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第21回:IrDAとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


IrDAとは

 IrDAといえば、ノートPCや携帯電話のNM502i、PDAのPalmやザウルスなどについている通信用の無線インターフェイスを思い浮かべる人が多いことでしょう。

 このIrDAインタフェースを持った機械では、これらの機器をケーブルでつなぐことなく、ワイヤレスで通信をさせることができます。たとえば、普通、PDAを使って携帯電話を使って通信をするにはPDAと携帯電話の間をケーブルで結ばなくてはなりませんが、さきほどのNM502iとPalmであればケーブルを使わなくても、この2つを使って通信をすることができます。


IrDAインタフェースを利用すると、ケーブルでつなぐことなしに、ワイヤレスでデータ交換ができる

 IrDAは、Hewlett-Packard、IBM、Microsoft、シャープなどが中心となって、1993年に設立された赤外線通信の標準化団体の名前(Infrared Data Association)なのですが、転じて、ここで策定された規格がIrDAと呼ばれています。この規格に沿ったインタフェースがIrDAインターフェイスです。

 正確にはこのPCやPDAなどに使われている赤外線通信はIrDA DATAと呼ばれています。


光を使った通信方法、IrDA DATA

 IrDA DATAに使われるIrDAインターフェイスは赤外線を使って、他の機械との通信を行なっています。

 赤外線は光の一種です。人間の目は390~760mmの波長の光を紫~赤の色として感じることができますが、760nmより波長の長い光は見ることができません。この赤より外の領域にある光、だいたい760nm~1mmの波長にあるものを赤外線といいます。この赤外線の中でも赤に近い部分700nm~1500nmあたりを近赤外線、さらにそれよりも波長の長いものを4μまでを中赤外線、それより長いものを遠赤外線といいます。IrDAでは850~900nmの近赤外線を利用しています。

※注:文献によっては、この波長の数値と赤外線の区分けが異なることがあります。ここではIEC(International Engineering Consortium)の国際電気技術用語集(IEV)に準じています。


目に見えない光には目に見える可視光線の端にあたる、紫より波長の短い「紫外線」、赤より波長の長い「赤外線」がある。IrDAでは、このうち赤に近い赤外線である「近赤外線」を利用している

 IrDAインターフェイスは、この目に見えない光を発光部が光ったり消えたりして、それを受信する機械の受光部が光を感じてデータを送受信していると考えていいでしょう。ですので、基本的に、光が通らない場所とは通信はできず、またデータが漏れることはありません。いわゆる無線LAN(たとえばIEEE 802.11規格のもの)などですと、電波を使っていますので壁などを通して電波が漏れることもありますが、光を使っているIrDAでの通信ではそういうことはないのです。

 また、赤外線での通信は電波と違って遮蔽物を回り込んで光が届くわけではありません。ですので、確実にデータ通信をするには、鏡でもない限り、通信する2つの機械のインターフェイス部分は向き合わせて使わなければなりません。装置の見とおし位置になくても通信ができるいわゆる無線LANやBlueToothなどとは、使い勝手が異なる部分があります。


IrDA DATAの通信の仕組み

 IrDAに対応した機械にはIrDAインターフェイスが必ずついています。このインターフェイスは光を発する発光部、受光部がセットになっていて、それぞれの機械が850nm~900nmの赤外線で情報をやり取りしています。

 IrDAの規格はハードウエア、ソフトウエアに分かれていて、ハードウエアはIrPHY(IrDA Physical Signaling Layer)という規格で決められています。IrPHYは、送受信素子や赤外光、通信速度、通信できる距離もこの規格で決まっていて、PDAのカタログなどに「IrDA 1.1 準拠インタフェース」などと書かれていることがありますが、それはこのIrPHYのどの規格に搭載しているインタフェースが対応しているを示しているのです。

 現在、PDAや携帯電話に搭載されているIrDAインタフェースはほとんどが1.0、1.1対応ですが、規格としては1.0から1.3までがあります。

 IrDAの規格は速度別に、115kbpsと低速なSIR、中速・1Mbpsの・MIR、高速4MbpsのFIR、超高速16MbpsのVFIRと分けることができるのですが、それぞれ1.0はSIR、1.1がMIRとFIR、1.4がVFIRにあたります。通信する機械はそれぞれ1メートルまで離れて通信することができます。PDAなどの電力を節約したい機械のためには、通信距離を20センチまでとして省電力ができる規格があり、それぞれIrDA 1.2(SIR)、1.3(MIR,FIR)が対応しています。

 なお、VFIRはまだ正式な規格ではないのですが、IrDAで正式に承認されると、これが1.4として規格に反映される予定になっています。

IrDA Dataのバージョンと通信速度・通信距離

距離 30cm
(ローパワーオプション 20cm)
通信距離 1m
SIR
(115k bps)
IrDA DATA
1.2
IrDA DATA
1.0
MIR(1M bps)
FIR(4M bps)
IrDA DATA
1.3
IrDA DATA
1.1
VFIR(16M bps)
IrDA DATA
1.4


 このハードウエアをコントロールする基礎のソフトウエアの規格はIrLAP(Infrared Link Access Protocol)、IrLMP(Infrared Link Management Protocol)、IrTTP(Infrared Tiny Transport Protocol)という規格が決まっています。

 たとえば、IrDAでは、ある場所ではこの機械と、またある場所ではこの機械と、といろいろな機械とデータ通信することが前提になっている使い方をすることがよくあります。通信する機械は、PDAなどから「探知」することで、赤外線で他の機械を探して、そして見つかったら、その機械と通信をするようになっています。この「他の機械を探す」機能などはIrLAPが受け持っています。

 この基礎的なソフトを使う部分のソフトの規格(アプリケーションプロトコル)がIrCOMM(Infrared Communications Protocol)や、IrLAN(Infrared LAN Access Extensions for Link Management Protocol)、IrLPTといった規格です。

 これは簡単に言うと、ある機械とある機械をつなぐケーブルの代わりになっている部分で、たとえば、PCとPDAをつなぐ通信ケーブルを模してデータをお互いにやりとりするためのソフトはIrCOMM(COMMは通信・CommunicationのCOMM)規格に沿っていますし、あるいはたとえば、プリンタケーブルをエミュレートしてプリンタにデータを送ることのできるソフトウエアはIrLPT(LPTはLine PrinTer・ラインプリンタのこと)準拠のものになっています。

 ちなみに、このアプリケーションプロトコルの部分は全てのIrDA対応機器でソフトウェアが対応しているわけではありません。たとえば、ザウルスのIrDA機能はアプリケーションプロトコルはIrCOMMにしか対応していませんので、IrLPTにしか対応していない赤外線インターフェイスプリンタなどは利用できません。この場合、IrCOMMに対応しているIrDAインターフェイス搭載プリンタを使うか、IrCOMMに対応しているPCなどにアクセスしてそこに接続されているプリンタなどを利用することになります。




URL
  URL: Infrared Data Associationホームページ(英文)
  http://www.irda.org/


(大和 哲)
2000/11/21 00:00

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