「マルチタッチスクリーン」とは、iPhoneなどに採用されている、画面上の複数箇所に指で触れて操作できるタッチスクリーンのことです。
タッチスクリーンは、タッチパネルとも呼ばれるデバイスで、画面を指やペンなどが触れて、その位置や動きなどを認識するというものです。タッチスクリーンが搭載された携帯電話やコンピュータは、指が触れた位置や動きをチェックすることで、ユーザーが行おうとしている操作がわかる、つまり画面に触れて機器を操作するということが実現できるわけです。
一般的にタッチスクリーンは、指やペンなどが触れた場合、1カ所のタッチや触れた位置しか把握できませんでした。一方、マルチタッチスクリーンは、二本の指で触ってもその位置や動きを把握することができるのです。
■ 静電容量方式のデバイスが主流
タッチスクリーンデバイスの構造で、代表的なものとしては「抵抗膜」「静電容量」「電磁誘導」「超音波表面弾性波(SAW)」などの方式があります。
このうち静電容量方式は、マルチタッチへの対応が構造上、比較的簡単であること、あるいはマルチタッチスクリーン用の専用制御LSIが米Cypress Semiconductorなどから発売されており、活用が比較的楽なことから、マルチタッチ対応の携帯電話やPDA、卓上液晶ディスプレイなどの多くは、静電容量方式のタッチデバイスです。特に小型化が容易な投影型静電容量方式のパネルが使われています。ちなみに静電容量は光学的透明度が高く、堅牢性に優れているのも特徴です。
静電容量方式の仕組みを見ると、透明な導電性基板のガラス面に電気信号を受ける物質が塗布して、指がガラス面に近づけたときの電気容量の変化を検知することによって、タッチされたかどうかを判定しています。
これまで携帯電話やPDAのタッチスクリーンにもっとも多く使われているのは、抵抗膜方式のタッチスクリーンと言われています。耐久性などでは静電容量方式に劣るものの、構造が簡単なため製造コストが非常に安く済む方式なのです。現在では、マルチタッチに対応した抵抗膜方式のスクリーンも発表されているので、なんらかの製品に採用されて、世に出回ることがあるかもしれません。しかし現在では、マルチタッチスクリーンのデバイスとしては、静電容量方式のものが本命とされています。
■ iPhoneで採用されたマルチタッチのユーザーインターフェイス
最近発売された「iPhone 3G」では、マルチタッチスクリーンを使った新しい操作方法(ユーザーインターフェイス)を提供しています。
これは従来のコンピュータの画面であればマウスを使っていたような操作を、指で代用できる操作方法です。たとえば、2本の指を使ってその指と指の間隔を開くような操作は「ピンチ・アウト」と呼ばれ、そこに表示されている画像やウィンドウを拡大表示できます。
iPhoneで使われているマルチタッチ技術は、もともとデラウェア大学のジョン・G・エリアス教授と、その教え子のウェイン・ウェスターマン氏によって開発されたMultiTouchというインターフェース技術がその源流とされています。
MultiTouchは、その後2人によって設立されたフィンガーワークス社によって、指をパッドの上に置いて決まった動きをするとマウスの代わりにドラッグやクリックといった操作ができるパソコン用のデバイス「アイジェスチャー・パッド」、同じくキーボードの代わりにできるパッド「タッチストリーム」という製品の核心技術として使われました。
そして、その後、フィンガーワークス社はiPhoneの製造元である米アップルに買収されていることから、「iPhoneのマルチタッチの源流」とされているようです。
(大和 哲)
2008/07/23 10:36
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