|
|
 |
第312回:ゴアテックス とは
|
 |
 |
 |
大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
|
ゴアテックス (GORE-TEX) は、米国のW.L.ゴア&アソシエイツが製造販売する防水透湿性素材です。
防水透湿性素材とは、水を通過させず、水蒸気は通過させる素材のことです。このような透湿防水素材は、ほかにも東レのエントラント、モンベルのドライテック、日東電工のテミッシュ(ミクロテックス)などいくつかのメーカーから提供されていますが、ゴアテックスはその中でも最初に開発され、そして最も有名な製品です。
1969年にW.L.ゴア社のロバート.W.ゴア氏が、最初のゴアテックスメンブレンとなるフッ素樹脂PTFEの乳化重合膜延伸加工に成功し、初めてゴアテックスが作られました。GORE-TEXは米国内においてはW.L.ゴア、日本国内においてはジャパンゴアテックス株式会社の登録商標となっています。
■ 水蒸気を通し、水を通さない

|
防水対応のF703iでもゴアテックスが利用されている
|
ゴアテックスを使った布「ゴアテックスファブリクス」をはじめとして、防水透湿性素材は現在、さまざまな製品に使われています。
たとえば、登山やスキーなどに使われる防水アウターウェア(ジャケットやパンツ)などは、最もこの素材の恩恵を受けている製品でしょう。ゴアテックスを使ったウェアは、体から発生する水蒸気を大気中に逃がしますが、外からの水、雪や雨は弾くことができるからです。
寒い山の中では、体から発した汗や風雨、雪などによって、急速に体温を奪われます。たとえば汗を水蒸気として逃がすために服に穴などを開けると、寒い山の雪や雨に晒されてしまいます。風雨などで急激に体熱を奪われると体温が低下し、凍死に至る危険性もあります。透湿素材を使うかどうかが命の分かれ目になることもあるわけです。
あるいは、家屋を作る際に、屋根の下葺き材として敷かれる透湿防水シートも、防水透湿性素材の応用の1つです。携帯電話、OA・家電製品、屋外機器、自動車部品などもこの防水透湿性素材の応用分野のひとつで、特に内圧調整フィルタなどに使われています。
携帯電話では、最近発売されたNTTドコモのFOMA端末「F703i」や「SO902iWP+」、auのタフネスケータイ「G'zOne W42CA」などでは、音響ベント(マイクやスピーカーの穴)保護フィルターとして、防水性能や通気性、防塵性といった特徴を持つ0.65~0.02mm程度の、薄いゴアテックスが利用されています。
防水携帯電話は、水のある環境で使われますが、従来の携帯電話のようにマイクやスピーカー部に穴が開いていると、そこから浸水してしまい中の回路が故障してしまいます。また、通気性のない素材で音響ベントをカバーしてしまうと、携帯電話の内部と外部で気圧が違ってしまい筐体が損傷する恐れもありますので、通気は行なえるようにしなければなりません。そこでゴアテックスの保護フィルターを利用します。
ゴアテックスのフィルターは、水やゴミが内部の入り込むのを遮断できます。なおかつ、空気や水蒸気を内部から外部へ、あるいは外部から内部へも通しますから、端末内部と外部の気圧を均等にし、かつ防水を達成できるのです。
■ 多孔フッ素樹脂膜がゴアテックスの心臓部
このような透湿防水性は、多くの場合、樹脂多孔フィルムを利用することで実現されています。
ゴアテックスファブリックの場合、透湿防水性を実現しているのは、その中にあるゴアテックスメンブレンと呼ばれる薄い膜です。これは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)と呼ばれるフッ素樹脂を延伸加工したフィルムとポリウレタンポリマーを複合化して作られています。
この樹脂には、1平方cmあたり約14億個の微細な穴が開いています。非常に小さな穴で、ここまで小さいと、分子がたくさん結合したままの液体の水は通ることができません。これが、透湿防水性を実現する原理です。
|
透湿防水性素材の原理。樹脂膜に微細な穴がたくさんあり、気体となった水は自由に通ることができるが、液体のままの水は通ることができない
|
ただし、ゴアテックスメンブレン単体では強度に問題が出ること、表面が結露するなど水の膜ができてしまうとそこから水蒸気が逃げることができなくなってしまうため、撥水性のあるナイロンなどの生地をはさんで、ゴアテックスファブリックという形で製品に使われています。
■ URL
ジャパンゴアテックス
http://www.jgoretex.co.jp/
(大和 哲)
2007/02/27 11:59
|
ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|
|
|
|

|
 |