ニュース

飲み物のシール/レシートキャンペーンを代替する「マイレージ制度」をヤフー/PayPay/LINEが提供へ、そのメリットは?

左から、LINE 代表取締役社長とZホールディングス 代表取締役Co-CEO Marketing & Sales CPOの出澤 剛氏と、ヤフー 代表取締役社長 社長執行役員 CEOの小澤 隆生氏、PayPay 代表取締役 社長執行役員CEOの中山 一郎氏

 Zホールディングス傘下のヤフー、LINE、PayPayの3者は、販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」を来春3月スタートさせると発表した。メーカー側が特定の商品購入時にユーザーにポイントなどの特典を提供できるほか、ユーザーの購買履歴に基づいたクーポンの配布などができる。

 同社は、ユーザーとメーカー、小売店の「3方良し」となる仕組みとしているが、実際にユーザーにとってメリットがあるものなのか?

「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」のしくみ

 「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」は、ユーザーが特定の商品Xを購入すると、その金額や量に応じてマイレージが積算される。積算されたマイレージが一定以上となると、PayPayポイントなどの特典がユーザーに提供される仕組み。

 積算対象の購入方法は、オフラインのPayPay加盟店のうち、同マイレージに加盟している店舗での購入のほか、オンラインの「ヤフーショッピング」での購入でもマイレージが積算される。

 また、2023年内に提供予定のサービスとして、LINEとヤフー、PayPayそれぞれのユーザーIDを結びつけると、たとえば“もうすぐマイレージが特典付与地点に到達する”ユーザーに対して「もう少し買えばポイントがたまる」といったメッセージや、購買履歴に基づいたクーポンを送信することができる。

 12月13日時点での参加企業は、メーカーがアサヒ飲料、加盟店がウエルシア、サンドラッグ、スギ薬局、ツルハドラッグ、オーケーとヤフーショッピングが案内されている。メーカーは、このほかにも大手飲料メーカーや消費財メーカーなどが参加を予定しているという。

3方良しとなるか?

 このマイレージ制度は、「商品を提供するメーカー」が特典の展開や原資を負担して展開される。マイレージ制度の利用には、POSと連携させることが必要となるため、対応している加盟店が限られるが、マイレージ加盟店は特別な費用を負担せずに提供できる。

 メーカー側のメリットは、誰がどこで何を買ったかがわかり、ユーザーに対し継続的にアプローチできる。また、キャンペーンをするにあたり、シールの貼り付けなどでコストをそこまでかけずに展開できるといったメリットを挙げる。

 小売店側は、「マイレージ対応」ということでユーザーが商品購入の際に選んでもらいやすくなることや、商品購入頻度の増加、ユーザー単価の向上などでメリットがあるという。

 ユーザー側は、それぞれのアカウントを持っていれば、別途小売店の会員カードを発行したり、キャンペーンシールを集めたりせずに、PayPay決済やヤフーショッピングで買い物するだけで特典を受け取ることができる。また、商品ごとにマイレージが貯まるので、対象店舗であれば店舗関係なくマイレージをためることができる。

 ヤフー 代表取締役社長 社長執行役員 CEOの小澤 隆生氏は、マイレージの目的を「Life Time Value(LTV、顧客生涯価値)の最大化」としており、今後メーカー側による自由な特典設計や、新商品のサンプリングキャンペーン、購入実績に応じて価格を変動させるダイナミックプライジング機能などを展開していくとしている。

ヤフーの小澤 隆生氏

 また、LINE 代表取締役社長とZホールディングス 代表取締役Co-CEO Marketing & Sales CPOの出澤 剛氏は、3社が一体となって販促をDX(デジタルトランスフォーメーション)することで、売上1000億円規模を目指す考えを示した。

Zホールディングスの出澤 剛氏

メーカーがクーポンを出せる「商品クーポン」

 今回、マイレージ制度に加えて商品単体の販促を実現できる機能として「商品クーポン」機能が発表された。

 これまでのクーポンに加えて、メーカー向けの販促システムとして、商品を限定したクーポン「商品クーポン」をリリースする。

 「すでに多くのユーザーと加盟店がクーポンを利用している」とし、PayPay決済取扱高上位100社のうち83の会社でPayPayクーポンを利用しているとアピール。

 これまでは、加盟店向けのソリューションとしてクーポンやスタンプカード機能をリリースしていた。一方、メーカー側には、LINEでの販促機能を提供していたが、商品クーポンでは、特定の商品を小売店で購入した際、メーカー側でポイント付与などの販促を実施できるようになる。

LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay販促コンソーシアムの設立

 3社は、メーカーや小売りなどの企業が参画できる販促コンソーシアム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay販促コンソーシアム」を設立する。

 全体だけでなく顧客個人との関係性を管理できる「CRM機能」(Customer Relationship Management)を高度化し、メーカー自体がCRM機能を提供できたり、マイレージ制度などの核となる「POS連携」を実現すべく、3社と参加企業で協議できる場として設立する。

 12月13日時点では、アサヒ飲料やキリン、サントリーと3社が、小売店ではウエルシアやコーナン商事、スギ薬局、オーケー、サンドラッグ、マツモトキヨシなどが参画している。

ポイント統合に向けた取り組みは? ほかのサービスとの違いは?

 ここからは、発表会中の主な質疑をお伝えする。回答者は、LINE 代表取締役社長とZホールディングス 代表取締役Co-CEO Marketing & Sales CPOの出澤 剛氏と、ヤフー 代表取締役社長 社長執行役員 CEOの小澤 隆生氏、PayPay 代表取締役 社長執行役員CEOの中山 一郎氏。

――Zホールディングス3社でのポイント統合の話は進んでいるのか?

ZHD 出澤氏
 ポイント統合に向けて粛々と向けているところ。

ZHD 出澤氏

――メーカー、小売店それぞれでポイントプログラムを展開しているが、販促コンソーシアムに参加することで、PayPayマイレージとの連携などはあるか?

ヤフー 小澤氏
 小売店で独自展開されている会員システムは、基本的に大切にされたいと思っている。互換性をもつような機能や、既存の会員システムを代替できる機能も今後展開できると思っている。

――ID連携で目指すサービスとはどのようなものか? マイレージとはどのようにつがうのか?

ZHD 出澤氏
 別立てでやるものではなく、より便利になるもの。

 連携後は、ユーザーの同意を得た上で、より便利かつユーザーにあった情報を提供していく機能を実装する。

――マイレージ制度、以前から実施している花王との取り組みに似ているが?

ヤフー 小澤氏
 花王との取り組みで実際に「すばらしい、すごくうまくいっている」との声が出ており、想定よりも多くのユーザーに使ってもらえる。

 今回の取り組みは、さまざまなメーカーに仕組みとして経常的に期間を設けず本格展開するサービスとして提供する。

 マイレージが積算できるということで、特典を受けられる小売店を選ぶユーザーが増えることや、売上単価が上昇することが花王との取り組みでも確認できており、POS連携でより柔軟に展開できる。

 今後は、買い回りで特典付与など、メーカーが希望するマーケティングプランに向けてもう少し違ったものが提供できるかもしれない。

PayPay 中山氏
 今回は、POS連携をすることが花王との取り組みと異なるところ。

PayPay 中山氏

――マイレージとコンソーシアムで参加企業が違うようだが、実際の参加規模数はどれくらいか?

ヤフー 小澤氏
 マイレージとコンソーシアムは別もの。マイレージだけ入る企業やコンソーシアムだけ入る企業もある。

 実数については、回答を控える。

――個人情報などがメーカーに渡るのか?

ヤフー 小澤氏
 個人情報は入らない。

 消費者側から同意を取ることは難しいため、ユーザーの同意を得た購買データなどに基づいた特典提供を行う。

 メーカー向けの分析機能は、顧客層や状勢などを分析するマーケティングに関する機能を予定している。最初は、担当をつけて特典や分析内容を設計していくが、ゆくゆくはメーカー独自で特典内容を設計してもらう。

ヤフー 小澤氏

――マイレージ制度は、PayPay加盟店が対象になるのか?

ヤフー 小澤氏
 別途契約を結んでPOSデータを提供できる場所に限られる。

 また、ヤフーショッピングでも特定の契約を結んだ店舗のみになる可能性もある。

――マイレージについて、メーカーと加盟店双方はどれだけ負担するのか?

ヤフー 小澤氏
 メーカーが特典となる原資を提供する。固定費に加え従量課金で費用をいただくことを想定している。

 加盟店側は、コスト負担はない。PayPay決済で利用するため、決済に関わる手数料などが発生する。

――「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」と名前が長いがなんとかならなかったのか?

ヤフー 小澤氏
 ごもっともなご意見。

 今回は、3社が一つになってがんばっているということをできるかぎり認識していただきたかったために命名しているが、ユーザーに対しては(サービス提供開始時期の)来年の3月までにわかりやすい名前に変更しているかもしれない。