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第297回:虹彩認証 とは
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大和 哲 1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。 (イラスト : 高橋哲史) |
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虹彩は、目を正面から見た場合、黒目の内側で、目の中心にある瞳孔より外側のドーナツ状に見える部分。この部分の模様の特徴から人を識別するのが、虹彩認証の仕組みだ
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虹彩認証とは、生体認証の一種で、人間の目にある虹彩という薄い膜の模様の特徴を利用した認証技術です。
技術的には、米国イリディアン・テクノロジーズ(Iridian Technologies)が、世界における本技術の特許をほぼ独占しており、各種装置は、同社からライセンス提供を受けて、日本の沖電気工業、松下電器などが実用化・販売しています。
本誌記事でも、「沖電気工業が、携帯電話のカメラで虹彩認証が可能になる「携帯アイリス認証技術」を開発し、2007年3月に製品化する」との記事が掲載されました。
虹彩とは、目を正面から見た場合、黒目の内側で、目の中心にある瞳孔よりも外側のドーナツ状に見える部分です。瞳の色によって模様ができています。
虹彩の模様は、人間の体が母体の中にある時点から徐々に作られていきますが、目の置かれていた環境や遺伝子によって異なる模様ができますので、1つ1つの瞳が、異なる模様となります。しかも、誕生後、1~2歳を迎えるころにほぼ形が決定し、それ以降はほぼ一生変わることがありません。
この特徴を利用して、虹彩のしわパターンを識別して、「機能を使うことが許された本人」であることを確認する技術を“虹彩認証”と呼んでいます。つまり、虹彩のパターンを利用したバイオメトリクス技術の1つです。
なお、虹彩は英語で「iris」と言うため、カタカナでアイリス認証と呼ばれることもあります。
■ 非接触で偽造困難、精度は高い
虹彩認証のメリットとしては、
- 非接触
- 経年変化や、病気で変化しにくい
- 認証精度が高い
ことが挙げられます。
虹彩認証は、機械がカメラを使って人間の目の画像イメージを取得し、そこから虹彩のしわの特徴点を抽出し、データベースやメモリなどに登録されているデータと照合して、認証を行ないます。
そのため、虹彩認証では、ある程度カメラを人に近づける必要があるものの、非接触で行なえるというメリットがあります。
また、虹彩は人体の中でも何年たっても形が変わりにくい部分で、認証用データの更新が極力抑えられるというメリットがあります。乳幼児期で虹彩の模様が決まってから認証データを登録すれば、それから一生使うことができるわけです。
目はその日によって充血することがありますし、角膜炎などの病気になることもありますが、それによって、虹彩の特徴が変わることはありません。ただし、虹彩前癒着が起きるような病気にかかった場合は、認識に問題が起きることもあります。
虹彩認証は、バイオメトリクス認証の中でも利用者の負荷が比較的少ない方式であり、精度の高さからセキュリティ関係の応用で注目されている認証方法です。その認証率は、沖電気工業から販売されている虹彩認証システム「IRISPASS」の場合で、他人受入率は120万分の1とされています。
虹彩のしわの形や模様は、遺伝子の作用と発育時の環境によって変わりますが、とくに発育時の状況によって変化します。そのため、虹彩の特徴は、双子や親子などで異なるのは、もちろん、同じ人でも右目と左目でも異なるほどですから、意図的に、誤認されそうな人や似ている人を見つけるのも非常に難しいことでしょう。
なお、虹彩認証の制度の高さを示すエピソードとしては、たとえば、国際民間航空機関(ICAO)が、ISOに電子パスポートの方式提案を行なった際に主方式の顔認証に加えて、指紋と虹彩を補助的に使うことを提案したことなどが挙げられます。
2006年現在、実際に、アラブ首長国連邦のパスポートコントロールなどでは、この虹彩認証を使った個人認証が使われています。
■ URL
米国イリディアン・テクノロジーズ(英文)
http://www.iridiantech.com/index2.php
■ 関連記事
・ 沖電気、携帯電話のカメラで虹彩認証できる新技術
(大和 哲)
2006/11/07 11:21
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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