ケータイ Watch
連載バックナンバー
第426回:デジタルフォトフレーム とは
[2009/06/23]

第425回:ホームU とは
[2009/06/16]

第424回:jiglets とは
[2009/06/09]

第423回:Wi-Fi WIN とは
[2009/06/02]

第422回:iアプリタッチ とは
[2009/05/26]

第421回:HSUPA とは
[2009/05/20]

第420回:デジタルサイネージ とは
[2009/05/12]

第419回:リミット機能 とは
[2009/04/28]

第418回:着信短縮ダイヤルサービス とは
[2009/04/21]

第417回:青少年ネット規制法 とは
[2009/04/14]

第416回:XGP とは
[2009/04/07]

第415回:接続料(アクセスチャージ) とは
[2009/03/31]

第414回:LTE とは
[2009/03/24]

第413回:着うたフルプラス とは
[2009/03/17]

第412回:電場・磁場共鳴電力伝送 とは
[2009/03/10]

第411回:モバイルWiMAX とは
[2009/03/03]

第410回:TransferJet とは
[2009/02/24]

第409回:Snapdragon とは
[2009/02/17]

第408回:ソフトバンクギフト とは
[2009/02/10]

第407回:可視光通信 とは
[2009/02/03]

第406回:DC-HSDPA とは
[2009/01/28]

第405回:利用者登録制度 とは
[2009/01/20]

第404回:IMEI とは
[2009/01/13]

第403回:ナカチェン とは
[2009/01/06]


2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年

2001年

2000年

ケータイ用語タイトルGIF
第336回:ユーロタリフ とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「ユーロタリフ」は、欧州委員会(EC)が定めた、国際ローミング音声通話の料金規制です。

 正式には「REGULATION (EC) No 717/2007 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27 June 2007 on roaming on public mobile telephone networks within the Community and amending」という名前で、EU域内で有効な規則として行政上定められたものです。施行から3年間、事業者がユーザーに対する課金額、それに事業者間でのローミング利用に際しての課金額が一定額内に規制されます。

 この規制では、EU域内での国際ローミング料金の上限を定めていて、この料金体系を「ユーロタリフ」と呼んでいます。ユーロタリフ(Euro Tariff)のTariffとは、料金、運賃などを意味する英単語です。


今後3年、ヨーロッパのローミング利用料が引き下げられる

 この規制の1つの特徴は、規制によって国際ローミング通話料金がこれまでに比べて低く抑えられる、ということです。

 規制の内容を見ると、EU内の国際ローミング音声通話について、ユーザーに課金される発信通話料金や着信料金、それにローミング利用によって事業者間で発生する支払料金に関して、上限を決めています。

 具体的には、施行から約1年、つまり2008年8月までは、発信通話の場合が毎分0.49ユーロ、着信通話の場合は毎分0.24ユーロが上限となっています。事業者間の課金は毎分30ユーロが上限額とされています。

 また、この料金は年々下がることが決まっていて、たとえば発信に関して言えば、施行2年目は0.46ユーロ/分、施行2年目は0.43ユーロ/分となります。

 その額は、一般的に課金されていた金額と比べると非常に低いもので、事業者によっては、従来料金の半額~3割程度にまで値下げされることになります。

 また、この規制のもう1つの特徴は、域内のほぼ全てのユーザーが、ほぼ何もしなくてもこの料金が適用されることになることでしょう。

 というのも、ユーロタリフ準拠の料金プランは、ユーザー自身が受け入れを表明しなかった場合、自動的にユーロタリフに基づいた料金が適用されることになります。ユーロタリフ以上のローミング料金プランを別に作った場合としても、ユーザーがそちらを意図的に選択しなければ、自動的にユーロタリフ準拠のプランが適用されることになるのです。


事業者は収益減に

 また、この規制は非常に厳しく、事業者はユーロタリフに従うことが義務付けられています。

 施行から1カ月となる2007年7月30日までに国際ローミング料金プランとして、このユーロタリフ料金以下の料金体系をスタートさせることが義務付けられ、それに従わない場合には「違反事業者」として、欧州委員会によってその事業者名が公表されました。結局、8月23日までに欧州内全95事業者が料金改定を実施することとなりました。

 結果として、欧州内のほぼ全てのユーザーは、何の手続きもなく、国外に出て携帯電話を使った場合に従来よりもかなり安い料金で利用できるようになったわけです。

 ほとんどのヨーロッパ各国は陸続きで、国境に対する意識が薄く、よく他国に移動して携帯電話を利用します。そのため国際ローミングも非常によく使われています。従って、料金が安くなることはユーザーには非常に歓迎されています。この規制が施行されるまで11カ月という、欧州としては驚異的に短い期間だったことからも、この規制が、非常に消費者からは歓迎されていることがわかるでしょう。

 反面、それまで非常に大きな収益源だったローミング料金が非常に低く抑えられることは、事業者にとって非常に厳しい内容です。この規制は、SMSやMMSなどのパケットデータ通信に関しては適用されませんが、対象外になったこれらの料金も欧州委員会は「料金が下がることを期待する」ともコメントしています。GSM協会は、この規則が正式策定される前から、「このような規制は、長期的には消費者にも悪影響を及ぼす、不要なものである」と批判しています。また、ユーロタリフの料金設定は、実際のコスト計算に基づくものではなく非常に不合理なものであるとしています。

 実際にこのユーロタリフが、ローミング事業の効率化を促し、正しいコスト低下によってユーザーにも事業者にも良い影響をもたらすものなのか、それとも事業者の体力を一方的に消耗させて最終的には消費者にも悪影響を及ぼす元凶となってしまうものなのか、この先、注視していく必要があるでしょう。



URL
  ユーロタリフ 規則内容(英文、PDF形式)
  http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/site/en/oj/2007/l_171/l_17120070629en00320040.pdf
  GSM協会 ユーロタリフ導入に対するプレスリリース(英文)
  http://www.gsmworld.com/news/press_2007/press07_37.shtml


(大和 哲)
2007/08/28 11:58

ケータイ Watchホームページ

ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.