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NTTドコモビジネス、AI向けのICTプラットフォームですべての企業でAI活用をサポート

 NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)は30日、同社の2025年度事業戦略発表会を開催した。大企業から中小企業まで日本のさまざまな企業をネットワークでサポートすべく、またNTTドコモグループとなったことで、どのようなソリューションが今後提供できるようになるのかを、同社代表取締役社長社長執行役員CEOの小島克重氏が語った。

AIによる自律、分散、協調の世界へ

小島社長

 同社では、企業のIT環境を支える通信から始まり、クラウド、セキュリティマネージメントとその領域を徐々に広げて行った。ドコモグループになってからは、これにAIが加わり、「産業・地域のプラットフォーマー」に発展したと小島氏は説明する。

 このAI時代にあわせて、AIに最適化されたICTプラットフォームとして同社では「AI-Centric ICTプラットフォーム」を展開し、このプラットフォームを新たなステージへの成長戦略として据える構えだ。

AI-Centric ICTプラットフォーム

 具体的に「AI-Centric ICTプラットフォーム」とは、どのようなものなのだろうか。

 代表取締役副社長副社長執行役員CROの金井俊夫氏は、AIやNaaSなどとクラウド、IoTなどさまざまなサービス、機器、プラットフォームが接続する総合的なプラットフォームといい、今後企業から求められるニーズに対応できる柔軟なネットワークプラットフォームになると説明する。

金井副社長

 金井氏は、今後のAIインフラの見立てを、コンピューティングとネットワークの2点を挙げて説明する。

 コンピューティングについては、「集中から分散に向かう」とコメント。具体的には、企業の基幹部門では自身の拠点に近い場所にコンピューティング装置を設置したいという“オンプレニーズ”が高くなってくる一方、都市部にAIセンターを設置するには課題が大きいと話す。需要が高い都市部では、GPUなどの高排熱化が進む中液冷対応のデータセンターが少なく、また昨今の資材高騰などで新しくデータセンターを都市部に設置する費用も高額になってきている。加えて、電力供給の課題もあると金井氏は話す。

 また、ネットワークについても、自立的に動作するAIが進むとトラフィックの増減が大きくそれに対応したネットワーク帯域設定が難しい。余裕を持って帯域を大きくすると、その分コストがかかってしまう。

 これら、コンピューティング拠点分散への課題を、同プラットフォームでサポートすると金井氏は胸を張る。企業が期待する「分散」のほか「柔軟性」と「安全性」「リーズナブル」の4つのニーズに対応しており、さまざまな企業に対して有用に働くという。

 なお、データセンターの高排熱化に対しては、すでにソリューションを展開している。AIデータサーバーの1ラックあたりの必要電力量は上昇するばかりで、2027年の見込み値として最大600kWにも及ぶという。金井氏は「1000Wのドライヤー600台が同時に動くレベル」とたとえ、このような排熱は従来の空冷では冷却しきれないと説明。同社では、このような高排熱に対応できる液冷方式のデータセンターを横浜と大阪に展開、ラック単位での提供も実施している。

 とはいえ、都市圏でこのような液冷対応のデータセンターを設置するためには、資材高騰などさまざまな問題で難しい。そこで同社では、コンテナ型の液冷対応データセンターを開発。都市部では、小規模なプライベートデータセンターとして、大型のデータセンターを設置するほどの需要がない地方でもAIデータセンターを設置でき、大企業だけでなく地方の中小企業でもAIが利用できるようになる。

 金井氏は、ネットワークだけでなくこのようなさまざまなソリューションを展開していかないと「全国の企業が使えるAIインフラが無くなっていく」とコメント。AIプラットフォームは一種のインフラになりつつあると意義を語った。

 AI-Centric ICTプラットフォームに話を戻すと、このプラットフォームは従量課金で、帯域もWebポータル上で簡単に操作、設定できる。最大10分程度で反映されるといい、帯域の柔軟な変更ができる。これにより、帯域幅の増減があるAIエージェントやフィジカルAIが導入されても、AIが必要なタイミングで必要なだけ帯域を広げ、その分だけ課金されるようになる。

 また、IoT機器の普及でセキュリティリスクの向上も懸念されている。産業機械やIoTデバイスでは、機器側にセキュリティツールが入れられないものも多い。同プラットフォームでは、ウイルスなどが通信した際に、不審な通信を検知しユーザーに通知、ユーザーの操作でその通信をすぐに遮断し、初期対応まで行える。

 通信だけでなく、ネットワーク上には“不振な振る舞い”を検知するAIを搭載しており、重大なインシデントが発生しても、被害が少ない段階でアクションを打てるようになる。

 インシデントが発生した際に、その対策を実施するために企業側は通信ログを調査するが、社内のログだけでは不正アクセスの影響を調査するのに時間がかかるという。同プラットフォームでは、通信事業者側のネットワークでもログを保存しており、双方のログで迅速な調査が行えるようになる。

 金井氏は将来的なサービスとして、AIがプラットフォームのマネージメントを行うサービスを紹介。「これまでの企業向けマネージドサービスでは標準化と言われていたが、AIが入ることで企業ごとの属性などでカスタマイズしていくことになる」(金井氏)とそのイメージを説明。2026年度に提供される。

 金井氏は最後に、同プラットフォームはAIを導入している企業だけでなく、さまざまな企業にメリットがあるものだと説明する。たとえば、小売店などではAIを導入していなくても、防犯カメラや決済端末などネットワークに接続している機器が多いが、セキュリティリスクが高いとコメント。柔軟にサービスの内容を調整できるため、もしAIを導入するとなった場合でも、すぐにネットワークを調整できる“拡張性の高さ”もポイントだと語った。