石川温の「スマホ業界 Watch」
移動基地局車のイオン出動から読み解く、楽天モバイル「KDDIローミング終了」のリスク
2026年5月12日 00:00
5月の大型連休、ちょっと時間があったので、スマホ業界で話題のスポットとなっている「イオンモール津田沼サウス」に足を延ばしてきた。イオンモール津田沼サウスはもともとイトーヨーカドー津田沼店だったのだが、今年3月にイオンモール津田沼サウスにリニューアルされた店舗だ。
移動基地局車が平時のイオンに
なぜ、わざわざ連休中にイオンモール津田沼サウスまで出かけたかといえば、駐車スペースに楽天モバイルの移動基地局車が出動していると、ダイヤモンド・オンラインの記事で知ったからだ。
移動基地局車は、災害時のほか、花火大会や音楽フェスなど人が大勢集まる場合ぐらいしか出動しない。そんな移動基地局車が津田沼駅のすぐ近くのショッピングセンターに出動しているとは珍しいとあって、思わず出かけてしまったのだ。
実際に駐車スペースに赴くと、楽天モバイルだけでなく、ソフトバンクの移動基地局車も停まっていた。どうやら、各キャリアにとって鬼門の場所になっているようだ。
実際に店舗内で速度チェックをしたところ、1階に関しては決して高速ではないものの、なんとか通信できる状態であった。しかし、地下に関しては圏外でなかなか厳しい状況であった。
スマホ決済が普及するなか、レジで決済をしようと思ったら圏外だったというのでは話にならない。おそらく、店舗側から楽天モバイルにクレームが寄せられたのだろう。
ちなみに、楽天モバイルのエリアマップを見てみると、JR津田沼駅周辺は5Gではなく4Gエリア。イオンモール津田沼サウスがあるあたりはなんとか5Gエリアになっているようだ。
さらに、KDDIのサイトにある2026年2月18日更新の「楽天モバイル向けローミングサービス提供エリア」を見てみると、まわりはローミングエリアであったものの、イオンモール津田沼をきれいに避けるかたちで、ローミングエリアから外されていた。
KDDIの松田浩路社長がかつて「トラフィックの多いところは楽天モバイルへのローミングを随時、打ち切っている」と話していたことから、このあたりもローミングが終了している可能性が極めて高そうだ。
楽天とKDDIで交錯する、ローミングへの考え
KDDIによる楽天モバイルへのローミング契約は全国エリア(東京23区、名古屋市、大阪市および局所的なトラフィック混雑エリアは除く)、地下鉄、地下街、トンネル、屋内施設や観光名所などの一部、東京23区、名古屋市、大阪市の繁華街エリアの一部となっている。
KDDIのユーザーが優先されるため、局所的なトラフィック混雑がある場所はすでにローミングを切りつつあるというわけだ。
ローミング提供期間は2026年9月30日までとなっている。サイトには「ローミング提供期間のさらなる延長については両社協議の上決定」とあり、これが延長されるか打ち切られるかが注目となっている。
楽天モバイルの三木谷浩史会長はここ最近、KDDIに対して感謝の気持ちを述べるなど「ローミング契約の延長ありき」で動いているものと思われる。一方、KDDIの松田社長は2月に行われた会見で「我々から(打ち切りの)提案をする考えだ」と述べている。
実際、KDDIが「もうローミングは必要ない」と判断したきっかけとなったのが、1月27日に起こった楽天モバイルの通信障害だ。原因はNTT東日本のデータセンターでの電源トラブルであったが、松田社長は「その際、かなり我々の方に(楽天モバイルの)トラフィックが流れてきたことを確認している。つまり、それだけエリアが重複しているということだ」と語っている。
おそらく、この9月にいきなりローミング契約が切れるというわけではなく、そろそろ「延長するのか、打ち切るのか」というアナウンスが出るだろう。
ただ、この状況でローミング契約が打ち切られるとなると、全国規模でイオンモール津田沼サウスのような状況が起こりかねないのではないか。
楽天モバイルは、年内にASTによるスマホと衛星との直接通信サービスを開始する予定だ。衛星からはプラチナバンドを飛ばすため、三木谷浩史会長は「衛星からの電波は屋内でもつながる」と豪語している。
とはいうものの、衛星からのプラチナバンドが、ショッピングセンターの地下売り場まで浸透するとは考えにくい。また、ASTは衛星の数が少ないため、「当初は必ずしも24時間、つながり続けるものではない」(三木谷浩史会長)としており、「つながればラッキー」程度なのかもしれない。
今年度、楽天モバイルは2000億円規模の設備投資を計画している。早急にこれまでローミングに依存してきた場所をカバーしないことには、1000万人が怒り狂うことになりかねない。
KDDIは2026年5月12日に決算会見を行い、新中期経営戦略も公表する。楽天モバイルからKDDIに対しては、かつて年間数百億円規模の接続料が支払われていた。しかし、松田社長は「中期経営戦略において、ローミング収入は収益源として考えていない」と明言している。
果たして、KDDIと楽天モバイルのローミング契約は延長されるのか、打ち切られるのか。その答えはまもなく明らかになりそうだ。






