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KDDIが法人事業の拡大で目指す世界とは、“超デジタル社会”到来に向けて

 スマートフォンやIoT機器など、人々が日々膨大なデータ通信を利用する現代社会。通信は生活に欠かせないものとなり、社会のすべてに通信が溶け込む“超デジタル社会”の到来が迫っていることを感じさせる。

 ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)も進み、KDDIはそうした時流に沿って法人事業の拡大を図っていく。同社取締役 執行役員専務 ソリューション事業本部長 兼 グループ戦略本部長の桑原康明氏が、現況や今後の展望を語った。

桑原氏

法人事業におけるKDDIの強みとは?

 KDDIでは、「顧客が非デジタルをデジタル化し、データを活用すること」をDXと定義。法人事業として、企業や社会における課題解決をサポートしている。

 法人事業におけるKDDIの強みとして、桑原氏が紹介したのは2つ。

 1つめが顧客基盤の大きさで、KDDIは3000万回線のモバイルID、4000万回線のIoT、40万社の法人顧客基盤を有している。同社が“お客さま接点”と呼ぶこのような基盤はデータ入出力のポイントとなり、価値を創出する。

 桑原氏は「我々は、通信ビジネスで培ってきた月額のサービスモデルにDXを加える考え方。コンサルティング会社やSIerさんと比較した場合、戦略策定からサービス提供まで一気通貫でできることも我々の強み」と語った。

 2つめの強みは、グループ企業を含めた対応力だ。たとえばソラコムはIoT関連のソリューション提供を担う。また、デジタルBPOの領域で、新会社のアルティウスリンクが9月1日に発足。そのほかの関連会社も含め、データ収集やマーケティングなど、幅広い領域をカバーする。

3つのフェーズで事業拡大へ

 KDDIの法人事業は、大きく「コア事業」と「NEXTコア事業」に分けられる。前者には固定通信やモバイル、5Gが含まれており、後者ではコーポレートDXやビジネスDXなどを通じて新たな価値を提供していく。

 桑原氏によれば、売上の割合はコア事業が約6割、NEXTコア事業が約4割。事業全体で見ても増収増益を続けており、好調さがアピールされた。

 今後は3つのフェーズで事業拡大が図られる。

 フェーズ1は「非デジタルをデジタル化」。現在、多くの会社で紙の情報をデジタル化するような取り組みが進められているが、KDDIでは音声データなど、デジタル化が遅れているような分野にも注力する。

 サービスにIoTを組み込み、“つながり続ける”状態をつくる「+IoT(IoTデータの活用)」がフェーズ2。ソラコムも含めて4000万回線が世界7カ国で稼働しており、6月には独BMWとも契約を結んだ。コネクテッドカー領域の連携拡大も図られる。

 最後のフェーズ3に位置づけられるのは「データ×データ(企業間のデータ融合)」。1社のデータでは不足している部分を他社のデータで補完することによって、新規ビジネスの創出などにつなげる。

デジタルツインを見据え、フライウィールと提携

 KDDIはJR東日本と共同で“新たな街”「TAKANAWA GATEWAY CITY」の構想を発表していたが、この街では、リアルなものをすべてデジタルにするデジタルツインの取り組みも進められる。

 「デジタルツインは非常に難しく、労力もかかる」と桑原氏。そこでKDDIでは、4月にフライウィールと資本業務提携を締結。同社は78人の正社員のうち19人がGAFA出身というスタートアップで、データ活用プラットフォーム「Conata(コナタ)」を手掛ける。

フライウィール 代表取締役社長の横山直人氏

 桑原氏は「デジタルツインはこれから。ID統合のソリューションなども構想にある」とコメントし、今後への期待感をのぞかせた。

新発表と、今後の展望

 本日5日から、KDDIがマイクロソフトの生成AIサービス「Azure OpenAI Service」を法人向けに提供することも発表された。KDDIではAIチャットサービス「KDDI AI-Chat」を導入しており、生成AIの活用も図っていく。

 また、カーボンニュートラルを支援するソリューションとして「KDDI Green Digital Solution」を10月31日から提供する。

 2024年春には「次世代プラットフォーム」の発表も予定しているKDDI。桑原氏は「7000億円の成長戦略投資のうち、法人事業で約2000億円の投資を実施した」と語り、DX加速に向けて投資を続けていくとした。