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第43回:CMOSカメラ(CMOSイメージセンサー)とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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携帯電話のカメラユニットの正体
昨年末あたりからいくつか、携帯電話やPHSで撮影してそのまま画像をメールに添付して送ることができるような、デジタルカメラ機能内蔵の携帯電話や、オプションの携帯電話用デジカメユニットが販売されています。
これら携帯電話のカメラ機能の多くはデジタルカメラと同じく、ほとんどが「CMOSセンサー」か「CCDセンサー」が組み込まれています。
CMOSセンサー、CCDセンサーとも、半導体で作られた撮像素子です。撮影した画像はそのまま電気信号になるので、デジタル化すればマイクロコンピュータなどで容易に画像データを扱うことができます。携帯電話などではもともとデジタル化した音声データを扱うためにマイクロコンピュータやデジタルシグナルプロセッサなどが搭載されていますから、このようなデバイス(装置)は携帯電話に取っては比較的取り扱いやすい類のものであると言えるでしょう。
さて、CMOSカメラはこのうち「CMOSセンサー」の方を使ったデジタルカメラです。携帯電話用のカメラではシャープ製の「J-SH04」「J-SH06」などの機種のカメラがこのCMOSセンサーを使ったカメラです。
CMOSセンサーはデジカメや携帯電話用のカメラの他にイメージスキャナの受光部などにも使われています。また、たとえば、デジカメでは、安価なところではニチメンの「Che-ez stick」などが約30万画素のCMOSセンサーを搭載しており、高級なところではキヤノンの「EOS D30」という一眼レフデジタルカメラで総画素数約325万画素の大型CMOSセンサーが利用されています。
また、携帯電話以外では、たとえばNTTドコモの携帯端末「キャメッセボード」などがこのCMOSセンサーをカメラ部分に利用しています。
CMOSセンサーの仕組み
CMOSセンサーの「CMOS」とは「相補性金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductorの略)」のことで、このLSIがシリコン上にどのように半導体を組み合わせて回路を作っているかを示しています。このCMOSというタイプのLSIはコンピュータのCPUやメモリーなどにも使われていて、非常にポピュラーなタイプのLSIです。
コンピュータのメモリーでは、LSI上には何十万、何百万のトランジスタの素子が並びこれがデータを記録していますが、CMOSイメージセンサーでは代わりにチップ上に当たった光の強弱を電荷に変えるフォトダイオードと、それによって通る電気信号を強弱させる仕組み(アンプ)がたくさん並んでいます。
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CMOSセンサーのおおまかな構造。光を電荷に変換するフォトダイオードと、それによって流れる電流を増幅するアンプがチップ上に並んでいる
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メモリの場合はLSIに「この場所を読みたい」とそこに記録されていたデータが読み込めるようになっています。CMOSセンサーの場合は、記録されたデータではなく、その場所に当たっている光の強さをデータとして読み込むことができるようになっています。これによって画像が撮影できるようになるのです(ちなみに、素子には色フィルターがあって、これによって画素の明るさだけでなく、色もデータとすることができるようになっています)。
よくデジタルカメラの商品説明などで「画素(ピクセル)数」という言葉が使われますが、CMOSセンサーの場合、センサー上にある「光をあてるとそれを電気信号に変える装置」がいくつあるかを示しています。つまり、この部品の個数が多ければ多いほど、撮影した画像の中で細かいディテールまで表現することができ、拡大しても粗が目立たず高い画質を維持できる画像になる、ということになります。
ちなみにデジカメでは、100万画素のことを「メガピクセル」ということもあります。
携帯電話や携帯端末のカメラの場合、デジタルカメラとは言っても、市販のデジカメとは違い30万画素程度までの解像度しかなく、それだけ画像は荒いということになります。が、もともと携帯電話の画面は小さいので解像度が大きくなくてもそれほど問題にはなりませんし、携帯電話の場合画像を送信しますからデータが小さい方がいいので却って好都合ですので(画像が細かくなるとその分データ量も増えます)、この程度の画素数のCMOSカメラやCCDカメラが使われることが多いようです。
CMOSセンサーのメリット
CMOSセンサーのメリットはなんといっても低消費電力であることでしょう。たとえば、あるメーカーの説明では、あるCMOSセンサーでは同様のCCDと比較すると、ピーク時で5分の1程度の電力しか消費しない、とされています。これは携帯電話のように電池をなるべく長く保たせたい機械には有利な条件です。
CMOSセンサーで使われているのは、通常、LSIを作るときにも使われるCMOSですので、「ワンチップ化」と言って、同じチップ上にカメラの受講部分であるセンサーの他に、その他のLSIも同じパーツ上に組み込むこともできます。通常、センサーだけでなく、デジタルカメラにはその他にもいろいろLSIが必要になりますから、なるべくカメラを小さく作りたい、というような時にも有利です。
他にも、たとえば、CMOS回路上に、画像の輪郭を調べたり、パターンマッチングや任意位置のズーム機能など、撮影した画像をカメラ内で画像処理してしまう回路を組み込んだ「人工網膜チップ」なども作ることもできます。
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CMOSセンサーはCMOS LSIであるため、他のチップと統合したLSIを作るのも簡単だ
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また、CMOSセンサーは、CMOSという名前の通り構造がコンピュータのメモリーなどと同じであるため、製造ラインも多くの部分をコンピュータのメモリなどの製造技術が使えます。大量生産をしやすい条件ともいえ、生産コストを下げやすいと言われています。
反面、CMOSセンサーは構造上「ノイズが画像に残りやすい」というデメリットもあります。
たとえば、こういう問題があります。CMOSチップは、シリコンでできたウェハー上に数十万、数百万といった非常に多くのトランジスタを作ることにより製造されるわけですが、このトランジスタが、たとえば全く光を受けていない場合でも電流を流したときに流れる量は実は微妙に違います。このコンピュータのメモリーなどを作る場合は、0、1のデジタル信号として解釈してしまいますので、このばらつきは問題にならないのですが、電流の流量を画像にするCMOSカメラでは、このばらつきが画像上の画像上のノイズとなって目に見えてしまいます。そこでノイズの除去をするための工夫が必要になってしまうのです。
そのため、たとえばあるCMOSセンサーの場合は、まず、はじめに画像を撮影する前に画像のノイズを記録しておいて、撮影の際には、撮られた画像からノイズ分を引いてからデータにする、というような「ノイズキャンセル回路」がイメージセンサーと同じLSI上にあって、これで画像のノイズを減らす、という工夫をしているそうです。
(大和 哲)
2001/05/15 00:00
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