石川温の「スマホ業界 Watch」

米国外初の直営店「Google Store 表参道」がオープン、増やしてほしい「体験」と「連携」

 グーグルは直営店「Google Store 表参道」を8月13日にオープンさせた。場所は東京都渋谷区にある東急プラザ表参道「オモカド」内だ。

悲願の日本出店が形になった

 グーグルにとって日本は思い入れのある市場のようだ。いまから25年前、グーグルが初めて海外にオフィスを構えたのは東京・渋谷だった。今回のGoogle Storeもアメリカには10店舗あるが、海外ではこの表参道が初出店となる。

 グーグルのアジア太平洋 日本地区 マーケティング ヴァイス プレジデントである岩村水樹氏は「日本ではPixel 3からローンチしているが、その当時から、Pixelの良さをユーザーに知ってもらえる場所が必要だろうと日本とグローバルチームで議論を重ねてきた。その間、ポップアップショップなどを経て、フィードバックをもらい、ようやくこのような体験型の店舗を実現できた」と振り返った。

 Google Store表参道は1階にPixelのスマートフォンやイヤホン、Watchなどの新製品が並ぶ。地下は修理受付やサポートなどを行い、2階は最新のGeminiを体験できる場所となっている。

 メーカーが直営店を出店することで、ユーザーは製品をじっくりと触ってもらい、わからないところはスタッフに尋ねることで、納得した上で購入できる。本体だけでなく、カバーなど周辺機器も、その場で揃う。万が一、故障したときはすぐに対応、修理してもらえる。

 ユーザーから上がってきた不満の声などは、スタッフが集めて、製品開発部門にフィードバックすることで、次の新製品のヒントになることもある。メーカーにとってリアル店舗を出すメリットは計り知れない。

既存のPixelユーザーにも、これからのユーザーにもメリット

 ここ最近、グーグル・Pixelは日本市場で存在感を増している。特に2023年5月に「Pixel 7a」が発売され、4年半ぶりにNTTドコモでの取り扱いが復活したことが大きい。それまではソフトバンクとKDDIのみの取り扱いであったが、NTTドコモが復活したことで、3キャリア間の販売競争が過熱した。

Pixel 7a

 結果、かなりの販促費が投入されたことで、他メーカーのユーザー獲得に成功した。折しも、当時は一部のキャリアがショップへの支援を絞るということが行われていた。キャリアショップを運営する販売代理店が路頭に迷う中、救世主となったのがグーグルだったようだ。

 これにより、キャリアショップでのPixelの存在感が増し、シェアアップにつながったとされている。

 今回のGoogle Store表参道店は、グーグルにとって最高の立地と言えるだろう。斜め前にGalaxy Harajuku、徒歩圏内にアップル表参道というライバルがひしめく場所を確保したことで、他メーカーのユーザーの関心を引くことができる。

 また、表参道という土地柄、スマートフォンのブランドに全く興味の無い、若い世代にもリーチすることが可能だ。この1年で、PixelからiPhoneにAirdropもでき、RCSによって、iMessageとの垣根も無くなった。「スマホと言えばiPhone」という若い世代にPixelを売り込む場所として、絶好の場所だと言えそうだ。

 ここ最近のスマホと言えば、カメラ競争が一段落し、AI機能での差別化がメインとなっている。AIでの勝負となれば、グーグル「Gemini」が圧倒的に世界をリードしているのは間違いない。グーグルとしては「横綱相撲」できそうなものだが、いかんせん、スマホのAI機能は地味で一般ユーザーには伝わりづらい。

 ウェブの記事や動画でその凄さがなかなか伝わらないなか、Google Store表参道のような「実際に触ってAIの利便性、楽しさを伝えられる店舗」はグーグルにとってとても優位な場所になるだろう。

 もちろん、既存のPixelユーザーにとっても、「調子が悪くなったり、壊れたら、すぐに直してくれる場所」ができたのは大きい。いざというときの安心感につながる店舗は、スマホを新たに購入するときの判断材料にもなりそうだ。

「Android一丸」になることに期待

 今回、店舗の取材をしたが、ユーザーにとって発表されたばかりのPixel 11シリーズを触れるというのはかなり嬉しい体験になりそうだ。一方で、先日発売されたばかりの「Google Homeスピーカー」は展示が一台のみなのがちょっとさみしかった。

 また、Google Pixel Tablet、Google TV Streamer、防犯カメラやドアベルなどの展示も無かった。我が家にいる小学生からすれば、初めてのグーグル製品と言えば、学校で配られた「Chromebook」なのだが、Google Store表参道にChromebookの影も形もなかった。

 これが「Pixel Store表参道」なら理解できるのだが、「Google Store表参道」であれば、グーグルのPixel以外の製品ももっと展示し、体験してもらえる場所にしても良かったのではないだろうか。

 なんなら、Pixelだけでなく、他メーカーのAndroidスマートフォンも展示し、触ってもらうことで、Android全体の良さを体験できる場所にすべきだろう。

 グーグルが店舗を出し、Pixelが売れるのはいいが、ほかのAndroidスマートフォンが売れなくなっては意味が無い。グーグルとAndroidメーカーが一丸となって、アップル・iPhoneを倒す起点にGoogle Storeはなるべきではないだろうか。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。