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第42回:gpsOneとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


gpsOneとは

 gpsOneは、「cdmaOne」のQualcomm社が開発した、携帯端末の位置を知るための技術です。現在でもPDC方式の携帯電話やPHSでは、電波をやりとりしている基地局を利用して端末の位置を知る位置情報サービスなどを提供していますが、このgpsOneはcdmaOneおよびcdma2000/1Xで使われます。仕組み的には、gpsOneはその名の通り、端末の位置を計測するためにGPSと携帯電話のシステムの両方をハイブリッドに利用しているのが特長です。

 携帯電話の従来の位置情報とgpsOneのそれとの大きな違いは精度です。
 gpsOneはGPSの情報を利用しているため、非常に高い精度で携帯電話の位置を知ることができます。

 Qualcomm社が配布している資料によれば、携帯電話のみを使った位置計測ではだいたい300メートル前後の精度でしか位置がわからないため「街のどのエリアにいるか?」程度しかわかりませんが、GPSとの携帯電話の位置情報システムの組み合わせでは5メートルから50メートル程度の精度でわかるようになるため「どの通りのどの角か」といった情報を伝えられるようになるので、このような緊急通報に利用する、などということも十分可能になる、とされています。


gpsOneと今までの携帯電話の位置情報の大きな違いはその精度だ。5メートルから50メートル程度の精度があり「どの通りのどの角にいるのか」程度まで端末の位置がわかる


互いに補完しあうGPSと携帯電話のネットワーク

 gpsOneでは位置情報を得るのに、GPS衛星からと携帯電話のネットワークから、両方の情報を利用し、情報をそれぞれ補完することによってより確かな位置情報を得ています。

 GPS(Global Positioning Systems)は、自動車のナビゲーションシステムなどでも自分の位置を知るために使われているシステムで、複数の人工衛星から電波を受信して、それぞれを受信したときの時間のずれなどから現在の位置を計測します。


gpsOneでは、GPS衛星を使った位置情報と基地局からの位置情報の両方を使うことで、利用者が屋内にいても位置情報を得ることができるようになっている


 カーナビゲーションシステムなどを使われている方は、位置情報ならGPS衛星からの情報だけでも精度の高い位置情報が得られるではないか、と思われるかもしれませんが、携帯電話の位置情報としてはそれだけでは問題がいくつかあります。

 というのも、GPSの場合は人工衛星からの電波を使っていますので、たとえば人がビルの中や地下街にいる場合など、空からのやってくる電波が屋根などに遮られてしまう場所では使うことができません。自動車の場合はほぼ屋外を走りますし、トンネルなどでもタイヤから拾ったデータで走行距離を知ったり、走っている方位から現在位置をだいたい推測することも可能ですが、人が持ち歩く携帯電話の場合はそのような推測方法も使えないことが多いのです。

 しかし、携帯電話は仕組み上電波をやりとりしている基地局を使って、ある程度の精度で自分のいる位置を知ることもできますので、gpsOneではこれを使って人工衛星からの電波が届いていないときでも、自分の位置を知ることができるようになっています。

 また、GPSとcdmaOneシステムの補完のメリットとしてはこんなこともあります。

 GPSでは、最初に起動する際に、端末が衛星を検索して捕捉しなければならないため多少時間がかかることがあります。が、gpsOneでは、この作業をcdmaOneネットワーク上のサーバがこの作業を補佐してくれるためこの作業が非常に高速化されています。条件によってはものの数秒で衛星を補足することができるそうです。

 ちなみに、cdmaOneというシステムは、実は元々端末と時刻情報の同期を取るために、基地局側ではGPSからの電波を使用しており、cdmaOneとGPSとの連携は全く初めてというわけではありません。


gpsOneの使われ方

 gpsOneにはさまざまな応用が期待されています。
 その中でも一番の注目は、アメリカの場合は「緊急通報」だとされています。

 日本でも問題になっていることですが、従来はたとえば警察に110番通報する場合、システム上、従来は携帯電話では警察には電話のある位置がわからないために事故の起きた場所などがわからなくなってしまい、出動に支障をきたすことがあります。

 米国でも同様のことが起こっていたのですが、連邦通信委員会 (FCC) の E-911 Phase II という規定ができ、緊急通報である911番では携帯電話からかかってきた電話でもその位置が誤差50メートル以内でわかるようなシステムが採用されることになりました。そのため、携帯電話から位置情報が自動的に通知できるこのgpsOneが注目されているのです。

 日本では、4月1日よりセコムが開始している防犯サービス「ココセコム」がこのgpsOneを利用しています。セコムの提供している専用端末に、このgpsOneをサポートしたチップが搭載されていて、KDDI(au)のcdmaOneのネットワークを使ってこの端末の位置がセンターに登録されています。これでインターネットで特定の車両の位置を調べたり、セコムの緊急対処員を現場に派遣する、などというサービスが行われているようです。

 一般向けのgpsOne対応のサービスとしては、auよりgpsOne対応携帯電話向けの位置情報サービスが今秋よりスタートされる予定となっています。

 緊急通報だけでなく他の位置情報を利用したコンテンツ、たとえば、自分のいる位置に一番近いレストランを表示する、などというようなポータブルナビサービスなども提供されるようになることでしょう。


・ gpsOne(英文)
  http://www.qualcomm.com/cdmatechnologies/products/gpsone.html
・ セコムの防犯サービスの専用端末、実はgpsOne対応
  http://k-tai.impress.co.jp/news/2001/03/07/gpsone.htm


(大和 哲)
2001/05/08 00:00

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