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第304回:Bluetooth 2.0+EDR とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


高速になったBluetoothの新バージョン

 「Bluetooth 2.0+EDR」は、2004年11月に発表された、Bluetoothのバージョン2に相当する新規格です。

 Bluetoothは、携帯電話にも採用されている、低消費電力で小型などを特徴とするWPAN(Wireless Personal Area Network、パーソナル無線ネットワーク)と呼ばれる無線ネットワークの一種です。その中でも、2.4GHz帯の電波を使って、機械と機械をケーブルではなく無線で結ぶための技術です。

 携帯電話に搭載される機能では、無線が音声ケーブルの代わりとなって、携帯電話とヘッドセットの間を結んでハンズフリー機能を実現したり、あるいは、パソコンなどとのデータ通信ケーブル代わりとしてパソコン内のデータとのシンクロナイズを行なえる機種が存在します。

 Bluetoothの2.0以前の規格である1.1や1.2では、理論上の最大通信速度は1Mbps、非対称型通信時で約723.2kbpsとなっています。

 これに対して、Bluetooth 2.0+EDRは、通信速度は最大で3Mbps、非対称型通信時は約2.1Mbpsを実現できるという新規格です。Bluetooth 2.0+EDRの“EDR”とは、拡張されたデータ通信速度を意味する「Enhanced Data Rate」の略です。

 その特長は、

・Bluetooth 1.1/1.2との互換性維持
・デューティーサイクル(ON/OFF時間の比率)調整による低電力化

などがあります。また、Bluetooth 2.0+EDR対応機器であれば、1.1/1.2対応機器との通信が可能です。


データ通信部分の変調方式を変更して、高速化

 Bluetooth 2.0+EDRは、1.1、1.2との互換性を持っており、ネットワークの基本原理はほとんど同じ仕組みを踏襲しています。

 Bluetoothでは、CDMAなどと同様に、時間を625μ秒ごとにスロットとして区切り、2.4GHz帯の電波を79の周波数チャネルに分けます。利用する周波数をランダムに変える「周波数ホッピング」を繰り返しながら、偶数スロットでマスターとなった機械が通信先のスレーブ機器を指定して通信を行ない、次のスロットでスレーブとなった機器からデータが送られる、というように通信を行なっていますが、このあたりの仕組みはBluetooth 2.0+EDRでも全く同じです。

 仕組みが同じにもかかわらず、Bluetooth 2.0+EDRで通信速度が向上しているのは、通信時のやり取りで、データの内容そのものを含むペイロード部分の変調方式を変えているためです。他の機器と接続するためのアクセスコード部分と、制御データ部分、(ヘッダ部)の通信は従来通りです。

 ちなみに変調とは、情報を電波や光といった波に載せるための操作のことです。デジタル変調では、「波の1サイクルに、何パターンの波を表現させるか」を変えることで、一度に送る情報量を増やしたり減らしたりすることができます。1サイクルで「0」が「1」だけを表現する、あるいは「00」「01」「10」「11」と4通り表現させるか、という点を変えることで、通信速度が2倍、4倍にできるのです。1サイクルで表現する数をどんどん増やせば良いように思えますが、あまり多すぎると、区別しづらくなります。すると、電波が弱い、あるいはノイズが混じるなど通信状態が悪いときに、受信データが化けてしまうという問題も起こります、

 Bluetooth 2.0+EDRでは、具体的には、GFSK、π/4DQPSK、8DPSKという変調方式を切り替えることでデータ通信速度を向上させています。GFSKは、バージョン1.1/1.2でも使われており、723.2kbpsの基本通信レートで利用されています。EDRでは、その倍の速度でπ/4DQPSK、3倍の速度(約2.1Mbps)では8DPSKを利用します。



URL
  Bluetooth SIG
  http://japanese.bluetooth.com/bluetooth/


(大和 哲)
2006/12/26 12:13

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