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第44回:Bluetoothとは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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Bluetooth対応携帯電話が登場
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auが5月17日に発表したソニー製のBluetooth搭載cdmaOne端末「C413S」
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以前からいくつかのメーカーから展示会での参考出品などもされていましたが、Bluetooth(ブルートゥース)による通信機能を搭載した携帯電話が一般に市販されるようになります。
6月に発売される予定のauのEZweb端末「C413S」は電話機単体でBluetoothによる通信機能を搭載した携帯電話です。また、携帯電話のオプションとしてはオムロンと京セラから、DDIポケットのH"端末用Bluetoothアダプタが既に発売されていますし、また、PDC方式携帯電話のアダプタでは、リンク・エボリューションのIrDA・Bluetooth両対応アダプタ「IbGEAR」が7月にも発売される予定です。
ごく簡単にいうと、このBluetoothとは、2.4GHz帯の電波を使って、無線を、機械と機械を結ぶ様々なケーブルの代わりにするための技術です。
世の中ではいろいろな機械でデータや信号をやりとりするためのケーブルが使われていて、たとえば、携帯電話でモバイル通信をするにも、普通は携帯電話とパソコンなどをケーブルでつながなくてはなりません。が、たとえば、例に挙げたC413Sでは、BlueToothの機能を使えば、携帯電話とパソコンをケーブルで接続せずとも、ポケットや鞄に入れたままでインターネット接続などのデータ通信をすることができてしまうのです。
このBluetoothは携帯電話だけではなく、他にも、非常に多くの機械で利用される規格で、将来的には、この規格のインターフェイスをもった機器が1世帯に何台もあるような、大変ポピュラーになることが期待されるインターフェイスのひとつでもあります。たとえば、PDAとパソコンの接続や、CDプレーヤーからヘッドホンへのケーブル代わりとしても使わるようになります。
現在、携帯電話以外ではたとえば、ソニーや富士通が富士通がBluetooth対応のノートPCを発売しています。展示会などでも参考出品などでは、PDAで使えるCFカードスロット用Bluetoothカード、Bluetooth対応ワイヤレスモデムステーション、ビデオなどのリモコン、Bluetoothペン、ワイアレスヘッドホンなど様々な機器がされていますから、これらの多くが製品として近々世に出てくることになるでしょう。
この「Bluetooth」という名前は、10世紀にデンマークとノルウェーを統一したことで知られるバイキング王「ハーラル青歯王」に由来しています。おそらく、さまざまな種類の機械の通信をこの規格で「統一」することをこの王の名前にかけているのでしょう。
Bluetoothの仕組みと特長
Bluetoothは、2.4GHzの周波数の電波を使って、携帯機器や携帯電話、パソコンなどさまざまな機器の間で簡単にお互いを認識したり、データのやりとりができるようにする技術です。いわゆる家庭用無線LANなどと同様で、日本や主な国では免許などは必要なく、誰でも利用が可能です。
Bluetoothでの接続では、最初の1台目のBluetooth対応器は「マスター」という中心に機器になります。ここから最大で約10m程度がBluetoothの使えるサービスエリアになり、この中に入ったBluetooth機器は「スレーブ」機器になって、無線で、マスターとスレーブの間のケーブルを無線で仮想的に差しこんだ形になります。
このエリアの中では、ピコネットと言って、マスターに最大7台までスレーブ機器が接続されたネットワークを作ることが可能です(なお、Bluetoothの2.0版ではスキャッタネットと言って、あるマスターがほかのピコネットのスレーブになる方法でさらに接続できる台数が増やすことができるようになっています)。
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Bluetoothでは、ピコネットの中心となるマスターを中心に7台の機器を無線で接続することができる
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このBluetoothのデータ伝送レートは下り721kbps、上り57.6kbpsの1Mbps。この他に音声専用の64kbpsのチャネルも別あって、これを使っての音声のやりとりも可能です。
通信自体は「周波数ホッピング(FH)」方式のスペクトラム拡散通信が使われていて、1MHzごとに分割された79チャネルを使って1秒間に1,600回もの周波数変更を行なうことで電波干渉の時間を短くしています。
対応のモジュールも大変小さく低消費電力なものが存在し、携帯機器にも搭載しやすいのも特長のひとつです。
Bluetoothの規格とバージョン
このBluetoothの規格は3Com、エリクソン、インテル、 IBM、ルーセントテクノロジー、マイクロソフト、モトローラ、ノキア、東芝など現在2,000社以上会社が参加している業界団体「Bluetooth SIG」によって策定が行なわれています。
また、IEEEのWPAN(Wireless Personal Area Network)ワーキンググループによる標準化作業も進められており、Bluetoohのスペック1.0はIEEE802.15ドラフト版として勧告される予定になっています。
Bluetoothの現在の最新の版は1.1版で、多くの機器は1.0b、またはver.1.0b+CE(1.0b Critical Errata:致命的な問題を修正したもの)という版に対応しています。1.1版に対応した機器の出荷が始まるのは6月とされています。
現在出回っている1.0b、1.0b+CE、1.1に対応した機器はお互いに互換性がない、あるいは保証されないということになっています。ですので、同じ版の機器との接続はできますが、残念ながら、それぞれの版の機器での相互接続はできないものと思っておくべきでしょう。
なお、規格としては、既に次期版の2.0の策定も始まっています。この新しい版では2M ビット/秒から 12M ビット/秒の伝送レートが実現される予定です。
luetoothの「プロファイル」とは
Bluetooth機器の記事では「プロファイル」という言葉がよく出てきます。「プロファイル」とは、Bluetoothの機能が実装される際に使われる仕様のことです。
具体的には、このプロファイルにはダイアルアップ接続するための「ダイアルアップ接続プロファイル」、ヘッドセットを使うための「ヘッドセットプロファイル」、PCからのファイル転送などに使う「ファイル転送プロファイル」などがあるのですが、たとえば、Bluetooth対応のヘッドセットを携帯電話のヘッドセットとして使うには、携帯電話が「ヘッドセットプロファイル」に対応していなくてはなりません。
具体的には、最初に例に挙げたC413SやH"端末用Bluetoothアダプタはどちらもダイヤルアップネットワークプロファイルに対応していて、ダイアルアップ接続に使うことができます。が、どちらの機器もヘッドセットプロファイルには対応していないので、残念ながら、Bluetooth対応のワイアレスヘッドセットを使うことはできません。
Bluetoothと同様に無線データ通信手段に(ただしこちらは電波ではなく赤外線を使う)IrDAがあります。このIrDAでは、PCとPDAをつなぐ通信ケーブルを模してデータをお互いにやりとりするためにはIrCOMM、プリンタケーブルの代わりに赤外線を使うにはIrLPTといったソフトの規格(アプリケーションプロトコル)があり、基本的には、たとえばプリンタを使うにはこのIrLPTにIrDAインターフェイスを持った機械が対応してなくてはいけませんでした。これと同様だと考えるといいでしょう。
なお、余談ですが、Bluetoothでは、ファイル転送ではIrDAでも使われているOBEX(OBject EXchange Protocol)が採用されています。そのため、ファイル転送やデータの同期などのソフトウエアは多くの場合IrDA対応アプリケーションからわずかの変更で済み、対応はとても簡単であると言われています。おそらく将来的には、多くのIrDA対応ソフトがBluetoothにも同じように対応できるようになることでしょう。
(大和 哲)
2001/05/22 18:31
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