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第374回:ARM とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「ARM」は、世界の半導体メーカーなどに対して、CPUコアのライセンスを供与している企業です。そのような企業のことを、「IPベンダー」と呼ぶこともあります。この場合のIPとは、Intellectual Property(知的財産)のことです。

 たとえば、どのように回路組み合わせてCPUを構成するか、そのノウハウなどのことを意味します。つまり、ARM自身は半導体製造などにタッチせず、回路やアーキテクチャーといった、CPUに関する知的財産を提供する企業ということになります。

 ARMが提供する、「ARMアーキテクチャー」は現在、世界でもっとも普及したCPUアーキテクチャーの1つとなっています。世界中の半導体メーカーがこのアーキテクチャーに基づく製品、そして独自の特色を持たせたプロセッサーを販売しています。

 たとえば携帯電話やスマートフォン向けのCPU「XScale」では、ARMアーキテクチャーを採用しています。「XScale」は、米国の有名なCPUメーカーであるインテルが開発し、現在はマーベル社が提供するCPUです。

 ほかにも、グラフィックチップで有名なNVIDIAは、携帯電話や携帯機器向けのSoC(System On a Chip)チップ「Tegra」ファミリーで、CPUアーキテクチャーにARMを採用しています。

 日本メーカーではルネサス テクノロジが、自社に「SHファミリー」というアーキテクチャーの知的財産を保有しているにもかかわらず、ARMアーキテクチャーのライセンスを受けていたりするなど、ARMのライセンスを利用した製品群は、非常に多くの企業から提供され、組込製品などに使われています。携帯電話だけでなく、家庭用ゲームや家電、自動車の各種制御、カーナビゲーションシステムなど、身近な製品にARMアーキテクチャーを採用したCPUやチップセットなどが組み込まれています。


豊富なラインナップ

 多くのメーカーが同じARMアーキテクチャーを採用している理由は何でしょうか。最も大きな背景はARMの市場占有率、シェアの高さから来る開発環境や資産の豊富さでしょう。

 半導体メーカーとしては、CPUの設計にかかる費用を軽減するだけでなく、そのマイコン上で動くソフトを作るためのアセンブラ、コンパイラ、ライブラリ、CPUの動きをシミュレートする不具合修正ツールなどを自分たちで提供せずとも、市場に出回っているARM向けツールをそのまま提供すればよいため、それらのツールにかかるコストを大きく削減できます。

 また、ARMアーキテクチャーが低消費電力でありながら高い性能を実現していることも採用に結びつく理由の1つに挙げられるでしょう。たとえば、ARMアーキテクチャーを採用しているCPUと周辺LSIをひとつにまとめた統合LSIとして、米国のNVIDIA社はTegraシリーズを発表しました。TegraシリーズはMID(Mobile Internet Device)や携帯機器をターゲットにしています。

 ほぼ同じ分野をターゲットにしている米Intel製のチップセットで、x86アーキテクチャーを採用しているATOMは、最大で10W程度の電力を必要とします。一方、Tegraシリーズは最大でも1W程度とのことで、NVIDIAは消費電力面でもその性能をアピールしています。

 さらに、ARMファミリーには、これまでにいろいろな種類のアーキテクチャーが存在しており、用途に応じて採用するアーキテクチャーを選べるのも魅力の1つかもしれません。

 ARMコアファミリとして、2008年現在、ARM7、ARM9、ARM10、ARM11、Cortexという複数のアーキテクチャーが、各半導体メーカなどに提供されています。

 これらのうち、ARM11 MPCore、Cortex-A9 MPCoreはマルチコアCPUの技術となっています。たとえば、ARM11 MPCoreでは、1~4つまでのコアを自由に実装し、これらを非同期・同期どちらでも動作させることができるなど、高い柔軟性を実現しています。

 非常に高性能で負荷の高くなる、高画質な動画を再生できるような携帯電話を設計する場合、4つのマルチコアを搭載するARM11 MPCore IPを利用したCPUを開発し、携帯電話に搭載するということが可能になります。

 このアーキテクチャーを採用した場合、普段はコアの1つがベースバンドとして電波の監視などを行ない、別のコアがブラウザなどのアプリケーションを動作させ、3つ目のコアはキーの監視などを行なっていながら、動画再生などの負荷の高いアプリケーションが起動されると、4つのうち3つのCPUコアでは、SMP(同期マルチプロセッサ動作)によって一斉に動画再生のプロセスを実行し、残り1つのCPUコアで電波の監視やパケットプロトコルの制御などを行なうということができます。しかも、3つのCPUと1つのCPUはAMP(非同期マルチプロセッサ動作)で別OS上で動くといったプロセッサが実現できるのです。



URL
  ARM
  http://www.jp.arm.com/
  第96回:XScale とは
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/keyword/9849.html


(大和 哲)
2008/06/10 12:40

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