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第360回:周波数オークション とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


競争入札で無線事業者免許を割り当てる

 周波数オークションとは、国などが、電波を地域や周波数帯によって事業免許を割り当てる際に、割当先をオークション(競争入札)方式で決定するやり方です。つまり、より多くの金額を提示した事業者に決定することになります。

 日本国内では、周波数オークションによる割り当ては、現在のところ実施されていませんが、これまで世界のいくつかの国で、オークション方式での割り当てが行なわれています。

 最初にオークション方式での周波数割り当てが実施されたのは、米国です。米国では、1993年と1997年に通信法が改正され、これによって新たな周波数割り当てには、救急・防災無線や交通無線など安全目的の電波利用や、地上テレビ放送のアナログ・デジタル方式への変換などを除き、ほぼ全面的にオークション方式での割り当てが行なわれるようになっています。

 現在までに、携帯電話用に800MHz帯、放送事業向けに2.6GHz帯、無線ブロードバンド事業向けに28GHz帯などがオークション方式によって割り当てられました。

 最近では、地上アナログテレビ放送が停波することに伴い、700MHz帯が次世代携帯電話や通信向けにオークションにかけられています。このオークションは、2008年1月に始まり、3月に終了する予定ですが、このオークションには、インターネット事業者のGoogleも参加を表明していることや、落札事業者が携帯端末にダウンロードするソフトウェアに規制をかけてはならず、どのようなソフトウェアアプリケーションでも実行できなければならないという規制が課せられたことなどで話題となっています。

 他にも英国やドイツ、イタリア、オーストリアなどで、オークション方式での免許割り当てが行なわれています。特に第3世代携帯電話向けの電波事業免許割り当てにこのオークションが行なわれました。


オークションのメリット・デメリット

 周波数オークションでの周波数割り当てのメリットは、割り当て基準がシンプルであり、割り当て経緯を透明化できることが挙げられるでしょう。

 他の周波数割り当て方式を考えると、たとえば、割り当てる機関が割当希望の事業者にヒアリングを行ない、その内容によって割り当てを決めますし、複数の事業者が立候補している場合に各社を比較して審査する方式では、審議の過程が公開されないと、「密室での取り決めで割り当てた」などと批判を受けることがあります。

 無差別抽選のような方式であれば、その周波数帯で事業するのにふさわしい能力があるのか、事業を遂行する資金などの裏付けがあるのかどうか、といった問題が残ります。

 また、オークション方式でのメリットとしては、利用価値の高い周波数帯ではこれまでより多くの電波利用料を国が取ることができる、ということも挙げられるでしょう。利用価値の高い周波数帯の割り当てが行なわれるとなれば、企業は、そこから得られる利益に見合っただけの投資を行なうだろうと考えられます。つまり、それだけ入札価格は高くなるわけです。電波利用料は、電波を使う多くの事業に投入されますから、ひいては利用者である国民の利益として還元されるだろうという理屈から、メリットの1つに挙げられるわけです。さらに言えば、企業は、営利を追求するために、少しでも効率的な電波の利用方法を模索するでしょうから、全体的に効率的な電波利用が促進されることになるとの予測もあります。

 ただ、海外で周波数オークションでの周波数割り当てを行なった国では、オークションの弊害が現れてしまったケースも出てきています。最も問題となっているのは、オークションの落札価格が余りに高額となってしまったことです。

 たとえば、高額オークションの例で知られているのは、2000年の英国でのケースです。英国では2000年に第3世代携帯電話事業者向けに2GHz帯の割り当てする際、周波数オークションを行ない、その結果、British TelecomやVodafoneなど5事業者に対する免許の落札価格は合計で計224億7,740万ポンド、当時の日本円で約4兆円弱という巨額になってしまったのです。

 英国でのオークションが高額になった背景には、2000年はIT関連企業の株が高値をつけて、一種のバブル経済状態になっていたことなどもあります。また、他の例としては、ドイツでも第3世代携帯電話向けの2GHz帯が993億6,820万マルク(5兆円弱)で落札されていたりします。

 あまりに高額な落札価格は、事業者の負担を重くしすぎ、結局利用者のサービス利用価格に跳ね返って、非常に高額となって結局サービスがあまり普及しないといった事態になってしまうことがあります。ひどい場合は、高額すぎる落札価格に事業を開始できないまま事業者が破綻してしまうなどのケースなどもありました。適切な価格に落ち着くのであれば問題は少なくなるのかもしれませんが、これらのケースは、必ずしも、周波数オークションが万能な割り当て方法ではないことを示していると言えるでしょう。



URL
  米携帯周波数帯オークション、空前の落札額になる見通し[INTERNET Watch]
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/08/18402.html


(大和 哲)
2008/02/19 13:01

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