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第395回:キセノンフラッシュ とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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「キセノンフラッシュ」は、短い時間に集中して光を放射できるランプの一種です。デジタルカメラも含む、カメラのフラッシュとして多く使われています。また、瞬間加熱処理、殺菌装置、YAGレーザーと呼ばれるレーザー光線発信装置の一部(励起装置)として使われています。
「キセノン」とは、希ガスと呼ばれる元素の1つです。通常(常温常圧)は、色もにおいもない気体です。
携帯電話では、カメラ機能用のフラッシュライトとしていくつかの機種で採用されたことがあります。キセノンフラッシュは、ごくわずかな時間にとても明るい光を放つことができます。キセノンフラッシュから発せられる光は、少し青みがかっているものの自然昼色に近い色(波長500nm近辺を中心で色温度約6000K程度)なので、写真撮影に向いているのです。国内の携帯電話では、ソフトバンクのサムスン製端末で今年1月に発売された「PHOTOS(フォトス)920SC」や、2004年に発売されたNTTドコモの「P506iC」、auの「A5502K」で採用されたことがありました。
■ 発光原理は“アーク放電”
キセノンフラッシュの構造は、真空に近い石英ガラス、あるいは高シリカガラス管に、ごく少量の「キセノン」を封入した放電管、一瞬だけ電荷を蓄える放電コンデンサ、昇圧回路、そしてトリガー回路からなっています。キセノンフラッシュでは、アーク放電という仕組みを使っており、発光のためにある程度の電圧が必要で、そのために白熱電球より多少複雑な回路で構成する必要があります。
キセノンフラッシュを発光させるには、まず昇圧回路で数百ボルト程度の高電圧にされた電流をコンデンサに流し、電荷を蓄えます。そして、ユーザーが発光時のためにトリガースイッチをONにすると、コンデンサから蓄えた電気はトリガー回路内のトランスによって数千ボルト程度まで昇圧され、放電管外側に巻かれた電極に流れます。
電極に流れた電流により、小さな放電が起こり、放電管内のキセノンガスをイオン化させます。これをきっかけに、管内では“電子雪崩現象”と言われる、加速度的に電子数が増える現象が起きます。コンデンサ内の電流は一気に流され、放電管内の両端にある電極の間でアーク放電が起こります。
アーク放電は、電流の通り道が弓なりになっているところから、アーク(弓形)放電と名づけられた現象です。金属の溶接方法の一種である「アーク溶接」などにも使われている原理です。このアーク放電によって、キセノンフラッシュランプ内では非常に強い光が発せられるのです。
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キセノンフラッシュの発光部分は、陽極、陰極の電極と電極ならなり、アーク放電によって発光する。これは、フィラメントに通電して白熱させる一般の電球とは異なる原理だ
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コンデンサに蓄えられた電荷は、この放電によって瞬時に放出され、数ミリ秒以内に電圧は低下します。電圧低下によって放電も終わり、キセノンフラッシュランプの発光は終わります。
キセノンを使ったランプには、キセノンを封入した白熱電球「キセノン電球」というものがありますが、これは、キセノンフラッシュとは異なる原理で光るもので、別の製品ということになります。
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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