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第381回:近接センサー とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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「近接センサー」は、物理的に触って電流のON/OFFが切り替わる機械式スイッチとは異なり、対象物が近づいただけで触ることなくON/OFFを切り替えらる電子デバイスです。
機械的なスイッチと比べて物理的な磨耗などがなく、静電容量方式や磁気方式を採用しているセンサーでは、検出対象の汚れや水、油の付着の影響を受けることなく、悪条件にも強いという特徴があります。
また、スイッチがあることを知られずにスイッチの役割を果たすことができる、というのも近接センサーのメリットといえるでしょう。たとえば、屋外駐車場などでスイッチを入れなくても、人が近づいた場合自動的に照明のスイッチが入る、というようなシステムは、まさに近接センサーなしでは作りえないでしょう。
最近発売されたiPhoneでは、近接センサーが内蔵されており、通話をしようとすると耳が機械に近づいたことを感知します。iPhoneは、近接センサーから得た「人の顔が近づいた」「人の顔が電話から遠のいた」という情報を元に、自動的にタッチパネルディスプレイのON/OFFを切り替えています。このような仕組みを取り入れることで消費電力を節約するとともに、耳が近づいているときには顔がタッチパネルに触っていても、それは「スイッチを押したという動作ではない」といった判断も行い、誤動作を防いでいるのです。
近接センサーは、精度の良いものの場合、近くに物が存在するかどうかだけでなく、物体までの距離を測ることもできます。自動車に近接センサーが搭載されることで、、運転中の衝突を防いだり、自動運転化を検討したりするといった実験も行われています。
■ 近接センサーの仕組み
近接センサーは、非接触、つまり実際に触れることなく検出対象が近づいたかどうか、あるいは近くにあるかどうか、電気的信号に置き換えて検出できます。そのためには、センサーから磁界や電磁波、あるいは光、音波などのエネルギーを放出して、反射してくる物質やエネルギーの変化などを捉えます。
近接センサーの主な方式としては、誘導型、静電容量型、超音波型、電磁波型、赤外線型などが存在します。
「誘導型」は、磁界の変化を利用した近接センサーです。センサーデバイスには検出コイルが内蔵され、電流を流して高周波の磁界を発生させています。磁界に検出対象の金属が近づくと、電磁誘導によって誘導電流が流れます。この誘導電流によって検出コイルのインピーダンスが変化しますので、その変化を検出することで、対象物の接近を知ることができるというわけです。このタイプは、主に金属を対象にした近接センサーに使われています。
「静電容量型」は、電極が絶縁体を挟んでコンデンサ(蓄電器、電気エネルギーを蓄えたり放出したりする)を構成しています。たとえば、チェック対象の人体が近づくとコンデンサの静電容量(コンデンサ内の電気エネルギーの量)が変化するので、その変化を検出して、物体が接近したかを認識できるという原理を利用しています。
「超音波型」は、超音波振動子から超音波を送り出して対象物からの反射波を受けます。この反射波の帰還時間の変化を測定することで、物体がどれだけ近づいているかまた遠ざかっているかを観測できます。
同じように反射波の帰還時間の変化を測定したり、反射波の干渉を測定することで物体との距離を測っる方式で、超音波ではなく電磁波を使っているのが「電磁波型」です。マイクロ波を電波を使ったマイクロ波レーダー、ミリ波の電波を使ったミリ波レーダーなどが最近、民生分野で注目されています。もともと音波や光に比べて減衰が少なく、より遠くの物体を確認できることから軍事分野での研究・利用が盛んでしたが、ITS分野、つまり自動車に搭載して、製品に応用することが期待されています。
そして、iPhoneで使われている近接センサーは、「赤外線型」のものです。赤外線型の近接センサーは、赤外線を発する発光素子と、光を受けとって電気信号に変換する受光素子から成り立っています。発光素子から放たれた光は、距離を測りたい対象物に当たって、はね返ってきます。受光素子は、反射した赤外線を受けて電力に変換します。変換された電力が一定以上になると、対象物が一定距離内に近づいたと判定します。これが赤外線近接センサーの仕組みです。
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発光素子から赤外線を発信し、受光素子で受け取った反射光で測定対象が近くにあるかどうかを判断。これが赤外線近接センサーの仕組みだ
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赤外線型の近接センサーは仕組みが単純で、制御もシンプルと、安価に実現できます。光は拡散しますので、軸調整もあまり精度が必要とされず、製造コストの歩留まりも良い電子デバイスです。
その反面、測定対象物が赤外線を反射しづらい物質だったり、サイズそのものが小さかったりした場合、あるいは曲面で構成されていた場合は距離を正確に測定できないこともあります。
■ URL
iPhone 特長案内ページ(センサーについて)
http://www.apple.com/jp/iphone/features/sensors.html
(大和 哲)
2008/07/30 17:02
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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