石川温の「スマホ業界 Watch」
「LINE新機能」PayPay送金やショッピング強化の真意、消えゆく「シンプルUI」と広告・物販前提の未来
2026年7月3日 00:00
LINEヤフーは7月2日、「LINEアプリ15周年記念イベント」を開催。2026年夏にLINEとPayPayのアカウント連携を開始すると発表した。
ソフトバンクとLINEが経営統合に合意したのが2019年11月。その後、2023年10月にZホールディングス、ヤフー、LINEの3社が中心となる5社が合併して「LINEヤフー」が誕生した。
その直前には、両社が経営統合をしたものの、シナジー効果が全く出なかったため、ソフトバンクの宮川潤一社長が「この2年間、なかなか新しいプロダクトが生まれてこない。もう少しスピードを上げてくれないかと思っていた。さすがに我々の期待感と違っていた」と愚痴をこぼしたことがあった。
今年になって、LINEとヤフーで使えるAIエージェント機能である「Agent i」が誕生するなど、ようやく、新しいプロダクトが出てきた感がある。
この夏、LINEとPayPay、それぞれのアカウントが連携することで、便利になるのが「送金機能」だ。
LINE上で友人に簡単に送金できるようになる。これまではLINEで金額のやりとりをしつつ、別にPayPayアプリを立ち上げて、LINEの友だちのアカウントを探し出し、送金するという手間があった。
両社のアカウントが紐付くことで、LINEアプリ上で簡単にPayPayでの送金ができるというわけだ。
「LINEでお金が送れるなんて、なんて便利な機能なんだ」と思いきや、そもそも、そうした送金機能はかつてLINEが行っていたスマホ決済サービス「LINE Pay」で提供されていたのだった。
LINE Payはかなり頑張ってスマホ決済サービスを提供していたが、LINEとヤフーが経営統合としたことで、ソフトバンクとしては早い段階からPayPayへの一本化を進めていた。
結果、2024年10月に「LINEで友だちに送金できる」という機能が消滅したのだが、ここに来て、ようやく「復活」と相成った。
LINEとヤフーが経営統合した際、新たに「LYPプレミアム」という有料サービスが開始された。それまで「Yahoo!プレミアム」として提供されていたサービスが名称変更されただけでなく、LINEスタンプが使い放題になったり、LINEアプリのアルバムに動画やオリジナル画質の画像を保存できる機能が追加された。
かつて、別のサービスでは、「LINE Yahoo PayPay」という長ったらしい名称で発表されたものがあった。「経営統合しても、お互い遠慮しているのだな」という空気感がビンビンに伝わってきたのだが、サービス開始時には「LYP」という、短い名称に変わっていた。
LYPプレミアムは月額650円となっている。
携帯電話のソフトバンクやワイモバイルが提供する料金プランの多くでは、LYPプレミアムがバンドルされており、グループ会員数は2549万人にもなる(2026年5月末現在)。ただ、料金プランのバンドルではなく、直接、会員となっている人も666万人もいるようだ。
今回、LINEでは月額290円の「ライトプラン エンジョイパック」を新設。LINEスタンプ、アルバム、会員限定アプリアイコン、着信音・呼び出し音の機能などをメインとし、Yahoo!やPayPayなどでお得になる機能は省かれている。
LYPプレミアムからYとPを切り捨てLINEに特化した「Lプレミアム」と言えるだろう。
ここ数年のLINEを振り返ると、ヤフーと経営統合したことで、無理矢理、ヤフーとのシナジー効果を求められ、すっかり勢いを失ってしまった感が出ていた。
今回、15周年を契機に、例えば、友だちのトーク中にAgent iを呼び出し、トークを整理したり、会話に新たな気づきを提案してくれたりと、友だちのコミュニケーションが深まり、実際に会うなどの行動を促す仕掛けが取り入れられている。
ヤフーとの融合など考えず、LINE単体で機能強化に突き進んだ方が、よっぽど、ワクワクさせらえる進化ができるような気がしているのだ。
今回の発表はまさにヤフーの経営統合によって失った3年をようやく取り戻したように感じる。
「Rakuten Link」と近い方向への進化
一方、今回、LINEが発表したなかで、気になったのが「ショッピング」の強化だ。LINEアプリの画面下、「VOOMタブ」が「ショッピングタブ」になる。
2026年9月以降、ショッピングタブから、LINEヤフーグループのショッピングサービスが取り扱う3万点以上の商品から、ユーザーにあった商品に出会え、比較・検討、購入、ギフト、配送までをシームレスに行えるようになるという。
LINEもヤフーと経営統合して「ずいぶんと商売っ気を出してきたなぁ」なんて思っていたら、楽天モバイルのことが頭に浮かんだ。
楽天モバイルは無料通話、メッセージアプリとして「Rakuten Link」を提供している。これまで機能強化を図っていく中で、単なる無料通話、メッセージアプリではなく、広告が大量に表示され、楽天経済圏への入り口アプリへと進化している。
2025年には5回、「楽天モバイル最強感謝祭」が行われ、Rakuten Linkのホーム画面をジャックすることで、楽天経済圏への送客を拡大。2025年12月にはRakuten Linkから楽天グループサービスの送客回数が月5000万回を超えるようになったという。
LINEも楽天モバイルも、ユーザーに無料で通話やメッセージサービスを提供しつつ、アプリを顧客接点として、物販などを行い、収益を上げていくビジネスモデルという点では同じ方向を向いているのだろう。
もはや「シンプルなUIで使える無料通話、メッセージアプリ」というのは絶滅しつつあり、広告や物販が前提になろうとしている。
「シンプルに簡素な画面がいいからRCSやiMessageを使う」のか、「広告や物販を前提に、すでに普及しているLINEやRakuten Linkを使う」のか。
無料通話、メッセージアプリは新たなフェーズに入ったのかも知れない。





