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法人向けスマホに転換した京セラ、パートナーと連携深め産業の課題解決に注力

 スマートフォンなど通信端末分野で個人向けラインアップを終息し、法人向けに舵を切った京セラは、法人向け事業への転換は順調に進んでいるとの見解を示し、強化していく考えを明らかにした。パートナー企業との連携も進める。

法人向けへの転換は順調

 通信機器事業本部 本部長を務める鈴木克彦 執行役員は法人向けビジネスへの転換で事業体というハード面の変革以上に「お客様の事業成長にどう貢献するか、我々自身のマインドセットの変革が重要」と実感を述べた。

 京セラの通信事業における、2023年3月期の個人向けに対する法人向け売上比率は58%だったが、1年後の2024年3月期には63%に増加。さらに75%にまで比率が拡大しており、京セラ 通信機器事業本部 通信事業戦略部の與那嶺徳弘部長は「来期中にはさらに法人比率を高める計画」とした。

 「TORQUE G06」と「DuraForce EX」の高評価もあり、高耐久端末は累計1300万台の出荷を記録。端末のみならずソリューションと組み合わせた展開を描いており、決済端末などの専用機器をスマートフォンへの移行を促進する。與那嶺氏は「パートナーは順次拡大しており、ソリューションと端末を組み合わせて、ユーザー企業の課題解決に共に取り組みたい」とした。

 説明にあわせて発表された新端末「DIGNO SX4」は、落下によるバッテリー損傷事故を防ぐために新構造を採用。さらに医療現場でマイナ保険証の読み取りがしやすいようNFCチップの位置を工夫した。タブレット端末の「DIGNO Tab2 5G」は、クレジットカードやマイナ保険証のリーダーを統合できるとしており、前面にNFCリーダーを備えることで使いやすさを向上させている。

 今後、デジタル導入の障壁を下げる法人向けサービスを開始するとしており、そのうちのひとつが、端末の故障に備えた「補償サービス Flex」。7月から始める。落下や水没にも対応しており、交換用の端末の宅配もあり端末導入後でも申し込めるという。

説明の場に登壇した與那嶺徳弘氏、鈴木克彦氏、水田聡氏、原田正夫氏

医療分野へのソリューション提供を強化

 物流や建設、小売など幅広い業界で需要のある京セラ製品だが、同社では今後、特に医療業界へ注力する。医療業界は人手不足や後期高齢者増加、経営問題など多くの課題を抱えているという。京セラでは同社のデバイスとソリューションをかけ合わせて、医療従事者が抱える課題を解決することを目指す。

 同社が医療業界に向けて開発しているソリューションには「食事管理システム」や「薬剤認識システム」などがある。入院患者が食べた食事量・栄養管理をスマホカメラで撮影することで正確に記録する。また、入院患者の持参薬の種類も同じくスマホカメラで映すだけでなんの薬かを判定できる。いずれも現状では人の判断に頼る部分が大きく、医療従事者の負担軽減につなげる。

スマホカメラで薬の種類・食事をどれだけ食べたかを判定

 このほかにも、ミリ波を用いて入院患者がベッドから起き上がったことや転倒したことなどを通知するセンシングの仕組みやリハビリ中の患者の体の揺れ・足の動きを解析し、運動機能の変化を可視化する仕組みなども用意する。

ベッドに腰かけたなども判定する

 また、字幕表示システムの「Cotopat Screen」はすでに福岡県警や京都府京都市の区役所など14カ所に導入済み。双方の言葉を翻訳でき、運転免許試験場での外国人とのコミュニケーションなどに役立てられる。

市役所などで導入済み。今後、民間に向けてもアピールする。
話した内容にあわせてマイナカードの写真や観光地(清水寺)の写真が出現。タブレット表示で利用できる「Cotopat Mobile」も

 同社では独自のAIや通信技術を活用し、社会課題解決に向けた取組みを進める方針を示している。