現況と中小・零細企業層の開拓について見ていきたい。

「相対契約」「相対パッケージ」「タリフ」の法人向け料金プラン

 携帯会社はコンシューマ向けにはTV CMなどを使った新料金プラン(タリフ)の積極的な訴求をおこなっている。一方、法人向け料金プランの多くはコンシューマ料金をそのまま法人向けに提供したり、その骨格部分を活かして法人向けにリメイクしたりするケースが多い。

 これは法人向けの独自プランでは、システム開発など採算が合わなかったり、何より法人向けでは回線の導入規模や取引関係、将来的な収益性などを勘案し、企業ごとに個別提案をする『相対契約』が一般的だからだ。

 その点で、法人向けに特化した新料金プラン「ドコモBiz データ無制限」、「ドコモBiz かけ放題」には大きな期待を寄せているのがうかがえる。

表:「ドコモBiz データ無制限」「ドコモBiz かけ放題」
出典:NTTドコモビジネス(https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2025/0910.html)

 顧客である企業の規模と法人料金の関係では、従業員規模が多い取引先企業ほど相対契約する傾向が高く、逆に規模の小さい取引先企業ほど先に述べた『タリフ』や、法人代理店が主に担ぐ『相対パッケージプラン』と呼ばれる、法人向けに特化した割安な料金プランを提供するケースが多い。

 相対パッケージプランは基本的には非公開な法人特化プランで、相対契約との違いは、取引している携帯会社からの決裁を経ずに営業展開できること、そして全法人顧客に対し統一された料金プランを提供できる点にある。

 つまり、相対パッケージプランを取り扱う法人代理店にとっては、他社回線への切り替えを促すことのできる強力な武器となる。

市場拡大の可能性が高い中小・零細企業層の開拓

 モバイル市場の成熟化は法人も同様だが、大手企業はBCP(事業継続計画)を前提としたマルチキャリアの傾向が強く、IoT回線を除けば、普及しきった状態でオセロのように日々シェアが入れ替わっている。一方、収益性という観点からは、極限まで料金を抑えた相対契約中心の大手企業ほど収益性が低く、タリフで提供するケースが多い中小・零細企業ほど高いとされている。

 しかし、携帯会社が最も攻めあぐねているのが、従業員数十名以下の中小・零細企業層で、これまで携帯各社はネットを使ったデジタルマーケティングや法人代理店を活用しチャネル開拓をおこなってきた。こうした取り組みが成功しているかと言えば、評価は難しい。各社ともトライアンドエラーの段階にあるといえる。

 同市場を攻略するためキャリアショップを活用するという方策が簡単に思いつく。しかし、キャリアショップの管理は携帯会社のコンシューマ部門がおこなっており、そこに法人部門の商材を扱うのは、組織間のコンフリクトが発生し、結果スムーズな連携が図られているとは言い難い。

 逆に、そこを上手くマネジメントできれば、開拓余地の大きい中小・零細企業市場の活性化が進むのではと考えるのだが、関係者によれば「言うは易し」といった状況のようだ。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/