石川温の「スマホ業界 Watch」

告げられた「KDDIのローミング終了」、エリアマップの落とし穴と楽天モバイルの課題

 「現行のローミング契約は2026年9月末で終了する」

 7日、KDDIは2027年3月期第1四半期決算会見を開催した。その中で松田浩路社長が、楽天モバイルへのローミング契約について、ハッキリと「2026年9月末で終了」と宣言した。

ローミングを終了するのは「都市部」、地方では継続

 これまで、決算会見の質疑応答で何度も楽天モバイルへのローミング契約について、質問が飛んでいた。その際、松田社長は「当初の役割は終わった」としながらも、9月末に契約を完了させるのか、それとも契約更新するのかの言及は避けていた。しかし、9月末まで2カ月を切ったこともあり、終了を宣言した。

KDDIの松田浩路社長

 実はこの日の午前中、楽天グループのイベント「Rakuten AI Optimism」において、楽天モバイルの矢澤俊介社長が登壇するイベントがあった。KDDIとのローミング契約について、聞かれた矢澤社長はKDDIへの感謝を述べつつ「KDDIには理解をしてもらっている」と良好な関係をアピールしていた。また、万が一、ローミング契約が打ち切られたとしても、ユーザーに迷惑をかけないネットワーク品質を維持できるとしていた。

 実際のところ、KDDIと楽天モバイルのローミング契約は完全に終了するというわけではない。松田社長は「ルーラルエリアについては、限定した場所で期間も限定することで、今後も協力していく」としている。ルーラルとは田舎、郊外を意味する。

首都圏でも多いKDDIローミングエリア

 楽天モバイルのエリアマップを見てみると、「楽天回線4G LTEエリア」と「パートナー回線エリア」を確認することができる。関東でいえば、東京都の檜原村や奥多摩町付近、千葉であれば南房総の山間部が薄いピンク、すなわちKDDIが提供しているパートナー回線エリアとなっている。つまり、10月以降も、この薄いピンク部分は引き続き、ローミングとして利用可能になる予定だ。

楽天グループの三木谷浩史会長

 そう考えると、ローミング契約が終了しても、楽天モバイルユーザーへの影響は軽微に感じる。しかし、今度はKDDIが提供する楽天モバイルへのローミングマップを見てほしい。これによれば、都内であれば、23区以外の市町村、ほとんどの場所でKDDIによるローミングエリアが存在する。

KDDIの楽天モバイル向けローミングサービス提供エリアマップより
楽天モバイルのサービスエリアマップより

 神奈川県、埼玉県、千葉県など、住宅地も結構な範囲でKDDIのローミングエリアなのだ。松田社長は「以前から懸念していたが、想定外のエリアからトラフィックが発生している。今回、契約が終了することで、そうした状況を解消できる。我々のユーザーのために品質を維持、向上するためにリソースを割り当てる経営判断に踏み切った」としている。

 この6月、SNS上で、楽天モバイルユーザーのネットワーク品質に対する不満の声が一気に増えたことがあった。調べてみると6月に入った段階で、住宅地など、トラフィックが多く発生している場所で、ローミングが打ち切られていたのだった。KDDI関係者は「6月はほんの一部の場所に過ぎない」というが、楽天モバイルユーザーは敏感にネットワーク品質の低下を実感していた。

 もし、10月以降、住宅地や繁華街などのローミングが終了するとなると、その影響は計り知れない。

すでに乗り換えの動きも? 10月以降の動向に注目

 楽天モバイルではアメリカのスタートアップであるASTとタッグを組み、「Rakuten最強衛星サービス」を年内にも開始予定だ。テニスコートほどの巨大なアンテナを搭載した衛星を50基ほど打ち上げ、日本全国をカバーしていく。

 KDDI、ソフトバンク、NTTドコモがStarlink Directによって、スマホと衛星の直接通信を実現しているが、一部のアプリでのデータ通信のみ対応という制限がある。

 一方、Rakuten最強衛星サービスでは音声通話やテキストメッセージ、データ通信だけでなく、動画視聴などの高速インターネットを提供できるとしている。もちろん、日本全国、面積カバー率は100%を標榜する。

 Rakuten最強衛星サービスが提供されれば、KDDIが提供するルーラルでのローミングに頼らなくても良くなる可能性がある。ただ、飛行する衛星が50基となると、日本の上空を飛んでいる時間が短くなるため、24時間、絶えず利用できるとは限らない。やはり、将来的にもKDDIのローミングに頼りつつ、自前で基地局を整備していく必要があるだろう。

 ちなみに、KDDIのpovoが、楽天モバイルを意識したトッピングを6月に始めたところ、他社からの乗り換えが4.4倍に増えたという。すでに街中のキャリアショップでは楽天モバイルユーザーに対してローミング終了をアピールし、乗り換えを狙ったポスターなども目立ち始めた。

 10月以降、ユーザーの大移動は起こるのか。ローミング終了を契機に、スマホ業界全体での顧客獲得合戦が始まるかもしれない。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。