「MOAP」とは、モバイル指向のアプリケーションプラットフォームを意味する“Mobile Oriented Applications Platform”の略で、NTTドコモが中心となって推進している、FOMA向けの携帯電話基盤ソフトウェアです。具体的には、OSとミドルウェア、ブラウザなどが含まれます。
MOAPが導入されるまで、FOMAをはじめとするドコモの携帯電話は、搭載しているOSやミドルウェアなどが開発メーカーごとに違っており、その上に載る機能も各メーカーごとに開発していました。これでは、同じ機能を各メーカーがそれぞれ開発することになり、無駄な作業が発生してしまいます。そこで、ソフトウェアの開発効率の向上を目指したのがこのMOAPです。
MOAPでは、使用するOSの種類を限定した上で、コンパイラやパソコン上で動く携帯電話シミュレーターを含め、MOAP上で動くソフトを開発するためのSDK(ソフトウェア開発キット)が提供されています。各携帯電話メーカーは、これを使って、より効率的にFOMA向けソフトウェアを開発できるようになっています。
■ Symbian、Linuxが利用可能なFOMA開発環境
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F902iSは、MOAP(S)端末の1つだ
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MOAPが対応するOSは、Symbian OSとLinuxです。それぞれMOAP(S)、MOAP(L)というバージョンになっています。
Symbian OSは、英シンビアン社が開発し、さまざまなメーカーに提供されているOSです。ノキアやモトローラ、サムスンといった世界の主要メーカーの携帯電話で採用されているほか、日本では富士通や三菱電機、シャープ、ソニー・エリクソンの携帯電話に搭載されています。
Symbian OSでは、機械としてのコアの機能、たとえば電源管理などはOSの機能でサポートされていますが、画面に画像でボタンを表示するなど、ユーザーインタフェイス機能はサポートされていません。そこで、端末メーカーでは、UIQやS60といったUI用プログラムを搭載しています。
MOAP(S)では、Symbian OSのカーネルとUI部分、共通ミドルウェアと広い部分をサポートしています。FOMAの場合は、UI部分はカスタマイズ可能とし、各携帯電話メーカー独自のUI仕様で、ユーザーに個性をアピールしつつ、ドコモが導入する新規サービスをタイムリーに実現することを可能にしています。
Linuxは、サーバーなどのコンピュータで普及しているUNIX系のOSです。最近では、情報端末や情報家電向けの組込用Linuxも徐々に普及しつつあります。MOAP(L)は、MontaVista Linuxをベースとしたカーネル部分と、共通のミドルウェアをサポートしています。これを利用して効率的な開発と、新規サービスのタイムリーな実現が可能になるわけです。
Linuxの場合、Symbian OSに比べると組込機器用途としての歴史が浅いため、たとえば組込用API(Application Program Interface、プログラムがOSなどの機能を呼び出す際の呼び出し口)があまり充実しておらず、組込用として利用するには、Symbianと比べて多少手間がかかるという点がありましたが、MOAPではすでにこのようなAPIも用意されていることもメリットの1つです。
今年6月、ドコモやNEC、モトローラ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、英ボーダフォン・グループ、サムスン電子の6社が、Linuxによる携帯電話向けソフトウェアプラットフォームの構築を推進することに合意しました。ここで携帯電話用LinuxのAPI仕様およびアーキテクチャが規定されることになっていますが、MOAP(L)で規定されているAPIが参考にされる可能性を指摘する声もあります。
MOAPを使って開発されたFOMA端末は既に発売が開始されています。富士通製端末ではF901iC以降、三菱製端末はD901i以降、シャープおよびソニー・エリクソン製端末では902i以降、NEC製端末ではN901iC(N900iL含む)以降、パナソニック製端末ではP901i以降が、それぞれMOAPを利用して開発された携帯電話です。
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(大和 哲)
2006/07/18 15:32
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